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【AR共和国杯】ハヤヤッコがレースレコードで勝利 白毛が異端のサラブレッドではないことを証明

  • 2024年11月04日(月) 18時00分

8歳馬のレース制覇は39年ぶり


重賞レース回顧

AR共和国杯を制したハヤヤッコ(撮影:下野雄規)


 2500mのレース全体の流れの前後半は「1分11秒5-(5秒8)-1分11秒7」=2分29秒0。長距離戦ではめったに出現しない、少しもバランスを失わない底力勝負のお手本のようなレースだった。東京2500mのコースレコード2分28秒2と0秒8差だけ。アルゼンチン共和国杯のレースレコードを0秒9も更新するレースレコードだった。

 重賞勝ち馬の少ない低レベルの組み合わせで、平凡な結果になるのではないかと心配されていたが、高速馬場も味方したとはいえ、期待を大きく上回る好時計のきびしい内容になり、そこでベテランホースのハヤヤッコ(父キングカメハメハ)が台頭した。

 ハヤヤッコは8歳馬ながら、このレース初挑戦での勝利。国枝栄調教師もこのレースは初勝利。吉田豊騎手もAR共和国杯制覇は初めて。種牡馬キングカメハメハ産駒も、この重賞制覇は初めてのことだった。さらに8歳馬のこのレース制覇はきわめて珍しく、1985年のイナノラバージョン以来39年ぶりの快挙。配当面では大波乱でもないが、さまざまな点で印象的なレースであり、フロックはめったに許さない厳しい一面がある長距離戦そのものだったともいえる。

 白毛の重賞3勝馬ハヤヤッコ(3勝は10、7、10番人気)は、祖母シラユキヒメ(父サンデーサイレンス)。母の父はクロフネ。白毛の素晴らしさをアピールしたソダシ(父クロフネ)とはイトコの間柄。白毛が異端のサラブレッドではないことを証明すると同時に、芦毛の種牡馬クロフネは、系統は異なっても同じ芦毛のメジロマックイーンと同じように、また、後継種牡馬には恵まれなくても、牝系に入って果たす役割はクロノジェネシスなどが示したように、絶大な影響力を秘めることを改めて示した。種牡馬クロフネの血を持つ白毛馬のJRA重賞勝利はソダシと合わせこれで9勝目である。

 あと一歩の2着だったクロミナンス(父ロードカナロア)は、ムリのない位置から抜け出して勝機かと思えたが、これでオープンに昇格してすべて惜敗の「3、2、3、2」着。万能型に近い総合力を持つのは事実だが、スタミナ能力と底力を秘めるタイプともいえず、本当は2000m前後がベストの中距離タイプではないかと思わせた。

 3着タイセイフェリーク(父ミッキーロケット)は、52キロの軽ハンデをフルに生かしたのは確かだが、まだ3勝クラスの格下の牝馬。あと一歩で2着に浮上する快走だった。展開の紛れなどではなく、最後まで伸びたから立派。これで2400m以上は「3、3」着。ともに東京コースだけに価値がある。レーヴミストラル(2015年のAR共和国杯3着)などが代表するレーヴドスカーの一族。2000-2500mがベストだろう。小柄でもパンチ力を秘めている。

 2番人気のサヴォーナ(父キズナ)は、先行馬総崩れのなか、「もう少し我慢すれば良かったかも(池添騎手)」と振り返ったように、思われた以上に流れがきびしかった。

 3番人気のセレシオン(父ハーツクライ)の敗因もサヴォーナの敗因とほぼ同じ。さらにこちらは当日の馬体重462キロ。5歳牡馬なのにデビュー以来最少の馬体重。毛ヅヤは良く、気配も良かったが、いきなり10キロ減はさすがに痛かった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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