
▲2024年度のJRA賞受賞馬をテーマに考察(撮影:下野雄規)
本稿が公開される1月27日は、2024年度のJRA賞の表彰式が行われる。24年の中央競馬は、23年まで競馬界をリードしたイクイノックスの引退を受けて主役不在の混戦が続き、平地GI・2勝はドウデュース(天皇賞(秋)、ジャパンC)とチェルヴィニア(オークス、秋華賞)の2頭だけ。こうした結果を受け、各部門賞受賞馬を決める記者投票では、中長距離路線で活躍したドウデュースが順当に年度代表馬に選定された。
筆者も投票に参加しており、投票結果についてはJRAのホームページを参照されたいが、毎年のことながら、自らの選択と他の投票者の方々の選択の違いから、色々と考えさせられる部分がある。今回も10部門中(短距離とマイルを分離した結果1増に)、4部門で実際の受賞馬とは異なる馬に投票した。異なっていたのは3歳牡馬、短距離、マイル、ダートの4部門。結果が出る前に注目していたのは、短距離を除く3部門と、同馬主同厩舎の2頭が票を分けた3歳牝馬だった。背景に何があったかを改めて検討してみたい。
フォーエバーヤング 2部門で選外
今回、2部門で相当な得票がありながら、選には漏れて特別賞となったのがフォーエバーヤングだった。3歳牡馬部門では投票総数 256票中、40%を超える103票を得たが、日本ダービー優勝のダノンデサイルの144票には及ばなかった。一方、最優秀ダート馬部門は96票(37.5%)で、160票のレモンポップにやや離された。両部門とも上位馬が決め手不足気味だった。ダノンデサイルは日本ダービーを勝ったが、下半期は菊花賞6着後、スローペースで逃げた有馬記念が3着。レモンポップはJpnIのさきたま杯、南部杯を勝った後、チャンピオンズC連覇で有終の美を飾ったが、海外では大敗。地方の2戦は相手に恵まれており、連覇を飾った南部杯も、好タイムで圧勝した23年ほどのインパクトには欠けた。
対するフォーエバーヤングは上半期がサウジダービー、UAEダービー連勝の後、ケンタッキーダービーで勝ったミスティックダンと「ハナ+ハナ」差の3着。下半期は新設された3歳ダート三冠最後のジャパンダートクラシックを快勝後、再び渡米してBCクラシックで3着。ただ、勝ったシエラレオーネには3馬身近い差をつけられた。それでも、帰国して年末の東京大賞典(大井・GI)を快勝。通算でも米国の3着2回を除けば7戦無敗だ。
もう一つ、強調材料となるのはレーティング(RT)で、1月22日に発表されたJPNサラブレッドランキングでは、121でレモンポップの118を上回った。フォーエバーヤングの数値はBCクラシックと東京大賞典に与えられており、東京大賞典は上位4頭の平均RTで算定する年間レースレートが118.25と「世界トップ 100GI」の46位に入った。日本全体で6位で、118だった皐月賞や宝塚記念と言った中央伝統のGIを上回った。
結果的には、国際的に認められているGIが東京大賞典の1つだけで、米国の両G1では2着に届かなかったフォーエバーヤングも「決め手不足」と評価された格好だ。21年には牝馬限定とは言え、マルシュロレーヌがBCディスタフで北米ダートG1初制覇を果たしているが、同馬は特別賞に届かなかった。
23年はウシュバテソーロが日本馬として初めて、ダートで施行されたドバイワールドCを優勝したが、当時はダート部門でレモンポップに及ばず、特別賞に選定された。筆者は3歳の上半期に中東から米国に転戦して3戦を戦い抜いたことを評価し、最後までフォーエバーヤングに1票を投じたが、海外G2、G3勝利への評価の部分で、多数派とは見解が違ったのだろう。
ロマンチックウォリアーは26%
今回、得票結果が出る前に、最も注目していたのは最優秀マイラー部門だった。関心事は安田記念を制し、外国馬として9年ぶりの国内GI制覇を果たしたロマンチックウォリアーが何票を得るか。結果から言えば25.8%に相当する66票にとどまり、受賞したソウルラッシュの182票とは大差がついた