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共同通信杯制したマスカレードボール 牝系に隠された好相性のカギとは

  • 2025年02月17日(月) 18時00分
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血統で振り返る共同通信杯


【Pick Up】マスカレードボール:1着
 5世代を残して9歳の若さで早世したドゥラメンテ。現3歳はその最終世代で、マスカレードボールのほかに、ジュタ(若駒S)、エネルジコ(セントポーリア賞)、アスクシュタイン(コスモス賞)、ファイアンクランツ(札幌2歳S-3着)、ネブラディスク(共同通信杯-4着)などが出ています。

 ドゥラメンテは現役時代、皐月賞と日本ダービーの二冠を制覇。ちょうど10年前の共同通信杯では、単勝1.8倍の断然人気に推されたものの、リアルスティールに半馬身差をつけられて2着に敗れました。マスカレードボールは父の雪辱を果たしたことになります。

 母マスクオフはビハインドザマスク(スワンSなど重賞3勝)の娘で、繁殖牝馬としてすでに、マスクトディーヴァ(阪神牝馬S、ローズS/父ルーラーシップ)、トゥーフェイス(オープンクラス/父モーリス)を産んでいます。1戦1勝で引退したスガオノママデ(父ハービンジャー)も、骨折することなく無事競走生活をまっとうしていれば、かなりの活躍が期待できました。

 母は「ディープインパクト×ホワイトマズル」。わずか14頭からスマートレイアー、ミッキーグローリー、カツジと3頭の重賞勝ち馬が誕生した組み合わせです。マスクオフは競走馬としては1勝にとどまりましたが、繁殖牝馬として非凡な才能を発揮しました。その好相性のカギは、ディープインパクトとダンシングブレーヴ(ホワイトマズルの父)のニックスにあり、ヘイロー、サーアイヴァー、ドローンという3つの相似な血を内包(3.5×5)していることにあります。マスカレードボールの場合、サンデーサイレンス3×3を通じてこれらを継続しています(サンデーサイレンスの父がヘイロー)。

 大敗したホープフルSは体調が本物ではなく、大外枠の不利もありました。皐月賞、日本ダービーの双方で好勝負に持ち込めるはずです。

血統で振り返るクイーンC


【Pick Up】エンブロイダリー:1着

 父アドマイヤマーズは、初年度産駒の血統登録頭数がわずか62頭。サートゥルナーリアの142頭、ナダルの98頭に比べるとかなり少ないのですが、JRAファーストシーズンサイアーランキングで3位に食い込みました。

 種牡馬能力と新馬戦の成績は、個人的に強い相関関係があると考えているのですが、アドマイヤマーズの新馬戦連対率は先週終了時点で30.4%。この数字はかなり優秀で、種牡馬アドマイヤマーズの高い能力を端的に表していると思います。

 牝馬のパフォーマンスが優れているのが特徴で、エンブロイダリーのほかに、ナムラクララ(紅梅S)、ジャルディニエ(アスター賞)、ルージュラナキラ(つわぶき賞)などが出ています。現時点で東京芝を得意としており、連対率は40.0%。中山の10.5%とは対照的です。

 初勝利を挙げたデビュー2戦目の新潟芝1800mは、東京コースと同じく直線の長い左回りコース。勝ちタイム1分45秒5はレコードタイムでした。

 3代母ビワハイジは、マンハッタンカフェのいとこにあたり、ドイツ血統にルーツを持つ名血です。現役時代にエアグルーヴを破って阪神3歳牝馬S(現在の阪神JF)を制覇しました。繁殖牝馬としても、年度代表馬ブエナビスタ、阪神JFの勝ち馬ジョワドヴィーヴル、重賞3勝馬アドマイヤオーラなど6頭の重賞勝ち馬を産んでいます。孫以降の代が重賞を勝ったのは初めて。母ロッテンマイヤーは9年前に当レースに出走して3着と敗れました。

 父アドマイヤマーズは香港マイルなど3つのマイルGIを制したのですが、産駒は距離の融通性があるので、おそらくは2400mのオークスでも問題ないタイプでしょう。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【シングスピール】
 イギリスを拠点に世界各国へ遠征し、英インターナショナルS、ジャパンCなどGIを4勝しました。

 名種牡馬ラーイ、本邦輸入種牡馬グランドオペラ(メイセイオペラの父)の半弟。サドラーズウェルズの直系の孫ですが、母が米最優秀古馬牝馬にも選出されたカナダの歴史的名牝グローリアスソングで、母の父がヘイローというスピード型。したがって、日本の軽い芝にも適応しました。

 母グローリアスソングの全弟に米最優秀2歳牡馬デヴィルズバッグ(タイキシャトルの父)、同じく全弟に北米チャンピオンサイアーのセイントバラードがいるほか、自身の姪にハルーワソング(ヴィルシーナ、ヴィブロス、シュヴァルグランなどの祖)、同じく甥にダノンシャンティがいるなど、このファミリーの活力は瞠目すべきものがあります。

 母方に入るスピードの影響で、サドラーズウェルズ系にしては素軽さがあり、日本で重賞を勝った3頭、アサクサデンエン、ローエングリン、ライブコンサートは、いずれもマイル前後を得意としました。ローエングリンの仔ロゴタイプは、皐月賞、安田記念、朝日杯FSを制し、種牡馬としてミトノオー、オメガギネス、ラブリイユアアイズなどを出しています。

 シングスピールの娘は繁殖牝馬として成功し、日本でもシンハリーズ、プチノワール、サマーハ、デュプレなどが優れた産駒を出しました。また、ロマンチックウォリアー、バーイード、アドマイヤマーズの2代母の父でもあり、母方に潜ってもその影響力に陰りは見られません。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「去勢馬は高齢まで活躍しやすくなる?」

 去勢により、雄性ホルモンの分泌が抑えられ、気性面の改善、体重増加の抑制が期待できるので、競走寿命が延びるという効果があるようです。たとえば、アメリカにおける歴史的セン馬(去勢された馬)は、ジョンヘンリー=9歳、ケルソ=9歳、フォアゴー=8歳と、いずれも高齢まで現役生活を続けています。日本では9歳以上でJRAの平地重賞を勝った馬は4頭いますが、そのうちの2頭(アサカディフィート、エポワス)はセン馬です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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