単勝オッズ3.5倍(1番人気)のシックスペンスが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
11番人気以下の馬は過去10年にわたって3着以内なし
AIマスターM(以下、M) 先週は毎日王冠が行われ、単勝オッズ3.5倍(1番人気)のシックスペンスが優勝を果たしました。
伊吹 着差以上の完勝と言って良いでしょう。五分のスタートを切ってスッと先行し、道中は単独4番手のポジションを追走。積極的にレースを進めたホウオウビスケッツ(2着)、シルトホルン(5着)、エルトンバローズ(3着)をやや外めからマークするような形でゴール前の直線に入っています。残り200m地点のあたりまではなかなか前との差が詰まらず、逆に外からヨーホーレイク(7着)が、内からヤマニンサルバム(4着)が迫ってきたものの、そこからジワジワと伸びて先頭へ。最後はホウオウビスケッツにクビ差をつけて入線しました。
シックスペンスの上がり3ハロンタイムが33.3秒、逃げ粘ったホウオウビスケッツの上がり3ハロンタイムが33.8秒という展開だっただけに、リードが広がらなかったのは仕方のないところ。手綱を取ったC.ルメール騎手の巧みさや、シックスペンス自身の勝負強さが光った一戦です。
M シックスペンスは2走前のスプリングSに続く自身2度目の重賞制覇。前走の日本ダービーこそ9着に敗れてしまったものの、これで通算5戦4勝と、まだ底を見せていません。
伊吹 デビューからの3連勝がいずれも中山のレースだったこともあって、個人的にはコース適性を疑問視していたのですが、まったくの杞憂でしたね。母のフィンレイズラッキーチャームは現役時代にマディソンS(米G1)などを制している活躍馬。血統的にもポテンシャルは高そうですし、まだまだ伸びしろはあると思います。
M 今後の大舞台でも、かなりの注目を集めることになるのではないでしょうか。
伊吹 次走はまだ明言されていないものの、やはりこのくらいの距離が合っているようですから、おそらく芝1600mや芝2000mのビッグレースを狙ってくるはず。古馬相手のレースでしっかり結果を残した以上、さらなる強敵が揃ったとしても軽く扱うわけにはいきません。これまでのレースぶりをじっくり復習して、どれくらいやれそうかを見極めておきたいですね。
M 今週の日曜京都メインレースは、3歳牝馬三冠の最終関門、秋華賞。昨年は単勝オッズ1.1倍(1番人気)のリバティアイランドが優勝を果たしました。なお、その2023年は2着が単勝オッズ13.0倍(3番人気)のマスクトディーヴァ、3着が単勝オッズ12.9倍(2番人気)のハーパーで、3連単の配当は3240円にとどまっています。
伊吹 秋華賞で3連単の配当が10万円を超えたのは、現在のところ2013年(23万3560円)が最後。その後の過去10年に限ると、3連単の配当は平均値が3万6591円、中央値が2万585円です。堅く収まりがちなレースと見るべきでしょう。
M 単勝人気順別成績を見ても、7番人気以下の伏兵はあまり馬券に絡んでいません。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝5番人気以内の馬は2014年以降[10-9-6-25](3着内率50.0%)、単勝6番人気から単勝10番人気の馬は2014年以降[0-1-4-45](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-73](3着内率0.0%)となっていました。「超人気薄の馬が上位に食い込む可能性は低い」という前提で買い目を組み立てるべきだと思います。
M そんな秋華賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ミアネーロです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良い塩梅の馬を挙げてきましたね。単勝二桁人気クラスということはなさそうですが、それなりに妙味あるオッズがつきそう。
M ミアネーロはキャリア5戦。3走前のフラワーCを勝っているうえ、前走の紫苑Sでも2着に健闘しています。京都のレースを使ったことはないものの、右回りのレースには十分な実績がありますし、中心視しようと考えている方も少なくないのではないでしょうか。
伊吹 休養明けを叩いた上積みもありそうですからね。Aiエスケープが狙い目と見ていることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。
M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?
伊吹 まずは直近のパフォーマンスを素直に評価したいところ。2017年以降の3着以内馬21頭中20頭は、前走の着順が4着以内でした。
M なるほど。大敗直後の馬は強調できませんね。
伊吹 昨年は、前走のオークスで7着に敗れていたコナコーストが単勝オッズ18.6倍(4番人気)の支持を集めたものの、再び8着に敗退。たとえビッグレースからの直行組であっても、前走で大きく崩れた馬は割り引きが必要です。
M 先程も触れた通り、ミアネーロは前走の紫苑Sで2着を確保している馬。この点に関しては高く評価して良いのではないかと思います。
伊吹 あとは枠順も明暗を分けそうなファクターのひとつ。同じく2017年以降の3着以内馬21頭中16頭は、馬番が7番から14番でした。
M 外寄りの枠に入ってしまった馬だけでなく、内寄りの枠を引いた馬もあまり上位に食い込めていませんね。
伊吹 ただし、馬番が1番から6番ならびに15番から18番だった馬のうち、“同年の、JRAの、重賞のレース”において“着順が1着、かつ4コーナー通過順が4番手以下”となった経験がある馬は、2017年以降[2-0-3-8](3着内率38.5%)とまずまず堅実。「実績ある差し馬であれば枠順は不問」と解釈して良いのではないでしょうか。
M ミアネーロは今年3月のフラワーCを勝ち切っているうえ、当時の4コーナー通過順が6番手。たとえ内外極端な枠に入ったとしても、評価を下げる必要はなさそうです。
伊吹 さらに、同じく2017年以降は、オークスにおいて5着以内となった経験のある馬が[7-4-3-10](3着内率58.3%)と素晴らしい成績を収めています。一方、この経験がなかったにもかかわらず3着以内となった馬の大半は、同年の8月以降に中距離、かつ上級条件のレースを勝ち切っていました。
M オークスの上位馬でない限り、ここ2か月あまりのレースを勝ち切れていない馬、1勝クラス以下や1マイル以下のレースしか勝っていない馬は、過信禁物と見ておいた方が良いかもしれませんね。
伊吹 おっしゃる通り。今年はこの条件に引っ掛かっている馬がかなり多いので注意しましょう。
M ミアネーロは2走前のオークスで14着に敗れているうえ、前走の紫苑Sも2着どまり。残念ながら、この条件に引っ掛かっている側の一頭です。
伊吹 もっとも、その紫苑Sは勝ったクリスマスパレードとクビ差でしたからね。個人的な感想としては勝ちに等しい内容だったと考えていますし、不安要素は比較的少ないと言えそう。そのうえAiエスケープが有力と見ているわけですから、ある程度は素直に信頼して良いと思います。実際のオッズもチェックしたうえで、買い目上の位置付けを判断しましょう。