“晩成種牡馬”ハービンジャー産駒初の2歳GI戴冠 アルマヴェローチェ勝利の鍵は母方の血にあり
血統で振り返る阪神JF
【Pick Up】アルマヴェローチェ:1着
ハービンジャー産駒は2歳GI初制覇。国内外で平地GIを計11勝していますが、うち9勝を3歳秋以降に挙げています。ハービンジャー自身は4歳を迎えてから本格化し、英G1のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSを11馬身差で圧勝するなど、4歳時に4戦全勝の成績を残しました。そうした特長を伝えているせいか、産駒も基本的に晩成傾向が見られます。
アルマヴェローチェのように2歳戦のGIを勝ったのは、自身の能力の高さはもちろんですが、母方の血の影響も大きいでしょう。
2代母レイズアンドコールはサクラバクシンオー産駒らしいスピードを武器にアイビスSD3着。母ラクアミも芝スプリント路線で3勝クラスまで出世しました。
母の父ダイワメジャーは、父ハービンジャーとは対照的に、早期に完成するタイプ。2歳から3歳5月にかけて8つのGIを制覇しています。「ハービンジャー×ダイワメジャー」の組み合わせはナミュール(マイルCSなど重賞3勝)と同じ。ナミュールは阪神JFで1番人気に推されながら4着。スタートで大きく出遅れたことが敗因です。勝ち馬からわずか0秒2差だったので、まともなら……と惜しまれる敗戦でした。
ハービンジャー産駒の平地GI勝ちは、ペルシアンナイトのマイルCS、ブラストワンピースの有馬記念を除くとすべて牝馬によるもので、直近は牝馬が6回続けて勝っています(ノームコアのヴィクトリアマイル、ディアドラのナッソーS、ナミュールのマイルCS、チェルヴィニアのオークス、秋華賞、阪神JFのアルマヴェローチェ)。一口やPOGで重視すべき点かもしれません。
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【Pick Up】ガビーズシスター:1着
父アポロキングダムはアメリカ生まれの外国産馬。JRAで走り、ダート1600mと1800mで2勝を挙げました。重賞経験すらなかった下級条件馬ですが、種牡馬になると意外な成功を収め、JRAにおける勝馬率は40.9%と、一流種牡馬並みの数値を残しています。
これまでの代表産駒は障害戦で活躍したアポロマーベリック(中山大障害、中山グランドジャンプ、東京ジャンプS)。ただ、基本的にはダート向きで、とくに短距離の成績が優れています。父レモンドロップキッド、母方にストームキャットを持つという配合構成は、来年から種牡馬入りするレモンポップと同じです。
2022年10月に所有者のアポロサラブレッドクラブが解散。その前月に用途変更となりました。ガビーズシスターは何事もなければアポロの冠名で走るはずでしたが、そうした事情によりサラブレッドオークションに出品され、371万円(税抜)で売却。現馬主の長島和彦さんの服色で走ることになりました。
「アポロキングダム×スペシャルウィーク」の組み合わせは、さきたま杯4着、テレ玉杯オーバルスプリント5着などの成績を残したアポロビビと同じです。
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【ダイワメジャー】
女傑ダイワスカーレット(有馬記念などGIを4勝)の4分の3兄。現役時代に天皇賞(秋)、皐月賞、安田記念、マイルCS(2回)と5つのGIを制覇しました。
サンデー系は総じて末脚の切れ味に特長がありますが、ダイワメジャーは先行して粘り強い脚質。なおかつ、幅のあるがっしりとした造りも、薄くしなやかな父サンデーサイレンスとは対照的です。
産駒は2〜3歳戦に強く、パワー兼備のマイル向きのスピードが武器。これまでに勝ったJRAの平地重賞49勝のうち47勝が1600m以下で、GIに限ると10勝中9勝が芝1600m戦です。アドマイヤマーズ、メジャーエンブレム、カレンブラックヒル、コパノリチャード、セリフォス、アスコリピチェーノ、レーヌミノルなどを出しています。新種牡馬アドマイヤマーズが好成績を挙げており、後継種牡馬としてこれから大いに期待できそうです。
母の父としてはナミュール、アルマヴェローチェ、ショウナンナデシコ、グランブリッジなどを出しています。父としては芝とダートの勝ち星の割合は2:1ですが、母の父としては1:1。ダート適性が高めに出てくる傾向が見られます。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「歴代の新種牡馬のなかでJRAの2歳戦で最も多くの勝ち星を挙げた種牡馬は? 」
昔と今では2歳戦の競走数が違うので正確な比較はできません。2000年以降に限るとディープインパクトです。昨年までの24年間に30勝以上を挙げたものは以下のとおりです。
1位 ディープインパクト 41勝(10年/187走)
2位 ロードカナロア 37勝(17年/200走)
〃 ドゥラメンテ 37勝(20年/234走)
4位 キズナ 33勝(19年/323走)
5位 ダイワメジャー 31勝(11年/285走)
〃 エピファネイア 31勝(19年/243走)
〃 モーリス 31勝(20年/260走)
8位 ドレフォン 30勝(21年/238走)
トップのディープインパクトは187走という最も少ない出走回数でこの数字ですから、内容的にも抜群といえるでしょう。
今年、あと5日間の開催を残してナダルが29勝を挙げています。現時点の出走回数は118走。ディープインパクトの勝率を超えています。現在23勝のサートゥルナーリアにも30勝超えのチャンスは残されています。
ちなみに、2000年から2024年までの25年間に2歳戦の競走数は約1.5倍増えています。