▲毎日王冠に出走予定のホウオウビスケッツを管理する奥村武調教師(撮影:下野雄規)
今年の函館記念で重賞初制覇を果たしたホウオウビスケッツ。2着に3馬身半差をつけた圧巻のレースぶりに加え、巴賞と同重賞の連勝は2005年以来19年ぶりの快挙でした。
そんな話題を集める4歳馬、ホウオウビスケッツを管理するのは奥村武調教師。毎日王冠に向けての意気込みや、夏の振り返りを語っていただきました。今回も騎乗を予定する岩田康誠騎手と、前走後に交わしたやりとりとは…?
(取材・文:和久時秋)
ホウオウビスケッツに「競馬を教えるため」あえて使ったマイル戦
──これまで特に印象に残っているレースはありますか。
奥村武 日本ダービー(勝ち馬と0秒2差の6着)ですね。馬の雰囲気も良かったですし、直線に向いた時には“ひょっとしたら”と思える手応えでした。それも決して着を拾いにいったわけじゃなく、勝つための勝負にいっての6着ですから。最後は少し足りなかったけど、すごく内容のある走りだったと思っていますし、本当にいい競馬をしてくれました。
──今年に入ってから距離をマイルに短縮して、そこから復調した印象があります。
奥村武 若い頃から折り合い面の課題があったので、流れの速い競馬を一度経験させることで馬に競馬を教えるためにマイルを使わせてもらいました。距離自体は決して合うと思っていなかったのですが、マイルを使ったことで馬と人とがコンタクトを取って走れるようになってきましたし、そのタイミングで適距離に戻したことが巴賞や函館記念の走りにつながったのだと思います。
──滞在競馬も馬の気性的にも合っていたように思えます。
奥村武 そうですね。滞在は良かったのかもしれませんね。それは滞在の効果なのか、馬の成長によるものなのかは分かりませんが、去年と比べても随分とどっしり構えられるようになってきて、精神的に大人になってきた感じはします。
──函館記念のレース後に岩田康成騎手とはどのような会話をされたのでしょうか。
奥村武 岩田さんも「すごいな」と言ってびっくりしていました。「同じ勝つにしても、前回の巴賞とは内容が全然違う」とすごく褒めてくれました。
▲岩田康誠騎手からも評価された函館記念(撮影:山中博喜)
──秋初戦になります。始動戦に毎日王冠を選んだのはどのような理由でしょうか。
奥村武 天皇賞(秋)に出走するためには、現状は賞金が足りません。本来ならぶっつけで天皇賞(秋)でもいいぐらいなのですが。どこを使うにしてもまずは賞金を加算しないことには使いたいレースに使えませんからね。
──今の馬の状態はどうでしょう。
奥村武 函館の時が良すぎたので、その時と比較するとまだまだという感じです。元来が使っていって良くなるタイプですし、まだ休み明け感はありますね。レースまでにあと1週間ありますし、当日までにどれだけ上がってこられるかというところでしょう。
──もともと暑さには強くないタイプなのでしょうか。
奥村武 暑さは駄目ですね。ただ、やっと涼しくなってきたこともあり、夏負けがひどかった去年と比べればだいぶマシです。レースを使うにあたっては差し支えない状態ですよ。
──この先の目標に天皇賞(秋)などがあります。意気込みをお願いします。
奥村武 とにかく賞金を加算しないことには何も始まりませんからね。ここで何とか2着までに来てほしいところです。ただ、重賞で相当に強烈な馬たちを相手にしなければいけないので、レースまでにどこまで調子を上げられるかでしょう。
▲さらなる飛躍のために求められるのは賞金加算(撮影:下野雄規)
──この秋や来年以降も、ホウオウビスケッツとノースブリッジの2枚看板は国内外での活躍が期待されます。
奥村武 まだ看板というほどのタイトルは取れていませんからね。もっと上のクラスで結果を出して、ホウオウビスケッツも看板馬と呼ばれるように頑張ってもらえたらと思っています。
(文中敬称略)