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【ホープフルS AI予想】あとはオッズ次第!? AIが推す主役候補の強調材料と不安要素

  • 2024年12月23日(月) 18時00分

単勝オッズ10.9倍(5番人気)のレガレイラが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

以前はどちらかというと堅く収まりがちなレースだった


AIマスターM(以下、M) 先週は有馬記念が行われ、単勝オッズ10.9倍(5番人気)のレガレイラが優勝を果たしました。

伊吹 強かったですね。スタート自体はそれほど良くなかったのですが、直後からスムーズにポジションを押し上げ、最初の4コーナーを先行勢のすぐ後ろで通過。逃げたダノンデサイル(3着)、2番手のベラジオオペラ(4着)らがゆったりとしたペースで馬群を先導する中、道中はこの2頭をマークするような形でレースを進めています。

 2周目の3コーナーあたりで外や中団の各馬が仕掛けてきたものの、ロスのないインコースを進んでいたこともあり、ほぼ馬なりで3番手に浮上。4コーナーを周り切る直前から鞍上の戸崎圭太騎手が追い始めると、ゴール前の直線ではダノンデサイルとベラジオオペラの外へ持ち出し、さらに外から伸びてきたシャフリヤール(2着)と併せ馬の形になりました。

 一旦はシャフリヤールが前に出るような場面もあり、そのまま捻じ伏せられてしまいそうにも見えたのですが、レガレイラも内からしぶとく食らいついていき、併走したままダノンデサイルを捕らえて入線。

 どちらが先着していてもおかしくないくらいの接戦だったとはいえ、そもそも並の3歳牝馬であればこの状況に持ち込めていませんよね。いわゆる勝負根性などを含む、総合的な競走能力の高さを証明した一戦と言えるでしょう。

M レガレイラは昨年のホープフルSに続く自身2度目のGI制覇。今春は3歳牡馬クラシック戦線に挑戦するなど、デビュー当初から独特なレース選択をしてきました。

伊吹 皐月賞(6着)や日本ダービー(5着)は展開に恵まれなかった面もありましたし、この馬なりに頑張っていたと思います。もっとも、今秋のローズSとエリザベス女王杯でそれぞれ5着に敗れてしまったのは、私からするとやや物足りない結果だったんですよね。

 前回紹介した傾向を読み返していただくとわかる通り、レガレイラはいかにも近年の有馬記念が合っていそうだった馬。それにもかかわらず◎を打つことができなかった私は、大いに反省しなければなりません。

 陣営がホープフルS・皐月賞・日本ダービーを使いたくなるくらいスケールの大きい馬で、その実力は十分に承知していたつもりだったのですが、ホープフルSから時間が経つにつれて、無意識のうちに少しずつこの馬の評価を下げてしまっていたのでしょう。

M 再びビッグタイトルを獲得したことで、来年以降はこれまで以上の注目を集めることになるのではないかと思います。

伊吹 3代母のウインドインハーヘアはディープインパクトらを産んだ歴史的名牝。母のロカは現役時代にクイーンCで3着に健闘しました。もともとポテンシャルの高い血統であるうえ、父がスワーヴリチャード、母の父がハービンジャーですから、古馬となる今後もますます力をつけてきそうですね。中山巧者というタイプではないと思いますし、どのレースを使ってきたとしても相応に高く評価するべきでしょう。

M 今週の土曜中山メインレースは、数々のスターホースを輩出してきた2歳中距離チャンピオン決定戦、ホープフルS。先程も触れた通り、昨年は単勝オッズ3.1倍(1番人気)のレガレイラが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は単勝オッズ3.1倍(2番人気)のシンエンペラーが2着を確保したものの、3着に単勝オッズ128.7倍(13番人気)のサンライズジパングが食い込んで、3連単5万6240円の好配当決着を演出。2022年には3連単246万6010円の超高額配当が飛び出しています。


伊吹 ここ2年連続で人気薄の馬が健闘したとはいえ、GIIだった2016年以前を含む2015年から2021年までに限ると、3連単の配当は平均値が1万6429円、中央値が7790円です。


M ただ、過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、伏兵が上位に食い込んだ例も決して少なくはありませんよね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2014年以降[8-3-3-6](3着内率70.0%)、単勝3番人気から単勝4番人気の馬は2014年以降[1-4-2-13](3着内率35.0%)、単勝5番人気から単勝9番人気の馬は2014年以降[0-3-4-43](3着内率14.0%)、単勝10番人気以下の馬は2014年以降[1-0-1-58](3着内率3.3%)となっていました。あえて人気薄の馬を狙う場合も、人気の中心となっている馬を安易に軽視してしまわないよう心掛けるべきでしょう。

M そんなホープフルSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、マスカレードボールです。

伊吹 興味深いところを挙げてきましたね。単勝1番人気ということはないかもしれませんが、それなりの支持は集まりそう。

M マスカレードボールは現在のところ2戦2勝。デビュー戦と前走のアイビーSを連勝しています。現4歳の半姉マスクトディーヴァは昨年の秋華賞で2着に、今年のヴィクトリアマイルで3着に食い込んだ実績のある馬。良血である点を高く評価している方も多いのではないでしょうか。

伊吹 マスクトディーヴァはこの秋に故障で引退を余儀なくされたばかり。さまざまな意味で注目を集めそうですね。上位人気グループの一角を占める想定で、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を計っていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 まずは臨戦過程をチェックしておきたいところ。2018年以降の3着以内馬18頭中14頭は、前走がJRAの重賞かオープン特別でした。


M 前走が条件クラスのレースだった馬は強調できませんね。

伊吹 ちなみに、前走のコースがJRA、かつ前走の条件がオープンクラス以外、かつ父も母の父もディープインパクト系以外の種牡馬だった馬は2018年以降[0-1-0-35](3着内率2.8%)。この条件に引っ掛かっている馬は、思い切って評価を下げた方が良さそうです。

M オープン特別を勝って臨むマスカレードボールのような馬にとっては、心強い傾向と言えますね。

伊吹 あとは枠順も明暗を分けそうなファクターのひとつ。同じく2018年以降の3着以内馬18頭中14頭は、馬番が1番から8番でした。


M どちらかと言えば内枠有利、と。

伊吹 ただし、馬番が9番から18番だった馬のうち、父にハーツクライ系種牡馬を持つ馬は2018年以降[2-0-0-7](3着内率22.2%)、父にキングカメハメハ系種牡馬を持つ馬は2018年以降[1-0-1-7](3着内率22.2%)。この両父系に属する種牡馬の産駒であれば、外寄りの枠でも無理に嫌う必要はないかもしれません。

M マスカレードボールの父はキングカメハメハ系種牡馬のドゥラメンテ。枠順を気にしなくて良い側の一頭です。

伊吹 さらに、同じく2018年以降は、ノーザンファーム生産馬や重賞で優勝を争ったことのある馬が優秀な成績を収めていました。


M なるほど。重賞ウイナーやそれに準ずる存在でない限り、ノーザンファーム以外のブリーダーが生産した馬は疑ってかかるべきでしょうね。

伊吹 おっしゃる通り。個人的には今年もこの傾向を重視しようと考えています。

M マスカレードボールは今回が重賞初挑戦で、生産者が社台ファーム。残念ながらこの条件はクリアできていません。

伊吹 正直なところ、私はやや軽視する腹積もりでした。連軸に据える予定の馬が人気サイド寄りなので、あまり相手を手広く押さえるわけにはいかないんですよね。ただ、他ならぬAiエスケープが有力と見ているのであれば、安易に軽視しない方が良いのかも。枠順や実際のオッズも踏まえたうえで、もう一度この馬に対する評価を見直してみたいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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