▲スプリンターズSのマッドクールに騎乗する坂井瑠星騎手を直撃!(c)netkeiba
今年の高松宮記念を制したマッドクールと坂井瑠星騎手。昨年惜しくも2着だったスプリンターズSに再びコンビで挑みます。
今回はこれまでのレースの振り返りや、同馬の性格についてインタビュー。デビュー2戦目の初騎乗時から“GI級”の素質を感じていたそうです。海外遠征を行いながら全国リーディング4位(9月20日時点)と、大活躍の坂井騎手に意気込みを伺います!
(取材・文:井上達也)
GI馬になったマッドクールの成長と関係者の努力
──先日、シンエンペラーで愛チャンピオンSに挑みました。帰国直後です。少し振り返ってもらえますか。
坂井 タイトな競馬になりましたが、本番はもっと厳しいレースになると思いますから。すばらしいメンバーのなかで、次の凱旋門賞に向けてはいい内容だったんじゃないかな、と思います。
──スプリンターズSはマッドクールで参戦。春秋スプリント王の座がかかります。11着に敗れた前走の香港チェアマンズスプリントプライズを振り返ってください。
坂井 ゲートがうまくいかなかったのと、馬場も苦にしていた感じでした。日本の馬場とは違いますからね。残念な結果になってしまいました。
──高松宮記念は見事な勝利でした。
坂井 そうですね。レース前に思っていたプラン通りのレースでした。
──内ラチ沿いは最初から意識していましたか。
坂井 あの枠(1枠2番)でしたし、あの日の馬場状態は内ラチ沿いが良かったので。
──キャリアは13戦。まだ伸びしろがあると感じますか。
坂井 大事に使われてきたので、まだ伸びしろがあると思います。
──当日は重馬場でした。
坂井 決して得意だとは思いませんが、他の馬に比べたらマイナスにはならないと思います。
▲マッドクールにとって初のGIタイトルに(c)netkeiba
──22年3月の未勝利戦が初コンビ。ダート1400mで3着でした。ファーストコンタクトの印象は。
坂井 本当に心配になるぐらいトモが緩い馬でした。ただ、能力は感じましたね。特に、中京の1400mで未勝利を勝った時に、モノが違うな、GI級だなと感じましたし、その時に高松宮記念を意識して、厩務員さんとも“高松宮記念に行きたいですね”と話しました。
──どのあたりに、GI級と感じたのでしょう。
坂井 伸びしろがすごいな、というのが一番ですね。パッと乗った感じでは考えられないぐらいの走りだったので。順調にいけば、GIを狙えるな、と感じましたし。それだけ緩さがあった馬ですから、無理に使っていたら、ここまでこられていなかったと思います。毎回、2カ月ごとの間隔を取りながら、狙ったレースを勝っていきました。そこは関係者の努力というか、それがすべてだと思いますね。
──これまで前走時からの成長を一番感じたレースってありますか。
坂井 少しずつよくなっていったんですよね。どこかで急激にというよりも、だんだんステップアップしていったという感じですね。
──昨年のスプリンターズSは惜しくも2着でした。
坂井 とにかく悔しいレースでしたね。どのレースでも負けたら悔しいですけど、GIでハナ差2着というのは初めてでしたからね。スムーズでうまくいったな、というレースでしたが、着差が着差だけに、もう少し何とかできたかな、というのがあるので、本当に悔しいレースでしたね。ただ、GIで勝ち負けになるな、っていうのを改めて実感しました。
──あまり日本ではなじみのないダークエンジェル産駒。血統にも詳しい坂井騎手に特徴を分析していただきたいのですが。エンジェルシリカ(矢作厩舎)にも乗っていましたね。
坂井 スピードがある印象なので、日本の競馬に対応できるんじゃないかなと感じますね。
──マッドクールの性格に関しては。
坂井 ものすごく性格が良くて、余計なことをしない馬です。
▲「余計なことをしない」マッドクールの良さ(ユーザー提供:アイスバーさん)
──今回、香港から2頭が参戦します。とくにビクターザウィナーは高松宮記念で負かし、香港でも対戦しています。
坂井 強いですね。高松宮記念でも、あの馬がラチ沿いを走っていたら、もしかしたら負けていたかもしれません。とにかく、ゲートが速いですから。あっさりと勝ってもおかしくない馬だと思っています。
──坂井騎手は、毎年のように海外遠征に行き、国内外で活躍されています。この1年で変化のようなものはありますか。
坂井 いつもやることは同じで、上を目指し続けるのと、もらった騎乗依頼に結果で応えることが仕事だと思っています。
──マッドクールの話に戻ります。この馬の一番の強みは。
坂井 安定した先行力と、ある程度の位置からしっかりと脚を使えることが武器ですね。
──同一年春秋スプリントGI制覇も期待されます。最後に抱負を。
坂井 もちろん、GIはどのレースも勝ちたいけど、今年は去年のリベンジという意味が強いですね。日本のスプリント界でトップレベルの馬というのは間違いないので、春のチャンピオンとして秋も勝ちたいです。
(文中敬称略)