厳しいペースを経験した人気馬の巻き返しに期待

京成杯を制したニシノエージェント(撮影:下野雄規)
クラシックにつながる重賞として評価が高まり、今年は関西馬が9頭も参戦した注目の一戦。ところが、第一回1967年の京成杯から、今回初めて3着までに5番人気以内の人気馬が1頭も食い込めない大波乱となった。
ただし、1分59秒9は2000mの京成杯史上2位の好タイムであり、人気馬こそもう一歩の内容だったが、決してレベルが低いわけではない。京成杯レコードは2004年の「前後半58秒0-61秒2」=1分59秒2。8戦して【7-0-1-0】だった歴史的な名馬キングカメハメハが、ただ一度だけ3着に負けたレースだった。このときキングカメハメハは、初の中山遠征に加え、2戦目の2000mの勝利が自身の前半1000m通過63秒台だったので、いきなりのハイペースに対応できなかったのが敗因だった。
今回の1番人気馬キングノジョー(父シルバーステート)は今回2戦目で、新馬はスローペースの典型。2番人気のパーティハーン(父ウートンバセット)は3戦目だが、同馬も厳しいペースを経験したことがなかった。ハイペースだと戦歴不足は痛い。
ただ、理想のポジションと映った道中3番手が実際は58秒台後半だったキングジョーは「あれで大きく負けなかったのは、この馬の力を示している」と、陣営は落胆はしていない。巻き返せるはずだ。皐月賞まで3カ月もある。
5着パーティハーンは、行く構えを見せたライバルが多かったので、差す形をとったのは正解だろう。ただ、4コーナーを回った地点ではもっと伸びるかと思えたが、案外だった。キャリア不足は事実だが、距離延長は歓迎ではないかもしれない。
一方、馬自身の勝負強さと、津村騎手の会心の騎乗で接戦を勝ち切ったニシノエージェント(父イスラボニータ)は、今回が5戦目。スタートしてすぐ、多くのライバルが先行の気配を見せると、これまでとは一転、追い込むレースができた。人気薄だったが、先行した2頭(13着、14着)が大失速したハイペース「前後半58秒3-61秒6」が味方したのは確かでも、決してフロックではないはずだ。
人気薄ではあったが、父イスラボニータは皐月賞1着、日本ダービー2着馬。牝系は桜花賞馬マルセリーナ、その産駒で京成杯の勝ち馬ラストドラフト、さらにスプリングSの勝ち馬グランデッツァなど、3歳春に頭角を現す一族。可能性は十分に秘めていた。これをフルに爆発させたのがテンハッピーローズ(ヴィクトリアマイル)の津村騎手で、自身も「最近では一番の騎乗だった」と振り返るように、4コーナー手前からのコース取りが絶妙だった。
2着ドラゴンブースト(父スクリーンヒーロー)も、1着馬と同じくここが5戦目。遅咲きタイプではないかと思える血統背景だけに、レースキャリアがモノをいった。
1着、2着馬ともにこれで5戦は近年のクラシック好走馬にない戦歴だが、ここでの快走はこの後が楽になる。直行する可能性が大きい。
今春の牡馬のクラシック路線は、いきなりの大波乱で混戦模様、力関係の見極めが難しくなったが、きびしい内容の京成杯を経験したグループは、凡走馬も含めて、実際には得たものが大きいかもしれない。