▲スプリンターズSで1番人気が予想されるサトノレーヴ(撮影:高橋正和)
競馬アナライザーのMahmoud氏が、動画解析を駆使して科学的に競馬を分析する短期連載コラム「Mahmoudの競走馬研究室」がスタート!
スプリンターズS当週の9月27日(金)からホープフルS当週の12月27日(金)まで、毎週金曜日に更新していきます。
本連載では、当週に行われる注目レースの分析、予想印に加え、動画解析や指数算出などから導き出した「ここでしか見られない」独自理論をお届けします──。
(構成:Mahmoud、netkeiba編集部)
競馬場、開催ごとに異なる前後半のラップバランス
──新連載コラム「Mahmoudの競走馬研究室」がいよいよスタートします。Mahmoudさん、スプリンターズSから年末のホープフルSまでの計14回、どうぞよろしくお願いします。
Mahmoud 競馬アナライザーのMahmoud(マームード)です。動画解析で個別ラップタイムや完歩ピッチ等の走行データを計測し、走破タイムおよびラップタイムの値を指数化しています。その上で完歩ピッチの推移を鑑み、各競走馬のストロングポイントを分析します。まずは定量的データを基に考えてみよう、といったスタンスで競馬と向き合っています。
──第1回目の今日は、今週末に行われるスプリンターズSを分析します。まず、芝1200m戦の特徴を教えてください。
Mahmoud 1200m戦のラップタイムは、全頭全レースの前後半ラップタイムが公式データとして発表されています。ラップタイムを基にした分析には最適ですが、競馬場ごとに前後半バランスに差があるため、一概に比較することはできません。まずはこの表をご覧ください。
▲今回の予想勝ちタイム1:06.6を基準とした競馬場ごとの前後半のラップバランス (作成:Mahmoud)
Mahmoud この表は各競馬場のラップバランス統計値を基に、各競馬場の前後半バランスを算出したものです。今回の予想勝ちタイムを1:06.6としてこれに合わせたデータになっています。芝1200mのレースが同じ馬場差で行われたとして、前半600mを「京都で33.2秒で走ったA馬vs小倉で32.8秒で走ったB馬」では、中山で走った場合にどちらが速いか、といった比較ができます。
──小倉とはいえ、32秒台と言われるととても速いように感じますね。
Mahmoud 京都で33.2秒のA馬は、中山なら概ね32.8秒。小倉で32.8秒のB馬は、中山なら概ね32.9秒の前半600mタイムに相当し、同じ力配分で走った場合、A馬のほうが速いことが統計値からもわかります。
競馬場ごとのラップバランスに差が出る要因として、最初のコーナーまでの直線の長さやコースの起伏が挙げられます。公式発表されたラップタイムを見て一概にどちらが速いと判断するのは得策ではありません。
次は、中山芝1200mの前後半バランスを開催ごとに分けた表です。
▲代替開催を除いた通常開催時における中山芝1200mのレースラップタイム前後半平均値(作成:Mahmoud)
Mahmoud 3回、4回中山は前傾率が低く、1回、2回、5回は前傾率が高くなっていますが、これは風の影響です。暖かい時期は南方向の風が吹き、バックストレッチが向かい風、ホームストレッチが追い風。寒い時期は北風なので風向きが逆となるのが中山競馬場の特性です。
──同じ出力で走っても、寒い時期は前半が追い風のため速くなりやすく、暖かい時期は前半が向かい風のため速くなりづらい。公式ラップタイムとして発表される数字を額面通りに受け取ってはいけないというデータですね。このデータを基に、今年のスプリンターズSを解説いただきたいと思います。
走破タイム換算値No.1は想定8番人気の穴馬
Mahmoud 今年のスプリンターズSは、 netkeiba想定1〜11番人気まで勝つチャンスがある大混戦レースと見ています。
次の表は出走馬の過去のSP指数を基に、今回のスプリンターズSで想定される馬場+斤量で中山芝1200mを走った場合の走破タイム換算値と前後半バランスです。走破タイム換算値順(即ちパフォーマンスの高かった順)に上位20レースを掲載しています