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ケンタッキーダービー戦線に大きな動き 有力候補が軒並み期待を裏切る事態に

  • 2025年03月05日(水) 12時00分
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新たな注目を集める馬とは


 本番まで2カ月となった米国のケンタッキーダービー戦線に、大きな動きがあったのが先週だった。ニューヨーク州、フロリダ州、カリフォルニア州の3か所で行われたケンタッキーダービーポイント指定競走で、いずれも1番人気に推されていた馬が敗退。すなわち、その段階で「ケンタッキーダービー有力候補」と目されていた馬たちが、軒並み期待を裏切ったのである。

 中でも、大きな衝撃をもたらしたのが、1日にサンタアニタ競馬場で行われたG2サンフェリペS(d8.5F)だった。

 ここで、オッズ1.4倍の圧倒的1番人気に推されていたのが、ボブ・バファート厩舎のバーンズ(牡3、父イントゥミスチーフ)だった。3代母がG1テストS(d7F)など2つのG1を制したドリームシュプリームという血統背景を持ち、23年のファシグティプトン・サラトガ1歳セールにてセッション2番目の高値となる320万ドル(当時のレートで約4億6099万円)で購買されたのがバーンズだ。

 バファート師が同馬のデビュー戦に選択したのが、11月27日にチャーチルダウンズ競馬場で行われたメイドン(d6.5F)で、アタマ差の辛勝ながらもここを制して緒戦勝ち。続いて出走したのが、1月4日にサンタアニタ競馬場で行われたG2サンヴィセンテS(d7F)で、バーンズはここを5.1/2馬身差で制し、無敗の重賞制覇を飾った。

 この結果を受け、ブックメーカー各社はケンタッキーダービーへ向けた前売りでバーンズを1番人気に支持し、ケンタッキーダービー・フューチャーウェイジャーのプール3(1月17~19日)でもプール4(2月14~16日)でも、個別の馬で1番人気に推されたのはバーンズだった。

 サンフェリペSに出走したバーンズにとって、唯一懸念材料と言われていたのが、ここまでの2戦がいずれも距離7F以下だったことで、果たして初めて体験する2ターンに対応できるかが、カギと見られていた。

 発馬後100mほど進んだ辺りでハナに立ったバーンズは、単騎で逃走。直線を迎えて、脚色には余裕もあるように見えたが、バーンズを凌ぐ脚を繰り出したのが、道中4番手から末脚を伸ばしたジャーナリズム(牡3、父カーリン、4.1倍の2番人気)で、残り1Fでバーンズをとらえると、最後は1.3/4馬身突き放して優勝を飾った。

 バーンズは、3着馬には9.1/2馬身という大きな差をつけており、決して悲観する内容ではなかったと思うが、いかんせん期待の大きな馬だっただけに、3戦目での連勝ストップに、ファンからは落胆の声が上がっている。

 サンフェリペSを制したジャーナリズムは、デビュー2戦目で初勝利をあげたデルマー競馬場のメイドン(d8F)、重賞初挑戦初制覇となった前走G2ロスアラミトスフューチュリティ(d8.5F)に続く勝利で、西海岸ではこの馬がケンタッキーダービーを目指す代表格に浮上したとの声も聞かれている。

 アケダクト競馬場で行われたG3ゴーザムS(d8F)は、ニューヨーク産馬限定戦を3連勝しての参戦だった1番人気(2.45倍)のサンドデヴィル(牡3、父ヴァイオレンス)に3.1/4馬身差をつけて、フロリダ産馬のフラッドゾーン(牡3、父フロステッド)が優勝を飾った。

 1月4日にガルフストリームパーク競馬場で行われたフロリダ産馬限定メイドン(d6.5F)を5.1/2馬身差で制し、デビュー2戦目で初勝利を挙げての参戦だったのがフラッドゾーンだ。前走後、カタールの首長シェイク・タミムの競馬組織ワスナンレーシングが同馬をトレードで獲得し、B.コックス厩舎に移籍して迎えたのがこの一戦だった。

 一方、ガルフストリームパーク競馬場で行われたG2ファウンテンオブユースS(d8.5F)では、前走G3ホーリーブルS(d8.5F)を制しての参戦だった1番人気(2.9倍)のバーナムスクエア(牡3、父リアムズマップ)が4着に敗退。勝ったのは3番人気(4.2倍)だったゴドルフィンのソヴリンティ(牡3、父イントゥミスチーフ)だった。

 もともと関係者の間で期待が高かったのがソヴリンティ、2歳8月のデビューから連敗を喫したにもかかわらず、陣営は同馬の3戦目にチャーチルダウンズ競馬場のG3ストリートセンスS(d8.5F)を選択。ここを5馬身差で制して、重賞で初勝利を挙げていた。4か月の休み明けだったここも勝ち、2度めの重賞制覇を果たしたソヴリンティを、ケンタッキーダービー戦線の新たな主役と見るメディアも見受けられる。

 さて先週、ケンタッキーダービー戦線に地殻変動を起こした震源地は、米国だけではなかった。2月26日に英国のケンプトンパーク競馬場で開催されたのが、ケンタッキーダービーポイント指定競走の1つとなっているロード・トゥ・ケンタッキーダービー・コンディションS(AW8F)だった。

 ここで、オッズ2.1倍の1番人気に応えて、後続に4馬身差をつけて快勝したのがオペラバロ(牡3、父ガイヤース)だ。

 G1インターナショナルSなど3つのG1を制した20年に、欧州年度代表馬に選出されるとともに、ワールドベストレースホースに認定された父の、初年度産駒の1頭となる同馬。G1クリテリウムインターナショナル(芝1600m)2着馬アーンショウの甥にあたり、アルカナ8月1歳市場に上場されたところ、60万ユーロ(当時のレートで約9609万円)でゴドルフィンに購買された。

 C.アップルビー厩舎の一員となった同馬がデビューしたのが、今年の1月29日で、ケンプトンパーク競馬場のメイドン(AW8F)を8.1/2馬身差で快勝。これに続いて出走したのが2月26日のロード・トゥ・ケンタッキーダービー・コンディションSで、ここを勝ったオペラバロはダービーポイント20点を獲得した。

 ゴドルフィン所有馬で、年明けにデビューし、ケンプトンパーク競馬場のオールウェザーで連勝した馬と言えば、思い出すのは昨年のG1二千ギニー(芝8F)勝ち馬ノータブルスピーチで、ここまでのオペラバロのローテーションは、ノータブルスピーチに極似している。

 ノータブルスピーチは、4月第1週に同じくケンプトンパーク競馬場で行われた条件戦(AW8F)に出走し、そこを制して3連勝をマーク。その後に臨んだ二千ギニーに優勝し、クラシックが初芝だったという前例のないローテーションが、おおいに話題となった。

 デビュー以来の戦績を2戦2勝としたオペラバロを、ブックメーカー各社は、ケンタッキーダービーと同日にニューマーケット競馬場で行われるG1二千ギニー(芝8F)に向けた前売りで、オッズ8~11倍の2~3番人気に浮上させている。

 だが、現段階でオペラバロ陣営は、ケンタッキーダービー参戦もオプションの1つと捉えている模様だ。

 いよいよ熱を帯びてきたケンタッキーダービー戦線に、日本の皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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