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【ラジオNIKKEI賞】コースレコードタイでオフトレイルが重賞初制覇 陣営の戦略が勝利に導く

  • 2024年07月01日(月) 18時00分

上位人気3頭の成長に期待


重賞レース回顧

ラジオNIKKEI賞を制したオフトレイル(撮影:下野雄規)


 夏のローカル重賞にはハンデ戦が多く、難解なレースになることが多いが、2006年からハンデ戦になったこのレースは、まだキャリアの浅い3歳馬のハンデ戦。

 春のGIで善戦、好走した馬の出走はしだいに少なくなり、大波乱こそ少ないが、だいたい波乱の結果になる。今年を含めてハンデ戦となって19回。1番人気に支持された馬の勝利はわずか2回にとどまる。当然のように人気の割れた今年も小波乱だった。

 雨の影響はなく、芝コンディションは絶好。勝ち時計は1分45秒3「前半1000m通過58秒4-上がり46秒9-35秒0」。レースレコードを0秒3更新したと同時に、コースレコードタイの高速決着となった。

 スタート直後の12秒3と中間地点で12秒0が刻まれただけで、あとはハロン10秒-11秒台。息の入れにくい流れとなり、たまたま出負け気味だったため、後方待機に切り替えた田辺裕信騎手の外国産馬オフトレイル(父Farhhファー)の、鮮やかな最後方からの追い込みが決まった。もちろんレコードの差し切りであり、先行馬も残っているのだから、恵まれたなどということはない。56キロでの実力勝ちに近い。

 また、地元出身で福島コースを知り尽くす田辺裕信騎手(テン乗り)に依頼した陣営の、周到な作戦が大正解だった。この重賞は2勝目(6番人気馬、3番人気馬)、七夕賞(5番人気馬)、福島記念(3番人気馬)。すべて伏兵で福島の重賞4勝目だった。

 父ファー(その父Pivotal)は、欧州の8F-約10Fの芝で【5-4-1-0】。父Pivotal、祖父Polar Falconより距離をこなしたが、スピード競馬に高い適性を持つ種牡馬。

 オフトレイル(GB)の母ローズトレイルはUSA産だが、牝系は十数代もオーストラリア、ニュージーランドで育ったファミリー。かなりスピード色の濃い牝系であり、近年のゴドルフィングループの日本での活躍馬は、一段とスピード色の濃いタイプを揃えてきたように思える。レモンポップ、フィアスプライド…など。

 2着シリウスコルト(父マクフィ)は、先行策は取れなかったが、内枠を利してインぴったり。少しのコースロスもなし。直線に向いて先頭に立った時は必勝態勢と見えたが、勝ち馬の切れ味が鋭かった。この馬の最後の1ハロンは11秒8。勝ったにも等しい素晴らしい内容であり、折り合い面で大きな進転もあった。

 3着ヤマニンアドホック(父ノヴェリスト)の上昇も光った。前半1000m通過58秒4の流れを、ひっかかるほどの勢いで追走、それでいながら直線もしっかり脚を使っている。1勝クラスを勝ったばかりとは思えない好内容だった。

 51キロの軽ハンデだった牝馬メイショウヨゾラ(父グレーターロンドン)は、父の快走がマイル戦に集中していたのと、また母の父がヨハネスブルグ。典型的なスピード型と思えて人気薄だった。だが、平坦に近い小回りコースとはいえ、この息の入れにくい流れの距離1800mで寸前まで粘ったから大健闘。スローに落とせるタイプでもある。

 上位人気の3頭「サトノシュトラーセ、ウインマクシマム、ショーマンフリート」は勝負どころの3コーナー過ぎで少し見せ場は作れたものの、そろって完敗。暑い時期だけに体調、揃って初コース、時計の速すぎたレース、距離適性など、それぞれに敗因はあるが、かなり物足りなかった。ハンデ戦だけに小さな死角が明暗を分けたこともあり、この一戦で評価が大きく下がるわけではない。まだ戦歴は数戦だけ。ひと息入れたあと、秋に向けて今回の期待を上回るくらいの成長を示したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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