▲阪神JFに出走予定のコートアリシアンを管理する伊藤大士調教師(撮影:馬切もえ)
8日に京都競馬場で行われる阪神JFに挑むコートアリシアン。新馬戦を5馬身差で圧勝し、新潟2歳Sで2着になった同馬を管理するのは伊藤大士調教師です。
「オンになればすごい爆発力」と語るコートアリシアンですが、なんと普段は猫のように大人しいそう! レース選択の意図や折り合いへの対策など…大一番に向けての準備と意気込みを伺いました!
(取材・文:馬切もえ)
伊藤大士調教師も驚いた新馬戦でのパフォーマンス
──初めてコートアリシアンを見た時の印象は?
伊藤大 1歳の夏頃ですね。小柄だけどバランスのいい馬だと思いました。
──その時から光るものがあったのでしょうか?
伊藤大 そこまでではなかったですね。ただ秋に山元トレセンに移動した後も順調で、今年の3月に初めて美浦トレセンに入厩した時も淡々とゲート試験までクリアしたんです。その後の気配も良かったので、相手が強いことも承知のうえで6月の東京の新馬戦を目指すことになりました。
──その新馬戦は5馬身差の圧勝でしたね。
伊藤大 手応えはありましたよ。稽古でも楽に動けていて、当日は2番人気。ファンの皆さんにもバレてるなと思いました(笑)。レースでは思ったよりゲートを出なくてびっくりしましたけど、それ以上に驚いたのは最後の爆発力。稽古が良くても競馬に結びつかない馬はたくさんいますが、コートアリシアンの場合はこちらの感触以上のパフォーマンスでしたから。そして、その後のプランについては真剣に考えました。
▲師の感触以上のパフォーマンスで勝利を飾ったデビュー戦(撮影:下野雄規)
──差し支えがなければ、どのような選択肢があったのか教えてください。
伊藤大 まず1番に考えたのは、目標となる大きなレースへ向けて、使いすぎるのは良くないだろうこと。一戦一戦、しっかり力を出せるタイプだと思ったので。
新馬戦の後の回復度次第で9月の中山戦とか、10月東京のアルテミスSも考えられましたが、幸いレース後のダメージも少なく、夏負けしている様子もなかったので新潟2歳Sへ向かうことになったんです。うまく賞金を加えられれば阪神JFまで間隔を空けられますから、いいローテだと思いました。
──その新潟2歳Sでは残念ながら2着。改めてレースを振り返ってください。
伊藤大 スタートで後手を踏みましたが、初戦よりはマシだったと思います。ただ初戦と違ってレースではかなり行きたがって、折り合いを欠いてしまいましたね…。
しかし(菅原)明良も先のことを考えてポジションを取りにいったのでしょうし、納得はしているんです。そしてコートアリシアンに対しては、よくぞああいう形でも2着を確保してくれたな、と。改めて能力を感じました。
▲新潟2歳Sは「よくぞああいう形でも2着を確保してくれたな、と」(ユーザー提供:ひらまさん)
──普段からテンションは高めなのでしょうか?
伊藤大 全然ですよ。本当に大人しいんです。まるで猫のようですよ(笑)。
──猫なんですね(笑)。そこから今回は約3か月半ぶりの実戦。中間の様子を教えてください。
伊藤大 放牧を挟んで見た目には身長が伸びて成長した感じです。気性面も変わらず普段は猫です(笑)。
──レースでの折り合い面への対策は?
伊藤大 なるべくプレッシャーをかけないように、馬には競馬が近いと悟られないように注意しています。あとは周囲の音に敏感なので、普段からメンコを着けるようにしています。
ちなみに前走はゲート裏までメンコをして、レースでは外して臨んだのですが、今回は着けたままレースに行くかも。このあたりは当該週の馬の様子とか、しっかり見極めながら考えていきます。
──1週前追い切りには新パートナーの戸崎圭太騎手が騎乗されましたね。
伊藤大 いい感触を掴んでくれたようで、「思ったより乗りやすい」と言ってもらえたのは何よりでした。
──現時点でのコートアリシアンの1番の強みはどこでしょう?
伊藤大 オンとオフがハッキリしているところでしょうね。普段は猫でも、オンになればすごい爆発力ですから。ただあまりにオンが強すぎると弱点にもなるので、そのあたりが気をつけている部分です。
──レースへ向けての意気込みをお願いします。
伊藤大 未勝利だろうとGIだろうと、自分たちの仕事は一緒です。いい状態で管理馬をレースに送り出すだけですから。その中でもコートアリシアンは完成度が高く、速く走ることに関しては注文がありません。
ですから自分としてはあまり馬に対して求めすぎず、ちょっと物足りないくらいで送り出せればちょうどいいんじゃないかと思っているんです。とにかく無事にレース当日をむかえて、そしてどんな走りを見せてくれるか。楽しみにしたいですね。
(文中敬称略)