血統面からも成長力に不安なし

共同通信杯を制したマスカレードボール(撮影:下野雄規)
近年の皐月賞を展望するうえで最も重要な路線重賞「共同通信杯」。2013年のメイケイペガスターと並ぶレースレコードタイの1分46秒0で快勝したのは、1番人気に支持されたマスカレードボール(父ドゥラメンテ)だった。
そのメイケイペガスター(父フジキセキ)は気性面で難しすぎるところがあって、続く若葉Sも、皐月賞も凡走しているが、流れの落ち着きがちな共同通信杯がこんな速いタイムで決着することはめったにない。昨年の皐月賞をレースレコードの快時計1分57秒1で勝ったジャスティンミラノの共同通信杯快勝は1分48秒0(レース上がり33秒1)だった。
今回の前半1000m通過は「60秒0」。前半スローになることが多いレースなので、例年より多少は速かったものの(先頭を争ったレッドキングリー、ワンモアスマイルは8着、9着に失速)、東京の1800mとしては普通の平均ペースの範囲である。
光ったのは後半の4ハロン「11秒8-11秒5-11秒5-11秒2」。上がり「46秒0-34秒2」。スローではない流れを途中から3番手で追走し、加速ラップを33秒7でまとめたマスカレードボールの内容は十分にクラシック候補の中身だった。
これで左回りの芝は[3-0-0-0]。一方、右回りでコーナー4回のホープフルS2000mではコーナーを気にしたか、後方のまま11着(1秒2差)に大敗しているので、このあと「皐月賞に直行」の展望は明言されなかったが、共同通信杯をこの好内容で快勝したのだから、もちろん次走は第一冠の皐月賞になるはずだ。
父ドゥラメンテは共同通信杯2着から直行した皐月賞1着、日本ダービー1着。距離にはまったく死角はない。ファミリーにはマイラー型が多いが、母、祖母に配された種牡馬はディープインパクト(23年から2年連続BMSランキング1位)、ホワイトマズル(牝系に入って中距離タイプに強い影響力)。成長力に不安はない。
2012年にゴールドシップが「共同通信杯→(直行)皐月賞制覇」を達成したのを起点に、皐月賞に出走するスケジュールは変化し、昨年までの13年間、約半数の7頭の皐月賞馬が共同通信杯からの直行馬であり、3着以内の直行馬は合計11頭にも達する。
2着に突っ込んだカラマティアノス(父レイデオロ)は、この日、インを突いた馬の好走例が多かったのを意識したように終始インぴったりの絶妙なコース取り。一旦は先頭に並ぶシーンもあって、上がり33秒4。最後は勝ち馬に屈し、マスカレードボールの方に余力があった印象はあるが、1分46秒1はレース史上3位の快時計だ。
父レイデオロは2017年のダービー馬。母ダンサール(父ハーツクライ)は種牡馬サトノフラッグ(弥生賞馬)と4分の3同血の姉。こちらもクラシックタイプ。1戦ごとにパワーアップしている。さらに成長してくれるはずだ。
3着リトルジャイアンツ(父トーセンラー)は、好スタートから下げて最後方に近い位置取り。直線大外から上がり最速の33秒3で差を詰めたが、レース上がりが速すぎた。
現時点ではスケールで見劣った感もあり、2000m級の方がレースをしやすいのだろう。自在脚質なので、今後は戦法を変えてくるかもしれない。
4着ネブラディスク(父ドゥラメンテ)は、今回まだ2戦目。正攻法で勝ちに出たが、素質は互角でもさすがにいきなり厳しいレースになりすぎた。
好馬体の5着サトノカルナバル(父キタサンブラック)も果敢なレース運びで見せ場を作ったが、慣れてくれば平気だろうが、1800mは初距離。それが東京だけに苦しかった。