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キズナ産駒の3歳世代が大躍進 毎日王冠制したシックスペンスの血統背景について解説

  • 2024年10月07日(月) 18時00分

血統で振り返る毎日王冠


【Pick Up】シックスペンス:1着

 キズナ産駒の3歳世代はこれで重賞7勝目。キズナは総合種牡馬ランキングで現在首位を走っていますが、その原動力となっているのは3歳世代です。この世代のJRA勝利数は1位キズナ122勝、2位エピファネイア75勝、賞金額も2位を5億5000万円ほど引き離しています。

 昨年のこの時期に首位に立っていたロードカナロアは、3歳世代が駒不足というウィークポイントを抱えていたため、年末、ドゥラメンテに大逆転を許しました。3歳世代が充実していると年末にかけて賞金を上積みしやすいため、総合種牡馬ランキングはこのままキズナが逃げ切る可能性が高いのではないか、と思います。

 シックスペンスは母方にダンジグを持つ、というキズナ産駒のニックスから誕生しています。このパターンは東京芝1800mで連対率45.7%と抜群の成績。単勝回収率360%、複勝回収率182%と馬券的にも妙味があります。今年2月の共同通信杯は同パターンのジャスティンミラノが4番人気で勝ちました。

 母の父トワーリングキャンディは、先日、中山のカンナSを2歳レコード(芝1200m1分07秒2)で勝ったエコロジークの父でもあります。スピードがあり芝適性も問題ないので、日本向きの適性を備えています。この先わが国でもこの血を持つ馬は増えてくるでしょう。

 母フィンレイズラッキーチャームはマディソンS(米G1・ダ7ハロン)の勝ち馬。トワーリングキャンディ産駒らしいスピード豊かな馬でした。血統的にシックスペンスは長距離向きではないので、菊花賞に向かわなかったのは正解でしょう。

血統で振り返るサウジアラビアRC


【Pick Up】アルテヴェローチェ:1着

 母クルミネイトは未勝利馬でしたが、クルミナル(桜花賞2着、オークス3着)の全姉で、ピオネロやセレシオンといった重賞入着馬が兄弟にいる良血。繁殖牝馬としては初仔から重賞勝ち馬を出しました。

「モーリス×ディープインパクト」の組み合わせは、ジェラルディーナ(エリザベス女王杯、オールカマー)、ディヴィーナ(府中牝馬S)、ルークズネスト(ファルコンS)、アルナシーム(中京記念)などと同じ。連対率21.4%、1走あたりの賞金額261万円は、モーリス産駒全体の18.2%、198万円をそれぞれ上回ります。母方にブラッシンググルームを持っているのでディヴィーナと配合構成が似ています。

 今回のサウジアラビアRCは2着タイセイカレントもモーリス産駒。モーリスは大幅に賞金を上積みし、2歳種牡馬ランキングの第3位に躍り出ました。首位キズナとの差は約1200万円とわずかなので、2歳リーディングの座も射程圏内にとらえています。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【シンボリクリスエス】

 3歳春に青葉賞を勝って頭角を現し、日本ダービーはタニノギムレットの2着。その年の秋に本格化し、天皇賞(秋)と有馬記念を制覇しました。4歳を迎えるとさらにパワーアップし、天皇賞(秋)と有馬記念をそれぞれレコードで楽勝。後者は2着以下に9馬身差をつけるレース史上最大着差でした。

 父クリスエスはロベルト系のなかでもスタミナと底力に富んだラインで、英ダービー馬クリスキンやBCターフを勝ったプライズドなどを出しており、日本では他にアルゼンチン共和国杯を勝ったマチカネアレグロが出ています。新種牡馬ナダルもクリスエスの直系子孫です。

 種牡馬としては芝・ダート兼用の晩成タイプ。ロベルト系らしく瞬発力よりもスピードの持続力に強みがあります。大柄な馬体と健康な四肢を伝え、JRAで重賞を勝った25頭はすべて牡馬かセン馬、という性別の偏りがありました。2009、2011、2013年に種牡馬ランキング3位となっており、これがパーソナルベストです。エピファネイア、サクセスブロッケン、ストロングリターン、ルヴァンスレーヴ、アルフレードなど、芝・ダートを問わず活躍馬が誕生し、現時点で芝494勝、ダート539勝という成績です。後継種牡馬のなかではエピファネイアが大成功を収めているので、サイアーラインはしばらく安泰でしょう。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「凱旋門賞はなぜサドラーズウェルズ系が強いのですか?」

 直近10年間でサドラーズウェルズ系に属さない勝ち馬はゴールデンホーンのみ。同馬はダンジグ系のケープクロス産駒でした。2015年の優勝馬なので、翌年以降サドラーズウェルズ系が9連勝しています。

 今回の馬場状態は「重」。この時季のパリは雨が多いため、馬場が重くなることが多く、そうした馬場を得意とするサドラーズウェルズ系が強い、ということがまず言えます。

 ヨーロッパ生産界の頂点に君臨するクールモアグループがサドラーズウェルズ系の元締め的存在で、その力は欧州芝2400m路線において絶大です。それが凱旋門賞の結果として表れている、とも言えるでしょう。

 ただ、昨年の凱旋門賞は1〜3着がフランケルの系統で、フランケルはガリレオ産駒でありながらクールモアではなくジャドモントの所有馬です。クールモアの大エースだったガリレオ亡きいま、サドラーズウェルズ系であっても以前に比べてクールモア以外の活躍馬が目立つようになってきており、今年の優勝馬ブルーストッキングも、クールモア繋養のキャメロット産駒ながら生産者と馬主はジャドモントです。

 米三冠馬ジャスティファイはクールモア所有の種牡馬で、今年の欧州中距離路線の主役だったシティオブトロイなどを出しています。ウートンバセット、セントマークスバシリカなど、クールモアの有力種牡馬は徐々にサドラーズウェルズ以外の系統にシフトしているようにも見受けられるので、数年後には凱旋門賞の血統地図も変わっているかもしれません。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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