▲大混戦のマイルCS。「穴馬として面白い存在」と名前が挙がった馬とは…?
競馬アナライザーのMahmoud氏が、動画解析を駆使して科学的に競馬を分析する連載コラム。
前半は、エリザベス女王杯の回顧。直線で起きたレガレイラの接触事象を動画解析の視点から深掘りしていきます。
後半では、大混戦と予想されるマイルCSを徹底分析。上位6頭の日本馬の走破タイム換算値を基に、それぞれの特性を診断していきます。そして最後には、欧州からの刺客チャリンの走行データを公開。断然の存在と見られる本命馬とは──。
(構成:Mahmoud、netkeiba編集部)
エリザベス女王杯を動画解析の視点で回顧──ルメール騎手が「ぶつけられた」とコメントしたワケ
──まずは先週行われたエリザベス女王杯の振り返りから行いましょう。
Mahmoud 前回掲載した走破タイム換算表に今回の結果を反映させました。
▲エリザベス女王杯の結果を加えた走破タイム換算値。昨年同レース当日の馬場差で、出走馬の過去走を京都芝2200m戦に換算した値(作成:Mahmoud)
──スタニングローズは、5歳秋にしてキャリアハイを0.35秒更新しての勝利。要因は何なのでしょうか?
Mahmoud 近走では合わないマイルを使ってパフォーマンスを落としていたというのもありますが、ラスト600m辺りから仕掛けていき、ストロングポイントを発揮させたC.デムーロ騎手の好騎乗が大きかったです。
ハナに立ったコンクシェルは、前走府中牝馬S(芝1800m)での前半1200m換算値よりも0.85秒速いペースを刻み、2番手ハーパー共々オーバーペースの逃げ。最後方を進んだルージュリナージュでさえ、前半1200m換算値は芝1800m以上の近7走の中では最速でした。
前半のペースが速かった影響で、各馬が道中で動いていける余裕はなく、L5-3換算値(ラスト5ハロン-3ハロンのタイムレベル)は遅くなりました。各馬のラストスパートの始動は残り600m辺りからとなり、3番手以降の先行勢は後続馬からのプレッシャーを受けることなくマイペースでラストスパートを行えたということです。
──ペースは速かったものの、仕掛けが遅かった分、前にいた馬にメリットがあったレースということですね。2着ラヴェルの激走にも驚きました。
Mahmoud ラヴェルは0.31秒走破タイム換算値を更新し、キャリアハイの走り。こちらもC.デムーロ騎手同様、初騎乗となった川田将雅騎手がストロングポイントを発揮させた結果です。
3着のホールネスは0.22秒キャリアハイを更新。ラスト5ハロン-3ハロン区間をもう少し速く走る展開の方が向いたはずですが、依然として成長真っ只中で、さらなる上昇度に期待できそうです。
──レガレイラとシンティレーションが直線で接触した場面があり、馬券的には痛恨でした…。
Mahmoud この事象についても、動画解析の視点から触れておきましょう。レガレイラとシンティレーションの後半500mにおける50m毎に細分化した平均完歩ピッチのグラフです。
▲レガレイラとシンティレーションの平均完歩ピッチグラフを比較(1完歩に要する時間を平均した値。グラフの値が下になるほど、ピッチ=脚の回転が速いことを表す)(作成:Mahmoud)
4コーナーの内ラチの末端は残り約440m地点。その時点での2頭の位置取りはシンティレーションが前で、レガレイラが半馬身後ろでしたが、波形通りシンティレーションが先にスパートをしています。そして残り約350m地点でレガレイラは前を行くハーパーの内に進路を変えましたが、その時点でいち早くスパートしていたシンティレーションと完全に並んでいる状態でした。
レガレイラはまだ全開で踏み込んでいない状態でも、シンティレーションよりスピードが乗っていました。その後、レガレイラがシンティレーションを交わしてから2頭は接触。過怠金を処せられたC.ルメール騎手が「ぶつけられた」とコメントしたのは、既にシンティレーションを交わした感触があったから。
もしハーパーが内にヨレることがなく、コンクシェルが外にヨレることがなければ、レガレイラとシンティレーションは