ピューロマジックが北九州記念を制覇 強い芝適性は母父ディープインパクトによるもの?
血統で振り返るラジオNIKKEI賞
【Pick Up】オフトレイル:1着
今年に入りJRA所属の外国産馬が重賞を勝ったのは、ノーブルロジャー(シンザン記念)、エトヴプレ(フィリーズレビュー)、マッドクール(高松宮記念)に次いで4頭目。
イギリス生まれのオフトレイルは、ヌレイエフ系のファーを父に持ちます。英チャンピオンS(G1・芝10ハロン)とロッキンジS(英G1・芝8ハロン)を勝った一流馬で、その父ピヴォタルはフランスの名種牡馬シユーニの父。シユーニといえば今年の日本ダービーで3着と健闘したシンエンペラーの父です。
母ローズトレイルは不出走馬ですが、その兄弟にベニチオ(豪G1ヴィクトリアダービー)をはじめ3頭の重賞勝ち馬がいる良血。「ファー×キングマンボ×デインヒル」というパワーあふれる洋芝向きの血統構成で、小回りコース向きの持続力を感じさせます。気性が勝ったタイプで行きたがるところがあるだけに、1000m通過58秒4というハイペースとなって折り合いがついたのはラッキーでした。
このところヌレイエフ系が盛り返しているのは、ピヴォタルという中興の祖が大きな役割を果たしています。もしこの先、シンエンペラーまたはオフトレイルがGIを勝てば、JRAでは2003年の朝日杯FSを勝ったコスモサンビーム以来、久々の戴冠となります。
血統で振り返る北九州記念
【Pick Up】ピューロマジック:1着
新冠の村田牧場は、ローレルゲレイロ(スプリンターズS、高松宮記念など重賞4勝)の生産者として知られていますが、活躍馬はそれだけではありません。2020年以降のわずか5年未満で、ディープボンド、ノースブリッジ、モズベッロ、ソリストサンダー、フルデプスリーダー、ピューロマジックといった活躍馬が出現し、重賞タイトルの総数は「10」に達しました。2020年以降、JRAの平地重賞を10勝以上生産した牧場は、ノーザンファームや社台ファームなどの大手を含めて10しかありません。繁殖牝馬約30頭の個人牧場としては驚異的といえるでしょう。
母メジェルダは現役時代にファンタジーSで2着と健闘しました。ピューロマジックの全兄メディーヴァルは芝1000mのオープン韋駄天Sの勝ち馬で、半兄バグラダスはGI朝日杯FS5着馬。
ピューロマジックとメディーヴァルの父はアジアエクスプレス、バグラダスの父はマジェスティックウォリアーと、いずれもダート向きの種牡馬から誕生しています。にもかかわらず芝で活躍しているのは、ディープインパクトを父に持つ母メジェルダの適性が優越しているからでしょう。
父アジアエクスプレスは、これまで芝15勝、ダート99勝という成績。ダートが圧倒的ですが、土曜福島のメインレース・バーデンバーデンC(3勝クラス・芝1200m)も同産駒のキタノエクスプレスが勝っています。配合はピューロマジックと同じく「アジアエクスプレス×ディープインパクト」。配合によっては芝もこなせる種牡馬です。
知っておきたい!血統表でよく見る名馬
【セクレタリアト】
「ビッグレッド」の愛称で親しまれ、1973年に米三冠を達成。アメリカ競馬史上最も偉大なサラブレッドの一頭に数えられています。2010年には映画化されました(邦題は『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド』)。父ボールドルーラーは計8回米チャンピオンサイアーに輝いた大種牡馬で、半兄サーゲイロード(サーアイヴァー、ハビタットの父)も優秀な種牡馬だったので、セクレタリアトも成功間違いなしと見られていましたが、期待ほどの成績は挙げられませんでした。
ただ、最高クラスの繁殖牝馬を与えられた影響で、母の父としてはきわめて優秀。ストームキャット、エーピーインディ、ゴーンウェスト、チーフズクラウン、デヒアなどそうそうたる種牡馬群のブルードメアサイアーとなりました。タイプとしては、スピード型だったボールドルーラーの影響は希薄で、母の父プリンスキロのスタミナや底力を感じさせるタイプ。芝適性もあります。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「上半期のJRA日程が終了しました。ここまでの種牡馬ランキングの感想は?」
ベスト10の成績を見ると、1位キズナ、2位ロードカナロア、3位エピファネイアの3頭が僅差で競り合い、大きく離れて4位ドゥラメンテ、5位ハービンジャー、6位ルーラーシップ、7位ドレフォン、8位モーリス、9位ディープインパクト、10位リオンディーズまでがまた僅差、という状況です。
1~3位の獲得賞金は約24~21億円、4~10位は約11~8億円のレンジに収まり、3位と4位の間に大きな断層が見られます。1~3位は重賞をコンスタントに勝っていることも大きいと思います。3位のエピファネイアは春シーズンに4つのGIを勝ち、今年だけで重賞9勝。これまでになく好調です。
ただ、産駒数が少ないキタサンブラックやスワーヴリチャードなどは、来年以降、駒が揃えば上位に食い込んでくるはずです。上位3頭が抜け出し、上位種牡馬のなかである程度の強弱が見えてきたとはいえ、群雄割拠時代はまだ続いているという認識です。