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【有馬記念】3歳牝馬レガレイラが冬のグランプリ制す 戸崎圭太騎手会心の騎乗も炸裂

  • 2024年12月23日(月) 18時00分

1着から11着まで「0秒8」差の大接戦


重賞レース回顧

有馬記念を制したレガレイラ(撮影:下野雄規)


 断然の主役になるはずだったドウデュース(父ハーツクライ)の急な取り消しで混戦をささやかれた今年の「有馬記念」は、予測された以上の大接戦だった。4コーナーにさしかかっても馬群はほぼ一団。最後はレガレイラ(父スワーヴリチャード、その父ハーツクライ)と、シャフリヤール(父ディープインパクト)の競り合いになり、2005年の有馬記念「1着ハーツクライ、小差2着ディープインパクト」が再現されたかのようなシーンが展開された。

 大接戦の結果は、1着馬から11着のプログノーシス(父ディープインパクト)までわずか「0秒8」差。ビッグレースがあまりにスローになると、多くは物足りない結果になるものだが、4コーナーまでみんなにチャンスを感じさせたのは、どの馬が勝っても不思議ない能力接近の有馬記念だったからだろう。

 ごく自然にハナを切ることになった3歳ダノンデサイル(父エピファネイア)の作った流れは、前後半の1200mに二分すると「1分15秒7-(6秒2)-1分09秒9」=2分31秒8。にわかには信じ難いスローバランスだった、最後に坂のある中山の長距離戦2500mだけに、上がり3ハロンは「35秒2」でも、ピッチが上がった後半1000mは「57秒9」。スプリント戦にも近い流れだった。

 このスローの流れに巧みに乗り、心身ともに著しい進化を見せたのは3歳馬レガレイラ。直線一気を決めた一年前の「ホープフルS」が上がり35秒0。中山の長丁場GIで33秒台の上がりは記録できないから、今回も数字は「34秒9」。ただし、好位のインでずっと我慢してスタミナロスを防ぎ、残り400mまでスパートを待った戸崎圭太騎手の会心の騎乗だった。切れ味全開と、最後は若い活力だった。牝馬の有馬記念制覇は、69回で8頭目になる。

 大外枠から陣営が逃げ宣言をしていたシャフリヤールは、最初にコースに飛び出して気負ったムードだったが、スタート前に落ち着きを取り戻し、レースでは後方馬群のなかで折り合って追走できた。このスローは展開有利ではなかったが、21年のスローの日本ダービーを、上がり最速タイの33秒4で差し切っていたのがシャフリヤール。今回が9度目の騎乗になるC.デムーロ騎手はその最大の長所を理解し尽くしていた。負けはしたが、鞍上はシャフリヤールを絶賛している。

 ディープインパクトの母であり、勝ったレガレイラの3代母にあたるウインドインハーヘア(IRE 1991年、父Alzao)から発展する驚異のファミリーの活躍は知られるが、今年2024年はステレンボッシュの「桜花賞」。アーバンシックの「菊花賞」。そしてレガレイラの「有馬記念」で3勝目のGI制覇が加わり、日本に輸入されての直系子孫のGI級勝ち馬はディープインパクトを筆頭に6頭。制したGI級の勝ち星は約20年間で、日本ダービー2勝、有馬記念2勝など、計14勝にまで達しているから驚くしかない。このファミリーは、エアグルーヴの一族などとともに不滅に近い発展を続けるのだろう。

 1番人気の3歳馬アーバンシック(父スワーヴリチャード、レガレイラとはイトコ、3代母ウインドインハーヘア)は、自在型とはいえ、スタートで後手を踏んだのが痛い。この流れなので楽に中団には押し上げて進めたが、本来のリズムでの追走ではなかったのだろう。高速上がりのレースで、争覇圏内に取りつくのに手が動いてしまっては苦しい。ただ、苦しい展開で勝ち馬と0秒5差。まだ今回が8戦目の3歳馬。真価発揮はこれからだ。

 同じく3歳のダノンデサイルは、決して不満の残る仕上がりではなかったが、レース後に安田翔伍調教師が「日本ダービーのころと比べ、何かなくなっているものがある感じがする」と、レース内容に満足していなかった。確かにその通りで、気迫満点の絶好調なら、さすがにこういうペースの逃げではなかったと思える。

 高速の上がりが求められたので、ベテラン勢の苦戦は仕方がない。ただし、このスローの流れを2分32秒台(勝ち馬と0秒8差以内)で乗り切ったグループの大半の馬は、シャフリヤールが巻き返したように、来季の大きな展望を掲げていい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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