障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、一昨年の夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く連載コラム。
ある日、武英智調教師の発案で雄造騎手は栗東トレセンを訪れることに! 20代から親交が深く、最後に勝利したレースでもコンビを組んだ2人。師が考えた“服装”のおかげもあり、充実した時間を過ごすことができたそうです。
他にも調教師、調教助手、同期など...。日々のリハビリを様々な人たちが気にかけてくださっているといいます。武英智調教師とのエピソードをはじめ、雄造騎手を支える周囲の“繋がり”とは...?
武英智調教師は「騎手や元騎手のなかで一番心配してくれて、心を寄せてくださった」
東邦大学大橋病院の中山晴雄先生の診察から数日後。
夫は「夕食を食べに行ってくる」と言い、ひとりで出掛けていきました。数時間後、その夫から電話があり、出てみると……。
「坪ちゃん、お疲れさま! 英です。武英です!」なんと聞こえてきたのは、武英智調教師の声でした。
「雄造くん、ずっとトレセンに来てないでしょ? だから明日、雄造くんをトレセンに連れて行こうと思ってる。リハビリとか何か予定入ってない? 大丈夫かな?」と、わざわざスケジュールを確認するために電話をくださったようでした。
20代の頃、英さんと夫はプライベートで同じ時間を過ごすことが多かったようで、とても仲が良かったとか。思えば、一昨年8月の落馬以降、騎手や元騎手のなかで一番心配してくれて、心を寄せてくださったのは英さんだったように思います。
英さんは、騎手時代から先輩からの信頼が厚く、後輩からも頼られ、慕われていた方です。調教師に転身されてからのご活躍はみなさんもご存じの通りで、今もたくさんの方から慕われ、そして頼られている存在です。
また、夫が落馬前に最後に勝ったレースのパートナーは、武英智厩舎の管理馬であるエールヴィオレでした。馬主の佐伯由加理オーナーとは、数年前に一度ご一緒したことがあり、その際、「私の馬が障害レースを使うことになったら、白浜さんに騎乗依頼しますね」と言われ、実際にたくさんいる障害騎手のなかから夫を指名してくださったのです。
多くても1日2鞍しかない障害騎手にとって、“1勝”はとても重みのあるものです。数年前の約束を覚えていてくださったオーナーのおかげで、落馬の2週間前に勝つことができたこと、落馬後もお手紙で励ましてくださったこと…。佐伯オーナーには、本当に感謝しかありません。
最後に佐伯オーナーの所有馬、武英智先生の管理馬で勝ててよかったと心から思います。そして、競馬には目には見えない何か不思議な力が働くことがあるんだと強く実感しました。