▲ドウデュース、チェルヴィニア、ゴリアットなど豪華メンバーの優劣を分析
競馬アナライザーのMahmoud氏が、動画解析を駆使して科学的に競馬を分析する連載コラム。
冒頭ではマイルCSを簡単に振り返り、ジャパンCの展望へ。現在の東京芝2400mコースレイアウトで行われた過去21回の個別ラップデータを分析すると、ジャパンCならではの傾向が浮上。
ドウデュースを危険視する理由、チェルヴィニアとアーモンドアイの比較データ、動画解析から見えた海外馬3頭の特性、本命に推す意外な穴馬など、超濃密なジャパンC分析をお楽しみください。
(構成:Mahmoud、netkeiba編集部)
「厳しい流れへの経験値があった馬たちで決着」マイルCS回顧
──先週のマイルCSはソウルラッシュが悲願のGI制覇を果たしました。レースを振り返っていかがですか?
Mahmoud まずは前回掲載した走破タイム換算表に、今回の結果を反映させました。
▲マイルCSの結果を加えた走破タイム換算値。前週エリザベス女王杯当日の馬場差で、出走馬の過去走を京都芝1600m戦に換算した値(作成:Mahmoud)
バルサムノートが刻んだペースは、ここ10年で2016年ミッキーアイルに次ぐ速さ。1着ソウルラッシュ基準でいえば、ブレイディヴェーグやセリフォスの位置取りが実質的なイーブンペースでした。
──10番手付近を進んだ馬たちがイーブンペースだったとすると、それより前で競馬をした多くの馬は追走の負荷が大きかったということですね。
Mahmoud その通りです。後半の方が速いペースバランスとなったのは、ソウルラッシュ、チャリン、タイムトゥヘヴンの3頭のみで、多くの馬にとっては厳しい流れとなりました。スプリント路線を歩んできた3着ウインマーベル、1800m戦ながらも速いペースの経験値があった2着エルトンバローズには流れが向いたと言えます。
もっとも、ソウルラッシュにとっては最適なペースバランスであり、結果として0.3秒キャリアハイを更新する快走でした。
5着チャリンの走行データを分析「敗因は馬場ではない」
──日本馬最上位に評価した◯ウインマーベルが10番人気3着と激走しましたが、◎に推したチャリンが3番人気5着に敗れましたね…。
Mahmoud チャリンが序盤に行けなかったのは想定内でしたが、その後のレース運びが持ち味を生かし切れませんでした。過去3戦と今回のマイルCSを加えた平均完歩ピッチの推移は以下の通りです。
▲チャリンの平均完歩ピッチグラフを過去走と比較(1完歩に要する時間を平均した値。グラフの値が下になるほど、ピッチ=脚の回転が速いことを表す)(作成:Mahmoud)
他馬に後れを取ったスタートダッシュでは、過去走以上にピッチを速めさせていました。L(ラスト)1200m=前半400mあたりで鞍上のR.ムーア騎手は前方での位置取りを諦め、緩めた走りに移行しました。約700mある3コーナー入口までの直線区間を有効に使う意識が希薄だったようです。その様子はソウルラッシュとの比較でも感じ取れます。
▲チャリンの平均完歩ピッチグラフを勝ち馬ソウルラッシュと比較(作成:Mahmoud)
L1200m=前半400mではチャリンがソウルラッシュの前に出ていましたが、ソウルラッシュの鞍上の団野大成騎手は緩めることなく追走させ、チャリンをかわしました。3コーナー手前L1000〜900mでは緩める余裕を持って3コーナーに進入。先行押し切りが基本スタイルのチャリンの前にソウルラッシュが難なく出た時点で、この2頭の勝負付けはほぼ決定的でした。4コーナーでも内のマテンロウスカイを無理に交わそうとして大きく膨れるシーンもあり、チャリンは主戦ジョッキーが騎乗できなかったのが大きなマイナスだったように思います。
──日本の馬場が敗因ということはないのですか?