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重賞馬含む17頭が転厩 仏のトップトレーナーとアガ・カーン殿下が袂を分かつことに

  • 2024年08月21日(水) 12時00分

ルジェ厩舎は共同経営への切り替えを発表


 ヨーロッパを代表するオーナー・ブリーダーのアガ・カーン殿下と、フランスのトップ・トレーナー、ジャン・クロード・ルジェ調教師が、袂を分かつことになった。アガ・カーン殿下のスポークスマンが、13日(火曜日)に明らかにしたものだ。

 ルジェ厩舎に所属しているアガ・カーン殿下所有の現役馬17頭は、フランシス・アンリ・グラファール厩舎に転厩することになった。17頭の中には、昨年秋のG3シェーヌ賞(芝1600m)勝ち馬ザビアリ(牡3、父ウートンバセット)が含まれている。

 転厩の理由についてアガ・カーン殿下は、「業務の効率化のため」と説明している。

 ジャン・クロード・ルジェ師(70歳)は、リンパ腫の治療のため、今年5月から現場を離れ、厩舎運営は助手たちの手に委ねられている。それでも、7月7日にドーヴィル競馬場で行われたG1ジャンプラ賞(芝1400m)では、プシュキン(牡3、父スタースパングルドバナー)、ハヴァナシガー(牡3、父ハヴァナグレー)が1・2着を占めるなど、管理馬の活躍は続いていた。

 そのルジェ師が、来シーズンから厩舎をジェロム・レニエ調教師と共同経営にすると発表したのは、8月8日のことだった。レニエ師も、発表があった4日前の8月4日にドーヴィル競馬場で行われたG1モーリスドゲスト賞(芝1300m)を、管理馬ラザット(セン3、父テリトリーズ)で制するなど、多くの活躍馬を手掛けているトップ・トレーナーだ。ルジェ厩舎とレニエ厩舎の合体は、スーパー・ステーブルの誕生と、フランス競馬サークルでは大きな話題を呼んだ。

 ルジェ師が厩舎を共同経営に切り換えることと、アガ・カーン殿下の今回の決断との間に、因果関係があるかどうかは、不明だ。

 アガ・カーン殿下のフランスにおけるメイン厩舎は、アラン・ドゥ・ロワイエデュプレ調教師が長く務めていた。その一方で、ここ15年ほどの間、アガ・カーン殿下の所有馬の一部がルジェ調教師の手に委ねられるようになり、2010年にベーカバドでG1パリ大賞(芝2400m)を、2012年にヴァリラでG1仏オークス(芝2100m)を、2015年にエルヴェディヤでG1コロネーションS(芝1609m)など3つのG1を、そして2022年にはヴァデニでG1仏ダービー(芝2100m)など2つのG1を制するなど、このコンビによる活躍が続いた。

 一方、2021年のシーズンを最後にアラン・ドゥ・ロワイエデュプレ調教師が引退をすると、そのあとを任されたのが、フランシス・アンリ・グラファール調教師である。こちらも、今年のG1仏1000ギニー(芝1600m)をルーヒヤで制するなど、大きな成果をあげている。21日にヨーク競馬場で行われるG1インターナショナルS(芝2050m)に出走を予定しているカランダガン(セン3、父グレンイーグルス)も、アガ・カーン殿下が所有し、グラファール調教師が手掛けている1頭だ。

 さらに関係が密接になるアガ・カーン殿下とグラファール厩舎から、今後どのような活躍馬が生まれるか。そして、ルジェ師とレニエ師が共同経営する厩舎は、どのような動きを見せるのか。今季後半から来季にかけて、目が離せない状況にあると言えそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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