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【フェアリーS AI予想】不安要素はほぼない!? AIの注目馬はオッズ的にも魅力十分

  • 2025年01月07日(火) 18時00分

単勝オッズ8.4倍(4番人気)のアルナシームが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

単勝1番人気馬や単勝2番人気馬が大苦戦しているレース


AIマスターM(以下、M) 先週は中山金杯が行われ、単勝オッズ8.4倍(4番人気)のアルナシームが優勝を果たしました。

伊吹 鞍上の藤岡佑介騎手にとっては、大変に気持ちの良い会心の勝利だったのではないでしょうか。好スタートを決めて先行争いに加わりかけたものの、外寄りの枠に入った実績馬がポジションを取りに行ったこともあり、序盤は行きたい馬を先に行かせる形で中団のインコースを追走。3コーナーから少しずつポジションを押し上げ、4コーナーではスムーズに馬群の外めへ持ち出し、先行勢を射程圏内に捉えながらゴール前の直線に入っています。クリスマスパレード(4着)、ボーンディスウェイ(3着)らが粘り込みを図る中、急坂を上り切ったあたりで前の馬をまとめてかわし、単独先頭に。中団から伸びてきたマイネルモーント(2着)に対しても1馬身1/4のリードを保ったまま入線しました。1000mの通過が58秒7というタイトな展開でしたから、仕掛けのタイミングがもう少しでも前後にズレていたら、最後の最後で失速したり、その逆に脚を余してしまったりしていたかもしれませんね。リプレイを見れば見るほどに騎乗技術の高さを感じる一戦です。

M アルナシームは昨年の中京記念に続く自身2度目の重賞制覇。2000m以上のレースは過去に2回しか使われておらず、2023年の函館記念では6着に、同じく2023年のケフェウスSでは8着に敗れていました。

伊吹 実績上位であるにもかかわらずこれくらいの人気にとどまったということは、やはり距離適性を不安視していた方が多かったのでしょうね。もっとも、この中山芝2000m内はモーリスの仔が優秀な成績を収めているコース。初年度産駒がデビューした2020年から2024年末までのトータルでも、3着内率が32.6%に、複勝回収率が89%に達しています。高齢の産駒が増えてきた影響もあり、正直なところ当コースにおける好走率や回収率は右肩下がりなのですが、やはり本質的にはこの条件が合っている模様。わかりやすい理由で過小評価されていた今回のアルナシームは、絶好の狙い目だったのかもしれません。

M 今後は大阪杯を目標とするようです。

伊吹 大阪杯は高齢馬が強調できないレース。GIとして施行された2017年以降に限ると、馬齢が6歳以上の馬は[0-1-0-33](3着内率2.9%)でした。しかも、3着以内となったのは2017年2着のステファノスだけで、2018年以降の該当馬30頭はいずれも4着以下に敗退。この傾向をどう見るかが取捨選択のポイントと言えるでしょう。ただ、アルナシームはキャリアを積み重ねる中で力をつけてきた馬ですし、この距離のビッグレースに挑戦するのは初めて。オッズやコンディションにもよるとはいえ、マークしておく価値は十分にあると思います。

M 今週の日曜中山メインレースは、3歳牝馬クラシックの前哨戦と位置付けられている重賞、フェアリーS。昨年は単勝オッズ12.6倍(5番人気)のイフェイオンが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ14.0倍(6番人気)のマスクオールウィンが2着、単勝オッズ10.6倍(4番人気)のラヴスコールが3着となって、3連単15万7970円の高配当決着。波乱含みの一戦というイメージを持っている方が多いかもしれません。


伊吹 実際、2023年には3連単51万7430円の高額配当が飛び出していますからね。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝1番人気の支持を集めたうえで馬券に絡んだ馬は2頭だけです。



M 単勝2番人気から単勝3番人気の馬も、計5勝をマークしているとはいえ3着内率が30.0%どまり。過信禁物と見ておいた方が良いのではないでしょうか。

伊吹 実は、単勝2番人気の馬も2015年以降[1-0-0-9](3着内率10.0%)と期待を裏切りがち。ちなみに、単勝3番人気から単勝7番人気の馬は2015年以降[6-5-10-29](3着内率42.0%)、単勝8番人気から単勝11番人気の馬は2015年以降[3-3-0-34](3着内率15.0%)、単勝12番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-48](3着内率0.0%)でした。超人気薄の馬が上位に食い込んだ例は少ないものの、妙味ある伏兵、より具体的に言うならば人気順で5番手前後あたりの馬を狙うべきレースと言えます。

M そんなフェアリーSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ニシノラヴァンダです。

伊吹 話の流れ的にもちょうど良い塩梅の馬を挙げてきましたね。人気の中心ということはなさそうですが、それなりの支持は集まるはず。

M ニシノラヴァンダは前走の函館2歳Sで2着に好走。特別登録を行った馬のうち、オープンクラスのレースで連対を果たしたことがあるのはこの馬だけですから、実績上位の一頭と言って良いでしょう。もっとも、これまでの2戦はいずれも舞台が函館芝1200m。今回は長期休養明けでもありますし、積極的に狙おうと考えている方は案外少ないかもしれません。

伊吹 強調材料も不安要素もハッキリしていて、いかにも「人気順で5番手前後あたり」に収まりそうな馬ですよね。Aiエスケープが狙い目と見ていることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 基本的にはキャリアの浅い馬を重視したいところ。2021年以降の3着以内馬12頭中9頭は、出走数が2戦以内でした。



M キャリア3戦以上の馬は過信禁物、と。

伊吹 ちなみに、出走数が3戦以上、かつ“JRAの、オープンクラスのレース”において2着以内となった経験がない馬は2021年以降[0-1-0-23](3着内率4.2%)。相応の実績がある馬でない限り、キャリアが豊富過ぎる馬は強調できません。

M キャリア2戦で、なおかつ重賞2着の実績もあるニシノラヴァンダにとっては、心強い傾向と言えます。

伊吹 あとは脚質も重要なファクターのひとつ。同じく2021年以降の3着以内馬12頭中11頭は、前走の4コーナー通過順が7番手以内でした。



M 前走で中団や後方からレースを進めていた馬は、割り引きが必要ですね。

伊吹 おっしゃる通り。先行力がそれほど高くない馬は疑ってかかるべきでしょう。

M ニシノラヴァンダは前走、前々走とも4コーナー通過順が1番手。先行力に不安はありません。

伊吹 さらに、同じく2021年以降は、父か母の父にキングカメハメハ系種牡馬を持つ馬が[1-3-2-11](3着内率35.3%)と比較的堅実。一方、この条件をクリアしていなかったにもかかわらず3着以内となった6頭のうち5頭は、前走の着順が1着、かつ前走の2位入線馬とのタイム差が0.2秒以上でした。



M 血統面が強調できない馬の場合は、前走を完勝していてほしいところですね。

伊吹 今年は父や母の父にキングカメハメハ系種牡馬を持つ馬がそれほど多くないので、前走の勝ちっぷりが明暗を分けそうな気もします。

M ニシノラヴァンダは父がサトノアラジン、母の父がSidney's Candyで、いずれもキングカメハメハ系に属していない種牡馬。前走の着順も2着ですから、残念ながらこの条件はクリアできていません。

伊吹 ただ、この馬は前走が重賞だったわけですし、これだけを理由に大きく評価を下げるべきかどうかは微妙なところ。Aiエスケープも有力と見ているわけですから、少なくとも無理に嫌う必要はないでしょう。最終的なメンバー構成や実際のオッズも踏まえたうえで、買い目上の扱いをもう一度じっくり検討してみるつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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