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【京都大賞典予想】「ブローザホーンvsイクイノックス」宝塚記念覇者2頭を比較してみた──個別ラップが明かす“走りの質”の違い

  • 2024年10月04日(金) 18時02分
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▲「イクイノックスvsブローザホーン」走行データ比較から浮かび上がる、ミオスタチン遺伝子タイプごとの特性とは?(撮影:下野雄規、netkeiba)


競馬アナライザーのMahmoud氏が、動画解析を駆使して科学的に競馬を分析する短期連載コラム「Mahmoudの競走馬研究室」がスタート!

前半は、先週行われたスプリンターズSの振り返り。後半では京都大賞典に向けて、斤量の影響やミオスタチン遺伝子などの観点から、宝塚記念勝ち馬ブローザホーンの走りを徹底解析します。

王者イクイノックスとの比較で浮かび上がった、ブローザホーンの特徴とは?

(構成:Mahmoud、netkeiba編集部)

スプリンターズS回顧 動画解析で見えたサトノレーヴの敗因は?


──先週のスプリンターズS分析では、「勝つのはサトノレーヴかルガル」と断言されていましたが、9番人気のルガルが勝利しました。スプリンターズSを振り返っていきましょう。

Mahmoud まずは今年のスプリンターズSを基に、過去走を加えたデータを作成しました。レース前に掲載した値よりも走破タイムが約0.36秒遅くなっています。これは想定よりも少し時計のかかる馬場状態になった影響です。

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▲先週掲載した「走破タイム変換データ」にスプリンターズSの結果を加え、実際の走破タイムに合わせてタイムを補正(作成:Mahmoud)


※2024スプリンターズSのラップタイムは、Mahmoud氏が動画解析から計測した値であり、JRA公式発表の値とは異なります。

 1着のルガルは、以前のキャリアハイだった2024シルクロードSと比べると、前半600mで0.07秒遅く入り、後半600mで0.13秒速く上がって、結果として走破タイムを0.06秒更新した形と判定しました。2024シルクロードSとほぼ同じレベルの走りですが、キャリアハイを更新。前後半バランスも似ていますし、完歩ピッチも良く似ています。

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▲ルガルの平均完歩ピッチグラフ(1完歩に要する時間を平均した値。グラフの値が下になるほど、ピッチ=脚の回転が速いことを表す)。シルクロードS(青)とスプリンターズS(白)は前半800mまで良く似た推移で、高松宮記念(黄)よりも前半を速いペースで追走(作成:Mahmoud)


 ラストスパートは相手を早めにねじ伏せるような力強い形で、もう100mほど全開スパートを遅らせていれば、タイムはさらに縮められたでしょう。着差以上の完勝で、正統派スプリンターといえます。ルガル以外にもキャリアハイをマークした馬は多いものの、それぞれ更新幅はさほど大きくありません。

──サトノレーヴの敗因について、どのようにお考えでしょうか。

Mahmoud 動画解析からの視点で見ると、サトノレーヴは同コースで勝利した春雷Sと比べてストライド(歩幅)が伸びていませんでした。その詳細と要因を説明します。まずは平均完歩ピッチのグラフをご覧ください。

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▲サトノレーヴの平均完歩ピッチグラフ(作成:Mahmoud)


 今回のスプリンターズS(白)は前半ぎくしゃくしたリズムで走っていました。中盤もピッチを緩めずに追走しており、中団の位置取りにしては忙しない走りです。ラストスパートの全開区間ではピッチ(脚の回転)は速くできていますが、スピードが上がりません。その要因が、先に触れた同コース春雷Sとのストライド長の違いです。

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▲サトノレーヴの平均ストライド長グラフ。春雷Sよりも終始狭い歩幅で走っていたことがわかる(作成:Mahmoud)


 春雷S(黄)は南風を受けてゲートから0〜400mは向かい風。一方、スプリンターズS(白)は北寄りの風で同区間は追い風でした。春雷Sの方が馬場は速かったですが風との相殺により、0〜400m区間で出せるスピードはさほど変わらないと推測されます。にもかかわらず、その序盤でもスプリンターズSではストライド長が春雷Sより短くなっています。

 また、1200mトータルの平均ストライド長は春雷Sが7.28m、スプリンターズSが7.06mと22cmも短くなっています。サトノレーヴのピッチレベルからすると、平均ストライド長が22cm短くなると200mのラップタイムは0.35秒も遅くなります。

──ストライドが伸びなかった理由は何でしょうか。

Mahmoud 考えられる要因は2つあります。状態が良くない時はピッチが遅くなるよりもストライドが短くなる傾向が強いです。もう1点は、掛かった際に脚を回転させることに力を使いすぎて、ストライドが狭まるケースがあるということ。前半ぎくしゃくしたリズムで走っていたところを見ると、馬の気合が空回りしていたのかもしれません。

 ちなみに函館スプリントSのトータルの平均ストライド長は7.17m、キーンランドCで7.07mと、時計の掛かる芝よりも短い平均ストライド長に終わったという事実は、いかにも本来の走りができていなかったという証拠になります。

──状態が良くなかった、もしくは掛かっていたためにストライドが伸びず、スピードが上がらなかったということですね。初めてのGIのペースに戸惑ったようにも見えました。

Mahmoud 逃げたピューロマジックの前半600mタイムは自身のキャリアハイで、ピューロマジック自身のペースはとても速かったものの、そのペースに引っ張られることなく、自分のペースで走った馬も多かったです。その結果、じっくり脚を溜めて末脚を使うタイプの馬が力を発揮できたと言えるでしょう。

前走から大きく上昇したトウシンマカオ、ゴール前に脚が上がったナムラクレア


──「トウシンマカオとナムラクレアは前半溜めて運べれば」とおっしゃっていましたね。2頭についてもコメントをいただけますか。

Mahmoud まずは2着トウシンマカオの平均完歩ピッチのグラフからご覧ください。

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▲トウシンマカオの平均完歩ピッチグラフ。100〜200m区間で脚を使うシーンがありながら、後半でも常時セントウルS以上に速く脚を回転させている(作成:Mahmoud)


 トウシンマカオは、序盤で外のウインマーベルに前に行かせないよう頑張って脚を使ったものの、位置取りの勝負付けが終わってからは急かさず追走しました。再度ウインマーベルが迫ってきても慌てません。4コーナーでウインマーベルに一旦前に出られましたが、中盤で溜めを利かせた分、末脚を使えました。後半の完歩ピッチ推移を見る限り、前走以上の走りでした。前走比で最も上昇したのがトウシンマカオです。

Mahmoud 次に3着ナムラクレアの平均完歩ピッチのグラフです。

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▲ナムラクレアの平均完歩ピッチグラフ。600〜700m区間でスパートを開始していることが読み取れる(作成:Mahmoud)


 ナムラクレアは完歩ピッチの波形からもわかる通り、中京で好走した2023シルクロードSや2024高松宮記念と同様に、前半を抑えてレースを進めたことが好走の第一要因です。惜しかったのはラストスパートの始動がやや早かったため、ママコチャに並びかけようとしたラスト100m以降で脚が上がり気味となってしまったことです。ラスト600m辺りで外から迫ってきたムゲンの影響もあり、仕方のない面もありました。

斤量補正により混戦の京都大賞典 斤量1kgあたりで約0.292秒の影響が出る…?


──それでは京都大賞典の分析に移りましょう

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動画解析から個別ラップタイムや完歩ピッチを計測し、競馬を理論的に解明する唯一無二の競馬アナライザー。過去には競馬雑誌サラブレなどで活動。「Mahmoudの競走馬研究室」でしか見られない独自の理論をお楽しみください。

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