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【朝日杯FS予想】“瞬発力勝負の鬼”は意外な穴馬!? 動画解析で判明したメンバー最上位の末脚を持つ本命馬とは

  • 2024年12月13日(金) 18時02分
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▲朝日杯フューチュリティSで上位人気が予想されるアルテヴェローチェとミュージアムマイル(撮影:下野雄規、netkeiba)


競馬アナライザーのMahmoud氏が、動画解析を駆使して科学的に競馬を分析する短期連載コラム。

今週は、阪神ジュベナイルフィリーズの回顧と朝日杯フューチュリティSの分析をお届け。前半では来年のクラシックに向けて、今年の阪神JFのタイムレベルなど徹底回顧。

後半の朝日杯FSの分析では、過去の勝ち馬ドウデュースやサリオスの成長曲線を振り返りつつ、今年の出走馬と比較。本命に浮かび上がったのは意外な中穴馬で…?

(構成:Mahmoud、netkeiba編集部)

阪神JFのレベルはソダシ級──“別馬”となったアルマヴェローチェの成長要因は?


──先週の阪神JFでは、札幌2歳S以来の実戦となったアルマヴェローチェが勝利しました。レースレベルとしてはいかがでしたか?

Mahmoud 過去6年の同レース1〜3着馬の走破タイムを今年の馬場の速さに換算し、今年の出走馬18頭と比較してみました。

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▲2024年阪神JF走破タイム換算値(作成:Mahmoud)


 アルマヴェローチェの勝ちタイムはソダシが勝った2020年と同等レベルで、概ね例年並みの一戦。6着のコートアリシアン以外の上位8着まではキャリアハイのパフォーマンスを見せ、順調に成長しています。

 アルマヴェローチェの勝ちタイム1:33.4における残り600m地点を基点とした前後半のイーブンペースは58.97-34.43であり、今回マークした59.10-34.30というバランスは0.1秒少々後半が速いだけでイーブンに近いペースバランスです。

──レース全体としてはまずまず速いペースといえますか?

Mahmoud 後半600mが速いバランスとなったのはビップデイジー、スリールミニョン、コートアリシアン、ジャルディニエの4頭のみです。半数以上の馬にとっては前半が速いバランスとなる前傾的なレースの流れでした。

 その中で先行して3着、4着に粘ったテリオスララとショウナンザナドゥは今後に繋がるタフな経験を得たと言えます。2着のビップデイジーは勝ち馬同様に程よいペースバランスでレースを進め、良い末脚を見せました。

──ビップデイジーは前走からの距離短縮でした。

Mahmoud 前走の紫菊賞での後半600mのラップタイムは良かったものの、今回の流れで末脚を使えたのは少々驚きました。対して、1番人気のブラウンラチェットは体重減の影響があったものの、それ以上に追走ペースの速さが響いた様子。テンから行かせすぎた印象です。現状、マイル戦では緩い流れか、後方からじっくりレースを進めた方が好結果に繋がりそうです。

──コートアリシアンは出遅れからよく追い上げるも6着まででした。

Mahmoud 出脚が付かなかったコートアリシアンは、レースの流れを踏まえると悪くない追走ペースでした。4コーナーから最後の直線で馬場があまり良くない最内を通ったとはいえ、もう少し末脚が弾けてもおかしくなかったです。新潟2歳Sからの上積みは感じられませんでした。

──成長と速いペース、どちらにも対応してきたのがアルマヴェローチェということですね。

Mahmoud アルマヴェローチェは早い時期から上位のパフォーマンスを見せていて、成長曲線は順当に描いていますが、過去2戦とは走りの質がかなり異なっていました。札幌競馬場での2戦の後半600mは200m12秒程度のラップタイムを刻む走りで、キレを見せる末脚とは無縁でした。今回の阪神JFではラスト400mは11.0-11.2。札幌2歳Sより200mで0.3秒ほど速い馬場とはいえ、別馬と思えるほどの末脚を発揮しました。

──成長の要因は何でしょうか?

Mahmoud デビューから3戦の平均完歩ピッチの推移グラフをご覧ください。

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▲アルマヴェローチェの平均完歩ピッチ(1完歩に要する時間を平均した値。グラフの値が下になるほど、ピッチ=脚の回転が速いことを表す)をレースごとに比較(作成:Mahmoud)


 過去2戦(黄)(水色)と比べ、スタートからピッチが徐々に遅くなる波形は滑らかです。そして今回(白)はL(ラスト)800〜500mまでピッチを遅くし、余力を温存できていた点が大きいです。ラップタイムが示す通り、ラストスパートではピッチがしっかり速くなり、キレを感じさせる内容でした。

「実はこのような末脚を持っていた」と見るのも一つですが、この末脚の源は、新馬戦、続く札幌2歳Sでペースアップした流れを経験し、追走力が向上した点にあるのでしょう。

 昨年の勝ち馬アスコリピチェーノとの走破タイム換算値の比較では前半1000mで0.03秒遅れ、後半600mでは0.16秒遅れていますが、ペースバランスは比較的似ています。アスコリピチェーノとも平均完歩ピッチを比較してみましょう。

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▲アスコリピチェーノとアルマヴェローチェの平均完歩ピッチを比較(作成:Mahmoud)


 ラストスパートのタイミングはアスコリピチェーノの方が早い分、後半600mトータルで速かったですが、アルマヴェローチェも若干早い踏み出しをすればアスコリピチェーノ並みの後半600mをマークした可能性は十分にあります。

──来年のクラシックでも当然中心の存在ですね。

Mahmoud ここから桜花賞まで約5ヶ月あります。あと0.3秒速く1600mを走り切れる成長を遂げれば、例年並みの桜花賞なら上位入線は間違いないでしょう。

過去の勝ち馬ドウデュース、サリオスらが描いた成長曲線


──それでは、朝日杯FSの分析をしていきましょう。

Mahmoud まず、今年の阪神JF時の馬場の速さを基に、過去6年の勝ち馬の走破タイム換算値と時系列グラフを見てみましょう。

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▲過去6年の勝ち馬の走破タイム換算値(作成:Mahmoud)


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▲過去6年の勝ち馬の走破タイム換算値時系列グラフ(作成:Mahmoud)


──注目すべき点はどこですか?

Mahmoud ジャンタルマンタル(白)とグレナディアガーズ(水色)はきっちり右上がりの波形を描いています。アドマイヤマーズ(オレンジ)は前走こそさほど速くない走破タイム換算値でしたが、2走前を基準にすると順当な成長曲線です。

 サリオス(ピンク)は前走で既に朝日杯FSの勝ち負けラインで走破しています。唯一の例外がドウデュース(緑)で、前走の走破タイム換算値は遅く、後半600m換算値もさほど速くありませんでした。しかし、ドウデュースは1800mを2戦連続で使った後の距離短縮で大きくパフォーマンスが向上しました。

 10月以降に走破タイム換算値1:34.5以内で走れば、勝ち負けを争うボーダーラインに達するといえます。

「大いに上昇が見込める」──タイプの違う強烈な末脚を持つ2頭


──では、今年の出走馬についてはどうですか?

Mahmoud 今年の出走馬についても走破タイム換算値の時系列グラフで見てみましょう。芝のレースで走ったことのある15頭を対象にし、5頭ずつ3組に分けて見ています。まずは第1グループから

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動画解析から個別ラップタイムや完歩ピッチを計測し、競馬を理論的に解明する唯一無二の競馬アナライザー。過去には競馬雑誌サラブレなどで活動。「Mahmoudの競走馬研究室」でしか見られない独自の理論をお楽しみください。

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