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【エリザベス女王杯 AI予想】ジンクスとの戦い!? AIの注目馬が近年の傾向を覆すか

  • 2024年11月04日(月) 18時00分

単勝オッズ35.3倍(10番人気)のハヤヤッコが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

堅く収まった年も大波乱決着の年もそれなりにある


AIマスターM(以下、M) 先週はアルゼンチン共和国杯が行われ、単勝オッズ35.3倍(10番人気)のハヤヤッコが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありませんね。スタート直後から促していったものの先行争いには加わらず、結局1コーナーを最後方で通過。その後も控えたまま馬群のやや外めを進み、4コーナーを周り切ったところで躊躇いなく大外に持ち出しています。残り400m地点のあたりで先行した各馬との差が詰まり始め、残り200m地点のあたりではひと足先に抜け出したクロミナンス(2着)らが射程圏内に。最後はタイセイフェリーク(3着)も交えた3頭による追い比べとなりましたが、決勝線の手前で力強く捻じ伏せました。出走メンバー中最高齢タイの8歳だったうえ、負担重量の58.5kgは出走メンバー中単独トップ。有力と見ていた方はそれほど多くありませんでしたし、陣営や鞍上の吉田豊騎手にとっても痛快な勝利だったのではないでしょうか。

M ハヤヤッコは白毛ということもあってデビュー前から注目を集めていた馬。2019年のレパードS、2022年の函館記念に続く自身3度目の重賞制覇です。

伊吹 2019年のレパードSから2022年の函館記念まで、2022年の函館記念から2024年のアルゼンチン共和国杯までと、重賞勝利の間にそれぞれ2年以上のブランクがある点も見逃せないポイント。過去に「2年以上ぶりのJRA重賞勝利」を複数回達成した馬は、X(旧Twitter)でフォロワーの方に教えてもらったものや私が改めて調査した範囲内だと、2007年ダイヤモンドS・2010年阪神大賞典・2012年ステイヤーズSを制したトウカイトリック、2010年シンザン記念・2012年東京新聞杯・2012年ダービー卿CT・2014年函館スプリントSを制したガルボの2頭だけでした。若いうちからオープン入りを果たし、なおかつ長期に渡って現役を続けなければ達成できない記録ですから、歴史的な偉業と言って良いと思います。

M 次走については、ビッグレースへの参戦を検討しているとのこと。出走が叶えばそれなりの注目を集めることになるでしょう。

伊吹 これだけの個性を持った馬ですから、最近競馬を観始めたビギナーや、有馬記念くらいしか観ないようなライトファンにも、ハヤヤッコの魅力が伝わると良いですね。もっとも、今回は本当に強い競馬だったと思いますし、もともと芝とダートの両方で重賞を勝てるくらい適性の幅が広い馬。人気者として盛り上げるだけにとどまらず、強敵相手にあっと言わせるようなシーンがあるかもしれません。選択したレースの傾向やオッズも踏まえたうえで、慎重に取捨を判断したいと思います。

M 今週の日曜京都メインレースは、下半期の牝馬チャンピオン決定戦と位置付けられている一戦、エリザベス女王杯。昨年は単勝オッズ2.4倍(1番人気)のブレイディヴェーグが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は単勝オッズ13.3倍(5番人気)のルージュエヴァイユが2着に、単勝オッズ6.7倍(3番人気)のハーパーが3着に食い込んで、3連単9780円の低額配当決着。今年も堅く収まる可能性がそれなりに高いと見ておくべきでしょうか?


伊吹 3連単で339万3960円の高額配当が飛び出した2021年のように、大波乱決着となった年もあるのですが、過去10回のうち半数の5回は3連単の配当が3万円未満。荒れやすいとまでは言えない印象です。


M ただ、過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、上位人気馬の好走率が特に高いわけではありません。

伊吹 単勝13番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-52](3着内率0.0%)だったものの、単勝7番人気から単勝12番人気の馬は2014年以降[1-6-1-52](3着内率13.3%)で、単勝回収率・複勝回収率とも108%でした。魅力ある伏兵がいるのであれば、手広く構えて高額配当を狙うのもひとつの手でしょう。

M そんなエリザベス女王杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ホールネスです。

伊吹 興味深いところを挙げてきましたね。単勝1番人気ということはなさそうですが、かなりの支持が集まるはず。

M ホールネスはキャリア6戦の4歳馬。前哨戦の新潟牝馬Sを制しているうえ、2走前のマーメイドSでも3着に食い込んでいます。まだ4着以下に敗れたことがない馬ですし、伸びしろに期待している方も多いのではないでしょうか。

伊吹 どちらかと言えば穴党であるAiエスケープがこの馬を挙げてきたということは、魅力ある伏兵が見当たらないということなのかもしれませんね。この見解を踏まえたうえで、私はレースの傾向から好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 まずは直近のパフォーマンスを素直に評価したいところ。2018年以降の3着以内馬18頭中15頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.5秒以内でした。


M なるほど。大敗直後の馬は強調できませんね。

伊吹 ちなみに、前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.6秒以上、かつ父にステイゴールド系以外の種牡馬を持つ馬は2018年以降[0-0-1-32](3着内率3.0%)。該当馬が上位に食い込む可能性は低いと見て良いでしょう。

M 先程も触れた通り、ホールネスは前走の新潟牝馬Sを快勝している馬。この点は強調材料のひとつと言えます。

伊吹 あとはどんなレースを経由してきたかも重視した方が良さそう。同じく2018年以降の3着以内馬18頭中15頭は、前走の距離が2200m未満、かつ前走の条件がGI・GIIでした。


M 今回よりも距離が短い、かつ格の高いレースを前哨戦に選んだ馬が優勢ですね。

伊吹 阪神芝2200m内で施行された2020年から2022年も同様の傾向でしたし、この流れはもうしばらく続くのではないでしょうか。

M ホールネスの前走、新潟牝馬Sは新潟芝2200m内で施行されたオープン特別。残念ながら、この条件はクリアできていません。

伊吹 さらに、同じく2018年以降の3着以内馬18頭中17頭は、“同年の、JRAの、GI・GIIのレース”において“着順が12着以内、かつ4コーナー通過順が3番手以下”となった経験のある馬でした。


M 「12着以内となった経験の有無」というのは、なかなか珍しい条件設定ですね。

伊吹 同年のGI・GIIで好走を果たしている必要はないものの、GI・GIIを積極的に使ってこなかった馬は不振。各馬が年明け以降にどんなレース選択をしてきたのか、改めて確認しておきましょう。

M ホールネスはGI・GIIのレースを一度も使ったことがない馬。こちらの条件にも引っ掛かってしまっています。

伊吹 正直なところ、私は無印にするつもりでした。前走が新潟牝馬Sだった馬は、新潟牝馬Sが施行されるようになった2020年以降のトータルでも[0-0-0-9](3着内率0.0%)と、まだ好走例がありません。もっとも、Aiエスケープに認められるくらい能力の高い馬ですから、こうした傾向を覆す可能性はそれなりにありそう。私も、押さえるかどうかいま一度じっくり考えるつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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