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来季のクラシック候補か 注目の2歳重賞制したA.オブライエン厩舎の若駒を紹介!

  • 2024年07月03日(水) 12時00分

G1馬を母にもつウートンバセット産駒


 先週の日曜日(6月30日)、ダブリン近郊のカラ競馬場でG1愛ダービー(芝12F)が行われ、前走G1英ダービー(芝12F)では3着に泣いたロスアンゼルス(牡3、父キャメロット)が、見事な巻き返しを見せて優勝。愛国で調教されている3歳牡馬にとって、最高の栄誉を手にした。

 今週のこのコラムでは、そのアンダーカードに登場し、来季のクラシック候補として脚光を浴びることになった若駒をご紹介したい。

 近年、愛ダービー当日に組まれるのが定番になっているのが、2歳馬によるG2レイルウェイS(芝6F)だ。創設は1851年だから、1866年創設の愛ダービーよりも実は長い歴史を誇る。

 この時期に行われる6F戦ではあるが、翌春のクラシックとの結びつきは浅からぬものがあり、今世紀に入ってからだけでも、01年の勝ち馬ロックオブジブラルタル、05年の勝ち馬ジョージワシントン、08年の勝ち馬マスタークラフツマン、19年の勝ち馬シスキンの4頭が、翌年春に英国もしくは愛国(あるいは両方)の2000ギニーを制している。

 今年、このレースの勝ち馬となったのが、エイダン・オブライエン厩舎のアンリマティス(牡2、父ウートンバセット)だ。

 G1コロネーションS(芝7F213y)、G1ジャックルマロワ賞(芝1600m)と2つのマイルG1を制したイモータルヴァースの6番仔にあたるのが、アンリマティスだ。イモータルヴァースは、3歳秋にG1マイルCS(芝1600m)に参戦。勝ち馬エイシンアポロンから4.1/4馬身差の7着に健闘したから、御記憶のファンも多いはずだ。

 現役引退の翌年、イモータルヴァースはタタソールズ・ディセンバーセールに登場。ダンシリを受胎していた同馬は、セッション最高価格となる470万ギニー(当時のレートで約8億5060万円)で、クールモアを中心としたパートナーシップの代理人に購買された。

 現役馬として優秀だっただけでなく、イモータルヴァースは既に、母としても優秀なことを実証済みだ。カラヴァッジオを交配され、2019年に同馬の4番仔として生まれたのが、G1チェヴァリーパークS(芝6F)、G1ジャンプラ賞(芝1400m)と2つのG1を制したテネブリズムである。さらに、ジャスティファイを交配されて2020年に同馬の5番仔として生まれたのが、G2エアリースタッドS(芝6F)を含めて2戦2勝の成績を残したスタチュエットだ。

 そして、ウートンバセットを交配されて2022年に生まれたのが、アンリマティスである。

 エイダン・オブライエン厩舎に入厩したアンリマティスは、5月25日にカラで行われたメイドン(芝6F)でデビュー。短頭差という辛勝ながら、デビュー勝ちを果した。

 実は、この段階で既に、ブックメーカー各社は、来年5月3日にニューマーケットで行われる三冠初戦のG1二千ギニー(芝8F)に向けた前売りで、同馬に15倍から17倍のオッズを提示し、前売り1〜2番人気としていたのだった。

 こうした状況で迎えたのが、アンリマティスにとって2度目の実戦となった、30日のG2レイルウェイSだった。

 そういう馬であるだけに、レイルウェイSでのアンリマティスは被った1番人気になったはずだと、誰もが思うのだが、実際は違った。5頭立てとなったレイルウェイSで、アンリマティスはオッズ9.0倍の5番人気。すなわち、最低人気だったのである。

 その背景にあったのは、エイダン・オブライエン厩舎の主戦であるライアン・ムーア騎手のチョイスだった。エイダン・オブライエン厩舎からはこのレースにもう1頭、タンブリッジウェルズ(牡2、父ノーネイネヴァー)が出走していた。2歳だった2022年、G1モルニー賞(芝1200m)、G1ミドルパークS(芝6F)という2つのG1を含めて、4重賞を制したブラックベアードの全弟にあたるのがダンブリッジウェルズだ。6月5日にカラで行われた一般戦(芝6F)を2.3/4馬身差で制し、デビュー2戦目にして初勝利を挙げての参戦だった。2頭出しで臨んだ中、ライアンが選択したのはアンリマティスではなく、タンブリッジウェルズだったのである。かくして、オッズ2.375倍の1番人気に推されたのはダンブリッジウェルズで、この一戦に関してはライアンに捨てられた形となったアンリマティスは、オッズ9.0倍の5番人気に甘んじたのだった。

 W.ローダンが騎乗したアンリマティスは、レース前半は5頭立ての最後方を追走。残り300m付近から末脚に火がつき、残り80mで先頭に立つと、そこから1/2馬身抜け出す快勝。一方のタンブリッジウェルズは、前半3番手を追走後、残り2F付近からライアンの手が激しく動くも反応は鈍く、勝ち馬から4馬身遅れの4着に敗退した。

 この結果を受け、大手のパディーパワーは同馬の二千ギニーにおけるオッズを、11倍にカット。抜けた1番人気に支持することになった。

 オブライエン師はレース後、9月15日にカラで行われるG1ナショナルS(芝7F)が秋の大きな目標になるとコメント。いずれにしても、アンリマティスの動向は、今季後半の欧州競馬における、大きな注目点となりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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