豪州のサラブレッドマーケティング団体であるオスホース(Aushorse)が、オーストラリアのサラブレッド産業を世界中に発信。
今回は、日本でも活躍が目立つオーストラリア血統を評論家の栗山求氏がご紹介します。
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盛んな馬産と高速決着が育むスピードの血脈
オーストラリアは世界有数の馬産大国として知られている。2019年の生産頭数はアメリカに次いで世界第2位。
アメリカ 19925頭
オーストラリア 12944頭
アイルランド 9295頭
日本 7390頭
アルゼンチン 6256頭
アメリカ競馬はダートが主流で、ヨーロッパは芝が主流。ただ、後者に関しては時計の掛かる馬場で行われることが多いので、日本の高速馬場とは性質が異なる。
一方、オーストラリアは比較的勝ちタイムが速く、たとえば同国の代表的な競馬場であるロイヤルランドウィックのコースレコードは、芝1200m1分07秒32、芝1600m1分32秒73。日本とさほど変わらない。
オーストラリア競馬のもうひとつの特色は、短距離戦が盛んであること。重賞競走のおよそ半数は芝1400m以下で、たとえば同国ナンバーワンの賞金額を誇るジ・エベレスト(1着賞金700万豪ドル)は芝1200mで行われる。
したがって、オーストラリアの馬産はスピードを追求する方向に発展してきており、短距離向きの競走馬のレベルがきわめて高い。
イギリスに遠征した馬が重賞を勝つことも珍しくなく、今年も牝馬のアスフォーラがキングチャールズ3世S(英G1・芝5ハロン)を制覇した。また、香港へ輸出される馬も多く、それらが香港のハイレベルなスプリント路線を形成している。
日本に近いサーフェイスで競馬が行われ、なおかつ血統的に豊かなスピードに恵まれている――。それがオーストラリア血統が日本で成功を収めている理由だろう。
クールモアやダーレーといった世界的な競馬グループは、オーストラリアに拠点を構え、そこに種牡馬牧場を所有している。シャトルで供用されるヨーロッパやアメリカ生まれの種牡馬群は超ハイレベルで、これらが“高速決着の芝”というふるいにかけられて適性を見極められることになる。
そこで好成績を残したものは、スピード対応能力に長けた超一流の芝血統なので、ヨーロッパの芝やアメリカのダートでしか通用しないローカルな血とは一線を画している。当然、馬場が似ている日本でも成功する可能性が高い。こうした血統レベルの高さも見逃せない。
菊花賞戦線のダークホースに浮上したメリオーレム、中距離重賞を狙うダノンエアズロック、来年のクラシック候補エリキングなど、オーストラリア血統を含む素質馬はまだまだ控えている。この流れはさらに加速していく可能性が高い。