▲年末年始の園田開催を終えた小牧太騎手にお話を伺います(撮影:稲葉訓也)
1月2日からスタートした園田競馬で計7勝を挙げ、年始から大活躍の小牧騎手。3日には上限の8鞍に騎乗するフル稼働で、思わず「疲れたぁ」と本音も。年末に園田のNo.1ジョッキー・吉村智洋騎手が落馬負傷、さらに鴨宮祥行騎手がオーストラリア修行を決行したこともあり、しばらくは上限いっぱいに騎乗する日が増えそうです。
そんな状況を受けて、周りからはリーディングを期待する声も上がっているようですが…。はたして小牧騎手の意気込みは!?
(取材・構成=不破由妃子)
左の肩甲骨がパックリ折れて…そのまま競馬に乗っていた!?
──年末の29日から3日間、元旦を挟んで2日からまた3日間。ほぼ6日連続といっていい開催でしたね。本当にお疲れさまでした。
小牧 疲れたぁ(苦笑)。1月3日は、移籍して初めて8鞍(園田・姫路競馬における1日の騎乗数の上限)乗ったからね。まぁでも、いい馬に乗せてもらっているから。おかげで疲れも許容範囲や。
──年末に落馬してしまった吉村智洋騎手の代打もけっこうあって。
小牧 うん。僕もいい馬に乗せてもらっているけど、やっぱり彼は強い馬に乗ってるわ。エイシンハリアーとか、めちゃくちゃ強かった。
──吉村さん、肩甲骨と肋骨の骨折だとか。心配ですね。
小牧 あの落ち方は…。正直、怖かったわ。ケガをしてしまったのはかわいそうやけど、あれで済んでよかったと思う。不幸中の幸いや。もう見ていられへんかったもん。
──小牧さんは乗っていないレースだったから、じっくり見ていたんだろうなと思って。
小牧 確かにレースはしっかり見ていたけど…。そのあと、もう1回見ようとは思えへんかった。あのあとは、僕もちょっと動揺してしまったね。ジョッキーという仕事は、ああいうことが起こるから怖い。ひとつ間違えたら、ホンマに命にかかわる。
──吉村さんのような落馬は、どれだけ注意したところで防げるものではない。なにしろ突然、馬がガクッとなりましたから。
小牧 あれね、いかにも骨折したような崩れ方やったけど、ただ単に躓いただけなんやって。だから馬はなんともないねん。
──そうでしたか。それもまた不幸中の幸い。
小牧 ホンマやね。ただ、躓いただけでもああいうことが起こるんやなと思うと、逆に怖いなとも思った。てっきり骨折したと思ったから。余計に怖いね。
──見方を変えればそうですね。それにしても、不幸中の幸いとはいえ、肩甲骨の骨折はジョッキーにとって痛手ですよね。「肩甲骨の可動域が…」というような話をよく聞きますし、騎乗する上で大事な部位なんだろうなと思って。
小牧 大事やね。僕もね、左の肩甲骨がパックリ折れたことがあるよ。なんせ痛いし、痛い以上に腕が利かなくなる。僕の場合、折れた状態で3日間、競馬に乗せられたし。
──えっ!? 折れたまま競馬に乗った?
小牧 うん。ロードバクシンという大事な馬で重賞が控えていたから、我慢して乗ってくれって言われて。馬に乗る以上、固定するわけにはいかないから、テーピングだけしてね。今でも覚えているけど、腕が利かんかったもん。
──完治まで長引いたのでは?
小牧 はっきりとは覚えていないけど、1カ月くらい掛かったかなぁ。それでも、しばらくは我慢して乗っていた感じで、そのうちいつの間にか治ってた。まぁ若かったからね。今でも肩が痛くなるときは左ばっかりや。今日もちょうど鍼治療に行っていたんやけど、もう持病みたいになってしまったね。
──そうでしたか。吉村さんはしばらくお休みでしょうし、昨年兵庫リーディング4位の鴨宮祥行騎手は、4カ月間オーストラリアへ。小牧さん、しばらくフル稼働ですね。どうしたって馬が集まってくる。
小牧 そうやねん。ありがたい話やけど、60歳まで乗るためには、自分のペースを守ることも大事やと思ってる。やっぱり3日連続で競馬というのは、けっこうしんどいから。
──しんどいと言いつつ、年始の3日間で7勝。年末から乗りっ放しなわけで、やっぱり小牧さんは鉄人だなぁと思いながら見ていました。
小牧 「馬に乗るのは趣味」と思いながら仕事してたわ。そうじゃないと、気持ち的に持たんからね。そんなに神経を尖らせんと、楽しんで乗るようにしてた。
──そういう気持ちの作り方もベテランならではですね。それだけお忙しかったとなると、加矢太さんのリーディングも、小牧さんご自身の地方3500勝も、まだお祝いできてないのでは?
小牧 まだやね。なんせ加矢太に会えていないから。でも、本当によかったよね、3年目でリーディングが獲れて。
──小牧さんのリーディングも期待しちゃいます。
小牧 周りは盛り上がってるけどねぇ、僕はもうそんなんは考えてない。体と上手に付き合いながら、1頭1頭、1勝1勝や。60歳まで、あと2年半とちょっと。ぼちぼち頑張っていきますわ。
(文中敬称略)