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【天皇賞(秋) AI予想】オッズは魅力十分!? AIが狙う伏兵は好走馬の傾向を覆すことができるか

  • 2024年10月21日(月) 18時00分

単勝オッズ3.7倍(2番人気)のアーバンシックが勝利(c)netkeiba


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

8番人気以下の馬がほとんど馬券に絡んでいないレース


AIマスターM(以下、M) 先週は菊花賞が行われ、単勝オッズ3.7倍(2番人気)のアーバンシックが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありませんね。スタートがそれほど良くなかったこともあり、1周目の4コーナーを通過した時点では後方につけていましたが、スタンド前の直線で少しずつポジションを押し上げ、2周目の2コーナーを外めの8番手で通過。先頭が目まぐるしく入れ替わる展開の中、先行勢を射程に捕らえた絶好の位置で2周目の3コーナーに入っています。その後、先団の各馬を退けたシュバルツクーゲル(7着)、後方からひと足先に仕掛けたアドマイヤテラ(3着)が2周目の4コーナーで抜け出し、これを追う形でゴール前の直線へ。残り200m地点のあたりで併走するアドマイヤテラをかわすと、そのまま後続を突き放し、決勝線の手前で伸びてきたヘデントール(2着)に対してもセーフティリードを保ったまま入線しました。一から十まで完璧なレース運びだったと思いますし、この競馬を完遂できたのはアーバンシックの高い能力があったからこそ。陣営にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。

M 鞍上のC.ルメール騎手は、先週の秋華賞に続く2週連続のJRA・GI制覇。好調をキープしているようですね。

伊吹 今年は10月20日終了時点で既に148勝をマークし、JRAリーディングジョッキーランキングでも独走態勢に入っています。一時代を築くようなレベルのジョッキーであっても、だいたい40代の半ばくらいから少しずつ成績が落ちてくるもの。C.ルメール騎手は1979年5月20日生まれの45歳で、本来なら失速を警戒しておくべき年齢なのですが、まったくその気配がありません。余談ながら、私の生年月日はC.ルメール騎手の3日前。現在の私と同じく、C.ルメール騎手も加齢による心身への影響を日々実感していることでしょう。そんな状況でこれだけの活躍を見せているのは、同世代の人間からすると本当に驚異的です。

M アーバンシックはGI初制覇。3歳牡馬クラシックの最終戦で悲願のビッグタイトルを獲得しました。

伊吹 今春までは重賞を勝てなかったものの、当初から潜在能力を高く評価されており、日本ダービー(11着)でも単勝オッズ8.3倍(4番人気)の支持を集めた馬。順調に成長を遂げているようですし、古馬相手のGIでも十分にチャンスはあると思います。今のところこれといった苦手条件が見当たらないので、出走するレースの傾向やオッズも加味しつつ、打つべきシルシを的確に見極めていきたいですね。

M 今週の日曜東京メインレースは、さまざまな路線のトップホースが集う下半期のチャンピオン決定戦、天皇賞(秋)。昨年は単勝オッズ1.3倍(1番人気)のイクイノックスが優勝を果たしました。なお、その2023年は2着が単勝オッズ35.1倍(6番人気)のジャスティンパレス、3着が単勝オッズ11.4倍(3番人気)のプログノーシスで、3連単6960円の低額配当決着。堅く収まりがちなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。


伊吹 実際、3連単の配当が10万円を超えたのは、現在のところ2015年(10万9310円)が最後。2016年以降の過去8年に限ると、3連単の配当は平均値が1万9664円、中央値が1万6115円となっています。


M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、人気薄の馬はあまり上位に食い込めていませんね。

伊吹 単勝1番人気馬の3着内率が9割に達しているうえ、単勝2番人気から単勝7番人気の馬も2014年以降[3-8-8-41](3着内率31.7%)とまずまず堅実。一方、単勝8番人気から単勝13番人気の馬は2014年以降[0-1-1-54](3着内率3.6%)、単勝14番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-25](3着内率0%)でした。伏兵が馬券に絡む可能性はそれほど高くないと見るべきでしょう。

M そんな天皇賞(秋)でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ステラヴェローチェです。

伊吹 面白いところを狙ってきましたね。実績上位ではあるものの、今回は大きく人気を落とすはず。

M ステラヴェローチェは2歳時の朝日杯FSで2着に、3歳時の皐月賞と日本ダービーで3着に食い込むなど、デビュー当初から大舞台で活躍してきた馬。6歳となった今年も、4走前の大阪杯で4着に、2走前の札幌記念で3着に健闘しています。もっとも、単勝オッズ5.3倍(2番人気)の支持を集めた前走のオールカマーは6着どまり。有力と見ている方はそれほど多くないかもしれません。

伊吹 勢いに乗っているとは言えませんが、ポテンシャルの高さは証明済みですし、確かにタイミングとしては絶好の狙い時なのかも。復活を警戒しておくに越したことはないでしょう。Aiエスケープが注目しているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬が激走する確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 近年の天皇賞(秋)は、東京や京都のビッグレースに実績のある馬が優勢。2018年以降の過去6年に限ると、前年以降に東京か京都のGIで連対を果たしている馬は、3着内率が6割を超えていました。


M はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 ちなみに、“前年以降の、東京・京都の、GIのレース”において2着以内となった経験がない、かつ同年の札幌記念において2着以内となった経験がない馬は2018年以降[0-1-1-54](3着内率3.6%)。前哨戦の札幌記念で好走を果たした馬は侮れませんが、まだビッグレースで優勝を争ったことがない馬、そして中山・阪神向きの実績馬は、基本的に疑ってかかるべきでしょう。

M ステラヴェローチェが出走した2023年以降、かつ東京・京都のGIは3走前の2024年安田記念だけで、この時は9着に敗退。残念ながら、この条件に引っ掛かっている側の一頭です。

伊吹 ただ、3歳時の日本ダービーや2走前の札幌記念で3着に好走しているわけですから、この傾向だけをもって軽視するわけにはいきません。個人的に気掛かりなのは6歳馬である点。同じく2018年以降の3着以内馬18頭は、いずれも馬齢が5歳以下でした。


M 高齢馬は過信禁物、と。

伊吹 長期休養を挟んだこともあり、ステラヴェローチェはまだキャリア18戦。一般的な6歳馬と同じ扱いをするべきではないかもしれませんが、やはり割り引きが必要だと思います。

M 前走のオールカマーで6着に敗れている点はどうでしょう?

伊吹 こちらも不安要素と言わざるを得ませんね。同じく2018年以降の3着以内馬18頭中16頭は、前走の着順が3着以内でした。


M なるほど。大敗直後の馬は評価を下げた方が良さそうです。

伊吹 前走のオールカマーも好走馬の傾向からやや外れていたので、次走以降のどこか、この馬の持ち味を活かせそうなレースで狙おうと考えていたのですが……今回ではないような気もします。

M とはいえ、Aiエスケープは有力と見ているわけですし、実績を考えると妙味あるオッズがつきそうな雰囲気。無理に嫌わなくても良いのでは?

伊吹 おっしゃる通り。正直なところ、Aiエスケープの見解を聞く前から「レースの傾向からは強調できないけれど、できればシルシを回しておきたいな……」と考えていました。私の分析は見なかったことにして、シンプルにAiエスケープを信じるのもひとつの手。私自身、実際のオッズなども踏まえたうえで、最後にもう一度この馬の扱い方を検討するつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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