スマートフォン版へ

【新潟記念】シンリョクカが復活の重賞初制覇 充実の秋に向け期待が膨らむ

  • 2024年09月02日(月) 18時00分

鞍上のペース判断が勝利に導く


重賞レース回顧

新潟記念を制したシンリョクカ(撮影:小金井邦祥)


 良馬場に恵まれ、果敢に行くはずの4歳牝馬アリスヴェリテ(父キズナ)のいる今年は速いペースが予測された。だが、レース直前の人気馬ライトバック(父キズナ)の信じられない放馬逸走(競走除外)のアクシデントも影響したのか、アリスヴェリテが主導権を握ったものの、前半1000m通過は「58秒9」。スローではないが、この10年間では4番目に相当するごく標準の平均ペースに落ち着いた。後半1000mは「59秒1」。

 向正面の直線も長い新潟2000mでは、ベテラン騎手でも流れを読むのは難しい。前半1000m通過地点では予想外の縦長になり、最後方グループは20馬身も離れていた。2番手につけた牝馬シンリョクカ(父サトノダイヤモンド)の1000m通過は推定59秒8前後。そこから10数馬身も離れた後方グループは明らかにペース判断を失っている。

 2番手から抜け出して最後まで粘り切って人馬ともに初重賞制覇(オーナーも初重賞勝ち)を達成したシンリョクカの後半1000mは推定「58秒2」だった。

 プラス14キロで予想外に太め残りだったアリスヴェリテこそ失速したが、先行したシンリョクカ、4着に粘り込んだゴールドプリンセス(父ゴールドアクター)は失速していない。勝ったシンリョクカの上がり3ハロンは34秒4-11秒9。

 直線中ほどからエンジン全開となりハナ差まで追い詰めた2着セレシオン(父ハーツクライ)の上がりは32秒8。実に「1秒6」もの差があってのハナ差。残り3ハロンでも10馬身近い差があったことになる。持ち味はフルに生かし切ったセレシオンだが、荻野極騎手は「きわどいところまで来ていただけに悔しい。これをいい経験にしたい」と、セレシオンの戦法とはいえ、道中の離され過ぎを残念がるコメントだった。

 3着キングズパレス(父キングカメハメハ)は後方から差し馬の中では早めに追撃態勢に入って、外に回った直線では差し切れそうな勢いだった。直線の中ほどでは外のレッドラディエンス(父ディープインパクト)の位置を確認する余裕があった(当面のライバルとはサマー2000シリーズのポイント争いが関係した)。だが、必死に粘り込むシンリョクカを交わせそうだったのは一瞬。馬群を割って伸びたセレシオンにも差されてしまった。これで通算【4-10-3-3】。まず凡走はしないが、最後の詰めを欠きがちなのはいつもと同じ。能力は出し切ったように映った。

 4着ゴールドプリンセスは、53キロの軽量を生かし勝ち負けに持ち込めそうなシーンもある好走だったが、最後は現時点での能力差だろう。だが、今回は初コース。切れ味の差が出ただけでコースが変われば一段の充実も期待できる。

 5着レッドラディエンスは、七夕賞より1.5キロ増のハンデを考慮し、早めにスパートするかと思えたが、馬体重プラス10キロの影響もあったか道中の反応一歩。最後は地力で差のない0秒3差まで追い詰めたが、勝ち負けに持ち込めそうなフットワークではなかった。サマー2000シリーズチャンピオンをあと一歩のところで逃してしまった。

 勝ったシンリョクカは、初重賞を制した勢いと、パワーアップを味方に、11月のエリザベス女王杯挑戦を明言している。確実に復活しているのは確かなので、古馬になってから初めてのGI挑戦を楽しみにしたい。3歳で挑戦した昨年のエリザベス女王杯は9着とはいえ差は0秒5だった。新潟よりコースは合うはずだ。

 一方、思いもよらないレース前のアクシデントで競走除外となってしまったライトバックには、入念なチェックで立て直しに時間がかかるような負傷や、精神面でのショックに見舞われていないことを祈りたい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング