▲横山典弘騎手と安田翔伍調教師のスペシャル対談をお届けします!(撮影:林真衣)
有馬記念特別企画として、今年のダービー馬・ダノンデサイルを手掛けるタッグ、横山典弘騎手と安田翔伍調教師のスペシャル対談が実現! 歴戦の名手×史上最年少ダービートレーナーによる、ここでしか読めない濃く深〜い内容を全4回にわたってお届けいたします!
初回となる今回は、おふたりの関係性、そしてそこから生まれたダノンデサイルの“現役生活のはじまり”に迫っていきます。「僕にとってノリさんは、デサイルのずっと前から唯一無二の存在」と語る翔伍調教師。かれこれ20年以上の付き合いというおふたりの間には、お互いへのリスペクト、そして揺るがない絶対的な信頼がありました…!
(取材・構成=不破由妃子)
周りは勝手に「すごい」って言うけど、そんなのいつもやってることだから。
──いよいよ有馬記念ということで、今回はその有力馬の一角であるダノンデサイルについて、おふたりにここまでの歩みを伺っていきたいと思っています。
安田 これまで調教師とジョッキーの対談は、ありそうでなかったですね。
横山 ないね。俺は初めてかも。
──春は皐月賞除外からのダービー制覇というドラマがあった馬だけに、どんなお話がお聞きできるのか、とても楽しみです。さっそくですが、新馬戦から一貫して横山さんの手綱でここまできたわけですが、まずは「ノリさんにお願いしよう」と思った理由をお聞きしたいです。
横山 あるんですか(笑)?
安田 もちろんです。まだ基礎体力がついていない時期にゲート試験の合格を目指して入厩したんですけど、いい馬だなと思ういっぽうで、心身ともに頼りない面が多分にあって。最初に思ったのが、この精神面の弱さをどうやったらいい方向に伸ばしていけるのかということでした。少しでも嫌な思いをさせたらダメだなという印象で、とにかく幼かったんですよね。それで、「こういう馬がいるんですけど…」と、ノリさんに相談させてもらって。初めて乗ってもらったのは、1週前の坂路でしたよね。
横山 うん。「あんまり口向きがよくない。そういう癖もあるから、乗ってみてください」ということでね。跨いでみたら、確かに少し傾いていたし、牧場のほうからも「口向きが…」という話があったけど、自分のなかではありがちな感じで。新馬だし、こんなもんだろうと。
安田 この癖を悪いほうに向かわせることなく、いかに調教やレースを組み立てていくか。そこから話が始まりましたよね。
横山 大事なのは、なぜそうやって傾いているのかということ。もともとの馬のつくりで傾いているのか、バランス的にそうなっているのか、気持ちの面でそうなっているのか。馬の軸がズレる理由はいろいろあるんでね。デサイルの場合、気持ちの面が大きかったかな。
▲馬の軸がズレる理由はいろいろ…大事なのは、“なぜそう傾いているのか”(撮影:林真衣)
安田 幼かったですよね。臆病ではないんだけど、単独で行動できるような独立心も全然なかった。
横山 そうだね。でもね、俺からすれば、ただ単に幼かっただけ。もっと難しい馬はいっぱいいて、散々乗ってきたから。
──2戦目で勝ち上がった際、さっそく横山さんから「口向きについて改善が見られた」という言及があって。やはり厩舎との連携がしっかりなされたんだなと思いました。
安田 2戦目というより、まずは初戦のレース選択ですよね。乗ってもらったうえで、「どこでデビューさせたらいいですか?」と相談させてもらって。ストライドからして絶対に1600mではないと思ったので、僕は「東京の2000mはどうですか?」と提案させてもらったんですけど。
横山 翔伍は、馬のことを考えて長いところに行きたいと言っていたけど、俺はいきなりトリッキーな東京2000mはどうかなと思った。スタートしてすぐにコーナーというなかなか難しいコースだから、器用じゃない馬にはあんまりよくないというかね。かといって、オーナーサイドも相当期待されていたから、合わない条件を選んで無様な競馬もしたくない。俺もやっぱりずっと乗っていきたいからさ。初戦で無様なレースをすると、期待の裏返しでクビになってしまうでしょ。