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【高柳大輔調教師】GI馬テンハッピーローズで挑むセントウルS──初スプリント戦&米遠征を選んだ“ワケ”

  • 2024年09月01日(日) 18時01分
今週のFace

▲セントウルSに挑むテンハッピーローズを管理する高柳大輔調教師に直撃(撮影:大恵陽子)


ヴィクトリアマイルで津村明秀騎手とともにGI初制覇を果たしたテンハッピーローズ。武器の末脚が遺憾なく発揮できた一戦でした。

秋の目標に据えるのはアメリカ・ブリーダーズカップマイル。その前哨戦として陣営は1200mのセントウルSを選びました。400mの距離短縮となりますが、その意図とは。高柳大輔調教師に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)

「こういう馬は初めて。ワンペースになりそうですけど…」


──改めて、今春のヴィクトリアマイルでGI制覇おめでとうございました。直線で勢いよく伸びてきましたね。

高柳 前がハイペースで行ってくれていたので、この馬にとってはレースがしやすそうだなと見ていました。あとは最後の直線で伸びるかどうか心配でしたが、持ったままで上がってきたので、「もしかして勝つんじゃないかな」と思いました。

──前半600mが33秒8とペースが速く、差しタイプのテンハッピーローズにはいい流れだったんですね。

高柳 こういう競馬をペースが遅くてもずっと続けてくれていて、ここ一番で結果として出してくれました。

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▲自慢の末脚で制したヴィクトリアマイル(撮影:下野雄規)


──これまで1400mを中心に使ってきていましたが、前走の阪神牝馬Sから続けて1600mに距離延長。その意図を教えてください。

高柳 1400mを使っていたのは折り合いが難しかったからです。道中は脚を溜めた方が最後の脚をしっかりと使える馬なのですが、ゲートが速く、そこから下げたくてもなかなか折り合えませんでした。揉まれるとスイッチが入って行っちゃって、最後の脚を使えないこともありました。ずっと1400mで後方で我慢させることを教えていて、これだったら1600mでもいいかなと感じるようになったので、距離延長しました。

──ヴィクトリアマイルの坂路の最終追い切りなどを見ていると、たしかに折り合いが難しそうに思えます。

高柳 掛かっていく馬なので上手くペースを落とすのが大変で、いつもああいう感じなんです。普通のキャンターでもそうです。

──それでも溜められれば末脚はすごいですよね。

高柳 こういう馬は初めてです。この姿勢で脚が溜まっているんだ、と驚きました。頭が高いのでワンペースな走りになりそうですけど、この馬にとってはこれが合っているんでしょうね。

──ずっと調教やレースで取り組んできたことが結実してのGI制覇は格別だったのでは?


高柳 帰り道、「あ、勝ったんだ〜」という余韻がありました。津村明秀騎手もGI初制覇で、「あれ、勝っていなかったんだ」と思うほどでした。

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▲GI馬を示す星つきのゼッケンでトレセンを歩くテンハッピーローズ(撮影:大恵陽子)



「アメリカに挑戦したい」BCマイルへ


──4歳から重賞以外は左回りのレースを多く走り続けています。そこはこだわりが?

高柳 特にそういうことはなくて、ちょうど左回りのレースが多くなりました。

──てっきりこだわり抜いたローテーションだったのかと。

高柳 たしかにジョッキーはみな左回りがいいとは言っていました。僕としては直線が長いコースがいいなと思っていて、そうすると新潟や東京が選択肢に挙がるんですけど、たまたまどこも左回りで。

──秋の目標はブリーダーズカップマイルとのことですが、その理由を教えてください。

高柳 左回りということと、マイルのレースがあったためです。それと、アメリカに挑戦したい思いがありました。

──高柳厩舎は今年、ケンタッキーダービーにテーオーパスワードで参戦し5着でした。アメリカ競馬への思いがあるのでしょうか?

高柳 アメリカに限らず海外でもしっかり調整をして出走させられるスキルを厩舎としても僕としても持ちたいと思っています。海外遠征のチャンスがあれば行きたいと思っていました。

──今年はデルマー競馬場での開催となります。ラヴズオンリーユーやマルシュロレーヌが歴史的勝利を挙げた競馬場で、芝1600mはコーナー4回。その点はどうでしょうか?

高柳 そこだけちょっと不安ではあるんですけど、前に行く馬ではないのでペースが流れてくれれば、かえって合っているんじゃないかなと思います。自分の競馬に徹してくれればいいと思います。

──そのBC(11月2日)からの間隔も考えてのセントウルSなのでしょうか。

高柳 そうですね、いろいろと候補も挙がった中で、津村騎手は左回りがいい、と。1400mや1600mがあればベストだったんですけど、選択肢が東京1800m(毎日王冠や府中牝馬S)かセントウルS。前者だとBCまでの間隔が短すぎるので、1200mのセントウルSで序盤からガシガシ行かずに自分のペースでレースをしよう、という話になりました。ヴィクトリアマイルも1600mながらスプリント戦のようなペースでしたから。

──ペースが流れて、長い直線で末脚を生かせられれば好勝負が期待できそうです。8月13日に栗東トレセンに帰厩して状態はいかがですか?

高柳 暖かい季節の方がいい馬なんですけど、夏は湿気で蹄が柔らかくなって、刺激がダイレクトにきて痛むことがあります。なので、夏は休ませて、秋冬から暖かくなるにつれて使って、というサイクルでした。今年は梅雨に蹄が怪しい時期がありましたけど、いまは調整しながら順調に進められています。

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▲セントウルSに向けて「いまは調整しながら順調に進められています」(撮影:大恵陽子)


──最後に意気込みをお願いします。

高柳 BCに向けて、セントウルSでもいい競馬ができたらと思います。応援よろしくお願いします。
(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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