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【函館記念 AI予想】見解が割れる一頭! AIの注目馬は好走馬の傾向を覆すことができるか

  • 2024年07月08日(月) 18時00分

七夕賞は単勝オッズ4.3倍(2番人気)のレッドラディエンスが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

人気薄の伏兵がたびたび上位に食い込んでいるレース


AIマスターM(以下、M) 先週は七夕賞が行われ、単勝オッズ4.3倍(2番人気)のレッドラディエンスが優勝を果たしました。

伊吹 完勝と言って良いでしょう。五分のスタートから行きたい馬を先に行かせ、道中は序盤から積極的に飛ばした各馬の後ろ、後方待機勢よりやや前くらいの絶妙なポジションを追走。4コーナーで先行勢との差を詰め、大外を回す形でゴール前の直線に入っています。その後は先に抜け出したダンディズム(4着)を残り100mほどの地点でかわし切り、遅れて後方から迫ってきたキングズパレス(2着)に対してもセーフティリードを保ったまま入線。前半1000mの通過タイムが57秒3とかなり速めだった点を含め、鞍上の戸崎圭太騎手にとっては思惑通りのレース展開だったかもしれませんね。

M レッドラディエンスは重賞初制覇。2走前のコパノリッキーCを勝ってオープン入りし、前走のメトロポリタンSでも2着に健闘していたものの、重賞を使うのは今回が初めてでした。

伊吹 レース前の段階から単勝1番人気になってもおかしくないくらいの注目を集めていましたが、正直なところ私はさすがに期待され過ぎだろうと思っていたんですよね。それなりに高く評価できる内容だったとはいえ、直近の2戦はいずれも出走頭数が9頭以下。重賞初挑戦、かつ15頭立ての多頭数ということで、レッドラディエンス自身にとってはなかなか厳しいシチュエーションだったと言えます。そんな中で見せたのが今回のパフォーマンス。相当にポテンシャルの高い馬でなければ成し遂げられない芸当ですし、おそらくどんな展開にも戸惑うことなく対応できるタイプなのでしょう。

M そうなると、今後が非常に楽しみですね。

伊吹 次走は新潟記念を予定しているとのこと。もともと左回りのレースを主戦場としてきた馬ですし、出走してきたら無理には逆らえません。ご存じの通り、レッドラディエンスは貴重な存在となったディープインパクト直仔。母のペルフォルマーダも現役時代にアルゼンチンオークスで3着となった実績がある馬ですから、より大きな舞台でも活躍できるだけの下地はあります。今秋以降のビッグレースで的確な評価を下せるよう、今後もしっかりこの馬の動向をチェックしておきましょう。

M 今週の日曜函館メインレースは、七夕賞に続くサマー2000シリーズの第2戦、函館記念。昨年は単勝オッズ4.1倍(1番人気)のローシャムパークが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は単勝オッズ8.3倍(4番人気)のルビーカサブランカが2着に、単勝オッズ5.0倍(2番人気)のブローザホーンが3着に食い込み、3連単2万1330円の低額配当決着。なお、単勝オッズ18.8倍(7番人気)のハヤヤッコが勝った2022年も3連単の配当は7万6970円にとどまっています。


伊吹 堅めの決着が続いている点は少々気掛かりですね。もっとも、過去10年の函館記念を振り返ってみると、半数の5回は3連単の配当が20万円超。2020年には3連単343万2870円の高額配当が飛び出していますし、基本的には波乱含みの一戦と言えるでしょう。


M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、3着以内馬延べ30頭のうち16頭を7番人気以下の馬が占めています。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4番人気から単勝7番人気の馬は2014年以降[3-2-4-31](3着内率22.5%)、単勝8番人気以下の馬は2014年以降[1-7-3-78](3着内率12.4%)となっていました。上位人気グループと下位人気グループの好走率差が比較的小さいので、伏兵を積極的に狙っていくべきレースと言えるでしょう。

M そんな函館記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、デビットバローズです。

伊吹 どちらかと言えば穴党寄りのAiエスケープですが、今回は人気の中心となりそうな馬を挙げてきましたね。

M デビットバローズはキャリア12戦の5歳馬。まだオープンクラスでは勝ち鞍がないものの、前哨戦の巴賞で2着に健闘しましたし、2走前の新潟大賞典でも3着馬と0.2秒差の4着に食い込んでいます。比較の難しいメンバー構成なので何とも言えませんが、おそらく上位人気グループの一角を占めることになるのではないでしょうか。

伊吹 Aiエスケープはここ2回と同じような堅めの決着をイメージしているのかもしれませんね。この見解を頭に入れたうえで、私はレースの傾向からデビットバローズの好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 近年の函館記念は、今回より格の高いレースで善戦してきた馬が中心。2020年以降の3着以内馬12頭中9頭は“前年以降の、JRAの、右回りの、3000m未満の、GI・GIIのレース”において9着以内となった経験がある馬でした。


M ハンデキャップ競走のGIIIであるにもかかわらず、GIやGIIで健闘した実績のない馬はあまり上位に食い込めていませんね。

伊吹 GIIIやオープン特別、条件クラスのレースを主戦場としてきた馬はもちろん、左回りや3000m以上のGI・GIIしか使ってこなかった馬も、扱いに注意するべきでしょう。

M デビットバローズはまだGIやGIIに出走したことがない馬。残念ながら、この条件をクリアしていない一頭ということになります。

伊吹 あとは臨戦過程にも注目しておきたいところ。同じく2020年以降の3着以内馬12頭中10頭は、前走との間隔が中5週以上でした。


M なるほど。臨戦過程に余裕のない馬は、過信禁物と見ておいた方が良さそうですね。

伊吹 余談ながら、前走のレースが巴賞だった馬は2010年以降[1-6-2-61](3着内率12.9%)、2021年以降[0-1-0-13](3着内率7.1%)。2009年以前に比べると好走例がだいぶ減っているので、疑ってかかった方が良いかもしれません。

M 巴賞組のデビットバローズにとってはこれも気掛かりな傾向。前走から中1週ですし、コンディション面はしっかりチェックしておくべきでしょうね。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬12頭中10頭は、馬番が1番から9番でした。


M こちらもはっきりと明暗が分かれています。

伊吹 2019年以前を含め、この函館記念は基本的に外枠不利。小回りでゴール前の直線が短いコースですし、ロスの大きな競馬になりそうな馬は強調できません。

M もし仮にデビットバローズが外寄りの枠を引いてしまったら、好走馬の傾向からはまったく強調できない馬ということになってしまうわけですね。

伊吹 正直なところ、私はたとえ好枠に入ったとしても評価を下げるつもりでした。このレースが合いそうな馬はたくさんいるので、そういったライバルを相手にどこまでやれるか――といったところでしょう。ただ、他ならぬAiエスケープが有力と見ているわけですし、ハンデキャップ競走のGIIIで上位に食い込めるくらいの実力は十分にあると見て良さそう。無理なくこの馬あたりまで押さえられるよう、連軸に据える馬や買い目の作り方を工夫したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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