「Horse Space紡」が2度目のクラウドファンディングに挑戦中(提供:Horse Space 紡)
「見通しが甘かった」次々に浮かぶ問題点
現在クラウドファンディングに挑戦中なのが、埼玉県越生町にある「Horse Space 紡」だ。今回が2回目のクラファンになる。紡の代表は仲嶺美波さん。お手伝いのボランティアはいるが、基本的に1人で切り盛りしている。
前回のクラファンは、2024年2月7日〜3月29日まで実施され、馬たちがセカンドキャリア、サードキャリアを穏やかに過ごして天寿を全うできるよう、気候的に過ごしやすく、何かしら問題を抱えた馬のリハビリに適した地に移転するための資金を募った。
それまで活動してきた埼玉県羽生市から、同じ埼玉県内の越生町にある乗馬クラブ跡が移転先だった。
以前の使用者の残置物の処理や、修繕しなければならない箇所も多く、自己資金だけではまかないきれないことから、クラファンに挑戦。蓋をあけてみれば目標額3,000,000円を大幅に超え、8,158,000円という支援が集まった。
Horse Space 紡のクラファンが成功したのは、昨今引退馬たちに注目が集まっているのもあるが、仲嶺さんの人柄によるところが大きいと感じる。紡のXやクラファンサイトの活動報告には、馬の状態やトラブル、その時々の状況などが細かく正直に書かれている。その部分に誠実さを感じて筆者もささやかながらクラファンに参加したのだが、あれだけの支援が集まったのは自分と同じような感想を多くの人々が抱いたのではないかと想像する。
クラファン成功のカギは“仲嶺さんの人柄”も大きいと筆者(提供:Horse Space 紡)
こうしてクラファンで集まった資金をもとに移転先の様々な整備を行い、馬たちとともに新天地での生活をスタートさせた。だが次々に問題点が浮かび上がってきた。
「自分の見通しが甘かった」と仲嶺さんは話すが、居抜き物件とはいえその施設を実際に使ってみて初めてわかることは多い。
私事で恐縮だが、自らも北海道で引退馬の牧場の運営に関わってみて初めて、厩舎など施設に問題が山積であることや、紡と同様に前使用者の残置物やゴミが多く、それを処理しようとすると想像以上に資金が必要なことがわかった。馬のいる施設は馬の飼養にも当然お金がかかるが、施設の維持管理にもかなりの費用がかかるものなのだ。
浮かび上がった問題点の1つの雨漏りは複数箇所に及び、放っておくとカビが生えたり腐食の原因にもなるため、自己資金で優先的に修繕したのだが、他にも出費が相次いだ。そのため目標に掲げていた「牧柵修繕のやり直し」までは終わらせることができなかった。
今回のクラファンで集まった資金は、放牧地の危険な牧柵の修繕に使用する予定だ。
当初、放牧地の牧柵は木でできていた。ところがそこは土砂崩れを起こした場所であることが判明。さらに木の牧柵の大部分が折れたり腐ったりしていたので全部取り除いてもらい、業者に依頼して単管パイプで新たな柵を作ってもらった。業者もいろいろ工夫をして工事を行っていたようだが、放牧地入り口の支柱が仲嶺さんでも持ち上げられるほど強度が足りなかったり、単管パイプを機械で切断した部分がギザギザになっている箇所が見つかったりと、馬を放すには不安な点が多く残る結果となった。
切断部分はギザギザに(提供:Horse Space 紡)
ギザギザになった箇所にはキャップを被せてはあるのだが、馬がいたずらするとそれは簡単に外れてしまう。「(キャップが外れると)刃物が丸出しになるのと同じ状況になる」と仲嶺さんは心配した。
紡を立ち上げる何年も前のこと。仲嶺さんの愛馬ミントの抜けた尻尾の毛が、放牧地の単管パイプの牧柵に大量に絡まり、後ろ脚は傷だらけで肛門の横も切っていたことがあった。
ギザギザの部分はキャップで保護しているが…(提供:Horse Space 紡)
「お尻がかゆくて鉄製の角材にグイグイすりつけてかいているうちに尻尾が絡まり、角材の角で肛門の横を切ったのではないか」というのが仲嶺さんの見立てだ。
もしまたミントが、あるいは他の馬が同じような行動をすれば、もっと大きな事故や怪我に繋がる。
また今回修繕する牧柵のある放牧地は厩舎から離れた坂の上に位置しており、厩舎作業中は、放牧地の様子や気配が全くわからない。それだけにこの放牧地は事故の起きない安全な牧柵にする必要があった。
安全な放牧地で馬たちがのびのびと過ごせるように...。仲嶺さんは悩んだ末に2回目のクラファン挑戦を決めたのだった。
(つづく)
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