定年を迎える河内洋調教師と掴んだ勝利

東京新聞杯を制したウォーターリヒト(撮影:下野雄規)
波乱の多い「東京新聞杯」を鮮やかに差し切ったのは3番人気の4歳牡馬ウォーターリヒト(父ドレフォン)だった。ウォーターリヒトは今後さらに大きな活躍が期待できる若い4歳馬。管理する河内洋調教師はこの3月に定年引退を迎えるベテラン調教師。重賞制覇は2018年のサンライズソア(平安S)以来約7年ぶりの嬉しい重賞勝利だった。
騎乗した菅原明良騎手は、ウォーターリヒトには3歳春のNHKマイルC以来二度目の騎乗。引退を前になんとしても勝ちたい重賞の鞍上を任され、期するものがあった。素晴らしいというしかない会心の騎乗だった。
直線に向くと、道中からずっとマークする形になっていた人気のブレイディヴェーグ(父ロードカナロア)がすぐ横の前方にいる。そのインには2番人気のボンドガール(父ダイワメジャー)が見える。あとは追って切れ味を爆発させるだけ。
坂を上がる地点で一発だけ合図を送るムチを入れたが、あとは加速のついたウォーターリヒトの闘志と切れ味を信じるだけ。もうムチを使用してバランスを崩す危険を避けるように、懸命に、ムチを入れずに必死に追った。それがクビ差の勝利につながったように映った。ウォーターリヒトはゴールまで真一文字に伸びている。
2着惜敗のボンドガールは、内枠のため前半は終始、周囲に他馬のいる展開。不利があったわけではないが4歳牝馬にとって揉まれる展開はきびしかった。直線に向いて前にスペースができるとスムーズに抜け出し、勝ったにも等しい内容だったが、今回は差し切ったウォーターリヒトの渾身の切れ味(上がり最速タイの33秒2)が上回っていた。
ボンドガールはこれで[1-5-1-1]。2着5回はすべて重賞レースという珍しい記録を残すことになったが、陣営がヴィクトリアマイルを大目標とする路線を明言するように、今回示したスピード能力と切れ味はマイル戦こそベストを示した。これで15年以降、東京新聞杯に出走した牝馬は[3-5-2-17]。限りなく3割に近い高い連対率を続けている。
16番人気であわやの3着に粘り込んだメイショウチタン(父ロードカナロア)は、8歳馬。8歳馬が馬券に絡んだのは、2004年の3着馬キスミーテンダーに続きレース史上2頭目。前後半「46秒1-(1000m通過57秒7)-46秒5」=1分32秒6のかなり厳しい流れを克服してのものだから価値がある。さすがファインルージュ(2022年の東京新聞杯2着、ヴィクトリアマイル2着)の一族だった。
1番人気で4着にとどまったブレイディヴェーグ(父ロードカナロア)は、決して悪いデキではなかったが、やや緩い印象を与えたあたり、完調手前だったか。1800mの方がより合うかもしれないが、マイル戦が合わないとは思えない。
5着マテンロウスカイ(父モーリス)は、巧みにレースの流れに乗って能力は出し切った印象が残った。こちらの方が、どちらかといえば1800mベストだろう。
スピードレースとあって59キロ組は[0-0-0-4]。この重賞が1600mになって以降、1986年に勝ったギャロップダイナ、2着トウショウペガサス、1994年の勝ち馬セキテイリュウオーが59キロを克服して連対しているが、現在の高速馬場では完全に能力上位でなければ不利なのだろう。
8着オフトレイル(父Farhhファー)、9着オールナット(父サトノダイヤモンド)は、これでたちまち慣れてくると思えるが、今回は相手が強かった。