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日本からはシンエンペラーが出走予定 アイリッシュ・チャンピオンズ・フェスティバルを展望

  • 2024年09月11日(水) 12時00分

アイルランドにおける競馬の祭典


 今週末は、アイルランドにおける競馬の祭典「アイリッシュ・チャンピオンズ・ファスティバル」が開催される。

 主要な競走を集中開催するという、世界各国で日常化した手法を、アイルランドが取り入れたのは2014年だったから、歴史はまだ浅い。創設当時の名称は「アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド」だった。

 他国の集中開催と少々趣を異にするのは、開催場が2つにまたがることである。「ウイークエンド」の土曜日がダブリンのレパーズタウン競馬場が、日曜日がキルデア近郊のカラ競馬場が、その舞台となるのだ。「アイリッシュ・チャンピオンズ・ファスティバル」と名称が改まったのは、昨年のことだった。

 14日にレパーズタウン競馬場で行われるフファスティバル初日には、2つのG1を含む5重賞が組まれている。開催順に記せば、2歳のG2チャンピオンズジュベナイルS(芝8F)、3歳以上のG2ソロナウェイS(芝8F)、3歳以上の牝馬によるG1メイトロンS(芝8F)、3歳以上によるG1アイリッシュチャンピオンS(芝10F)、3歳以上によるG3キルターナンS(芝12F)となる。

 メイン競走となるのは、総賞金125万ユーロ(約2億100万円)と、5競走の中で飛びぬけて賞金が高いG1アイリッシュチャンピオンSだ。ファスティバル2日目にカラ競馬場で組まれた、4つのG1を含む5重賞にも、これだけの賞金が用意されたレースはなく、つまりは、「アイリッシュ・チャンピオンズ・ファスティバル」のメイン競走と言ってよいのが、レパーズタウン競馬場のG1アイリッシュチャンピオンSなのだ。

 競馬ファンならば先刻ご存知のように、今年はここに矢作芳人厩舎のシンエンペラー(牡3.父シユーニ)が出走を予定している。

 アイリッシュチャンピオンSの創設は1976年だから、ファスティバルよりはだいぶ以前のことになる。しかし、1世紀以上の歴史を持つレースがごろごろあるヨーロッパにおいては、国の看板競走としてはむしろ「後発」で「新参者」だ。創設当初の名称は、ジョーマクグラスメモリアルSだった。開催競馬場がフェニックスパーク競馬場に移った1984年に、フェニックスチャンピオンSに改称。1990年をもってフェニックスパーク競馬場が閉鎖になり、開催地がレパーズタウン競馬場に戻った1991年から、現行のアイリッシュチャンピオンSとして施行されている。

 距離体系から言えば、この路線におけるシーズンのクライマックスになるのが、10月にイギリスで行われるG1チャンピオンS(芝9F212y)で、実際に、1987年のトリプティク、1988年のインディアンスキマー、1997年のピルサドスキー、2008年のニューアプローチ、2016年のアルマンゾル、2019年のマジカルの6頭が、2つのチャンピオンSの同一年ダブル制覇を成し遂げている。

 距離区分は異なるにもかかわらず、アイリッシュチャンピオンSとの結びつきが強いのが、3週間後にパリロンシャン競馬場で行われるG1凱旋門賞(芝2400m)で、1989年にキャロルハウスが、1991年にスワーヴダンサーが、2007年にディラントーマスが、2009年にシーザスターズが、2015年にはゴールデンホーンが、この2競走の同一年連覇を果たしている。

 ここ10年の話をすれば、2016年の凱旋門賞馬ファウンドが、前走はアイリッシュチャンピオンSに出て2着、2020年の凱旋門賞馬ソットサスが、前走はアイリッシュチャンピオンSに出て4着だった。さらに、2016年の凱旋門賞2着馬ハイランドリール、2021年の凱旋門賞2着馬タルナワ、2022年の凱旋門賞2着馬ヴァデニが、いずれも前走はアイリッシュチャンピオンSだった。

 まとめれば、過去10年の凱旋門賞連対馬20頭のうち6頭の前走がアイリッシュチャンピオンSで、他のどのレースよりも多くの凱旋門賞連対馬を出している前哨戦が、アイリッシュチャンピオンSなのだ。

 シンエンペラーを管理する矢作調教師はかねてから、凱旋門賞の前に1回使うとしたら、それはアイリッシュチャンピオンSであるベきとの所見を述べられており、今回はこれを実践することになったものだ。

 そのシンエンペラーは、8月27日にシャンティイにある清水裕夫厩舎に到着。9月8日(日曜日)に、帯同馬のラファミリア(牡3・父レイデオロ、14日のG3キルターナンSに出走予定)とともにパリロンシャン競馬場に輸送され、1週間前追い切りを行うとともに、凱旋門賞へ向けたスクーリングを済ませた。

 この原稿を書いている段階で出走馬は未確定だが、ブックメーカーの前売りを見ると、昨年に続く連覇を狙うオーギュストロダン(牡4.父ディープインパクト)以外は、3歳世代が上位人気に並んでいる。その背景にあるのが、今年の欧州における3歳世代は水準が高いという見解だ。3歳・古馬混合戦が始まって以降、10F〜12Fの路線では、エクリプスS、ナッソーS、インターナショナルS、ヨークシャーオークスといったG1で3歳世代が勝利を収め、このうちナッソーSは上位4頭を、インターナショナルSは上位3頭を、ヨークシャーオークスでは上位2頭を、3歳世代が占める結果となっている。

 シンエンペラーにとってここは、凱旋門賞へ向けてのチューンナップが主要な目的になろうが、バリバリの欧州血脈を持つ彼が欧州の馬場でどのような競馬を見せるか、日本の競馬ファンのみならず、世界の競馬関係者による注目が集まっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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