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【R.ヴェリアン調教師】“欧州最強マイラー”チャリンはなぜマイルCSに?「特別な馬でないと日本では戦えない」

  • 2024年11月11日(月) 18時02分
今週のFace

▲右:マイルCSに出走予定のチャリンを管理するR.ヴェリアン調教師、左:妻の花子さん(提供:R.ヴェリアン厩舎)


マイルチャンピオンシップに参戦するG1・3勝馬チャリン。管理するのはイギリスで活躍するR.ヴェリアン調教師です。今回は、“欧州最強マイラー”と称される同馬の魅力や参戦の経緯について伺いました。

実は日本との関わりが深く、「日本の競馬が大好きです」と語るヴェリアン師。日本馬への印象や思い出に残っているGIレースもお話しいただきました。強豪が集うマイルCSへに向けて「今回は自信があります」と話す理由とは…?

(取材:netkeiba編集部)

今のチャリンは“完成した作品”


──今回マイルCSに出走を決めたきっかけを教えてください。

ヴェリアン 前々走のムーランドロンシャン賞の後に海外遠征を決めました。オーナーと話して今年で引退して、種牡馬になる方向になった事が理由です。来年も現役続行する方向であれば、早めのシーズンオフに入ることも考えました。

 クイーンエリザベスII世Sの後に使うレースを考えた時に、ブリーダーズCや香港も検討しましたが、マイルCSが29日後と間隔的に最適でした。また、オーナーも日本で走らせたいという思いがありましたし、妻が日本人である私にとって日本でよい結果を出したいという強い気持ちがありました。

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▲1番人気に応えて完勝したクイーンエリザベスII世S(提供:R.ヴェリアン厩舎)


──クイーンエリザベスII世Sを勝って日本へと長距離輸送、いまの状態はいかがですか?

ヴェリアン ちょうど5分前に日本にいる担当者と電話で話しました(11/8取材時)。輸送も問題なく、とても良い状態と聞いています。

──日本では欧州最強のマイラーと報道されています。この馬の強さはどんなところですか?


ヴェリアン タイムフォームレーティング(※英老舗競馬メディアのタイムフォーム社が発表しているレーティング)でも現役最高マイラーです。もちろん能力の高さは間違いないですが、精神力の高さが強みだと思います。常にリラックスしていて、競走馬として素晴らしい気性を持っています。

 また、身体の丈夫さも強みです。2歳時は4戦、3歳時は7戦、今年はマイルCSが8戦目のレースになります。シーズンを通して、一貫性の高いパフォーマンスを発揮できる身体と精神力の強さが力を出し切る上でとても重要な才能です。

──今年だけでG1を3勝しています。4歳で本格化した理由を教えてください。

ヴェリアン シーズンオフの冬を越して成長し、力強い走りをするようになりました。古馬になっても現役を続けることが多い日本馬では年齢とともに成長する馬をよく見かけます。ヨーロッパでは3歳で引退し、種牡馬になることも多いので、馬が成長するために十分な時間を与えられないことがあります。

 チャリンは、十分に時間を与えて成長した馬が古馬になって素晴らしいパフォーマンスをみせてくれるというとても良い例です。3歳時は人間でいう10代の様な感じでしたが、今のチャリンは成長しきって、“完成した作品”です。

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▲「今のチャリンは成長しきって、“完成した作品”」(提供:R.ヴェリアン厩舎)


──日本の速い馬場はチャリンにとっていかがですか?

ヴェリアン 適応力がとても高く、どんな馬場でも走ってくれる馬なので問題ないと思います。

日本で走る彼の姿を楽しんでいただけたら!


──ヴェリアン師は開業初年度からG1を勝ち、英リーディングでもトップ10に入り続ける活躍をされていますが、厩舎運営の中で大切にしていることはありますか?

ヴェリアン この業界は馬の業界ですが、そこには必ず人がいます。ホースマンスキルを持つことは管理する上で重要ですが、よいピープルスキルを持つことも同様に大切だと考えています。

 約160頭ほどを80人くらいで管理しており、大きなチームです。チームの1人1人が重要です。厩舎スタッフを大切にし、良い人間関係を築き上げて、共通のゴールをチームとして目指すことが必要です。厩舎スタッフだけでなく、もちろんクライアントであるオーナー様とも良い関係を築き、信頼を得ることが厩舎運営を成功させるためには大切です。

──日本への遠征自体は以前から考えていましたか?

ヴェリアン 私は個人的なつながりもありますが、世界中で日本競馬への見方が変わってきています。良い馬がいたら多くの関係者が日本遠征を検討していると思います。

──22年の有馬記念(勝ち馬イクイノックス)を見に来られたそうですね。他に日本のレースを現地で見たことはありますか?

ヴェリアン 日本の競馬が大好きです。幸運なことに何度も現地で観戦する機会をいただきました。有馬記念やジャパンCにも行ったことがあります。有馬記念と言えば、イクイノックスの時も行きましたが、思い出に残っているのは10年のヴィクトワールピサの時です。妻の花子と中山で観戦して、その夜に結婚パーティーを行いました。直前に競馬に行くなんて珍しいですよね。エリザベス女王杯にも行ったことがあります。

──日本の競馬や、日本馬についての印象はいかがですか?

ヴェリアン 日本の競馬場はいつも混んでいて、人気が凄いですね。GIの時なんてファンが作り出す雰囲気が素晴らしく、鳥肌が立ちました。日本の競馬ファンの熱狂は称賛に値します。

 日本馬はとても強く、世界的に影響を持っています。ドバイやサウジ、オーストラリアやブリーダーズカップ、どこに行っても強力な日本馬を相手に戦うことが多いです。

──今回、チャリンを日本で走らせることについて、自信のほどは?

ヴェリアン 実はこれが2頭目の遠征馬です。調教師として1年目にスリプトラという馬をジャパンCに出走させました。日本とのつながりがあり、走らせたく遠征しましたが、彼はG1未勝利馬だったので力が足りず最下位でした。それでもとても良い経験でした。その時に「チャンピオンホースを連れてこられるまでは日本遠征はしない」と決めました。特別な馬でないと日本では戦えないです。今回は自信があります。

──最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします!

ヴェリアン チャリンは沢山の人に愛されている馬です。調教でもレースでも楽しく笑顔で走っているように思えます。大きく筋肉質な芦毛馬で毎回一生懸命走るのでファンはチャリンのことがとても好きです。今回がチャリンを日本で見られる最初で最後のチャンスですので彼が走る姿を楽しんでいただけたらと思います。チャリンも皆さんに笑顔で返してくれるはずです!

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▲沢山のファンに愛されるチャリンの走りにぜひご注目!(提供:R.ヴェリアン厩舎)


(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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