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【スプリングS】ホープフルSでの経験が糧に ピコチャンブラックが粘り勝ち

  • 2025年03月17日(月) 18時00分
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皐月賞は血統背景も後押しに


重賞レース回顧

スプリングSを制したピコチャンブラック(撮影:小金井邦祥)


 前日からの雨が降り続き重馬場となった芝コースは、内、外の有利不利はないが、追い込みにくいコンディション。早めにスパートして、たとえ上がりはかかっても懸命に粘りこみを図った馬が上位を占める結果になった。

 勝ったピコチャンブラック(父キタサンブラック)は決して重馬場巧者とは思えないフットワークながら、前回のホープフルSと同じように好位の外を追走して、今回は強気に早め先頭のスパート。外から次々と後続に被せられるような形を避けたのが正解。自身の上がりは「38秒1-13秒1」に落ち込んだが、必死に粘り込むことに成功した。

 ホープフルSで揉まれて失速したのを苦い経験に、この中間、石橋脩騎手と入念なコンタクトをとって課題に向き合ったことが実を結んだ結果でもあった。この結果、12月の「ホープフルS」組から、1着馬クロワデュノール、2着ジョバンニ、3着ファウストラーゼン、そして当時3番人気(13着)だったピコチャンブラックの4頭が皐月賞に出走可能な上位順位となった。

 馬場が悪すぎたので、レース内容(時計など)の比較は不可能だが、ピコチャンブラックは精神面でタフになり、勝負強さを増し、GIホープフルSで高い支持を得た期待馬らしいところを発揮した一戦だった。

 2015年にこのスプリングSを勝った父のキタサンブラックは、皐月賞3着。2004年にスプリングSを制した祖父ブラックタイドは皐月賞16着だが、母の父に登場する2003年のスプリングSの勝ち馬ネオユニヴァースは、皐月賞、日本ダービーの二冠を制している。

 また、ピコチャンブラックの3代母は名牝サンプリンセス(IRE)。同じファミリーで、祖母にサンプリンセスを持つ2009年のスプリングSの勝ち馬アンライバルド(父ネオユニヴァース。ピコチャンブラックの母の全兄)は皐月賞を勝っている。そんな血統背景が前面に出てくるとしたら、ピコチャンブラックのこの春は侮れない。快速タイプとはいえないが、少しタイムのかかる年もあるこの時期の中山2000mは合うはずだ。

 伏兵フクノブルーレイク(父ウインブライト)が追い込みにくい馬場を読んで4コーナー手前から一気のスパート。勝てるかと思えたシーンもあったが、残念ながらあと一歩及ばず2着惜敗。4戦目で未勝利脱出の地味な存在だったが、種牡馬ウインブライト(その父ステイゴールド)産駒らしくタフな成長力がある。香港のG1を2勝もしたウインブライトに重馬場の経験はないが、ステイゴールド系なら(総じて)、渋い馬場は苦にしない可能性がある。また、3代母エリモエクセル(オークス馬)の一族はタフだ。

 3着キングスコール(父ドゥラメンテ)は、8カ月の休み明けで今回が2戦目。出負けしたうえに、勝ったピコチャンブラックと一緒に進出しかかった3コーナー過ぎからずっと手応えは悪く、直線は馬群に飲み込まれるかと見えたが、最後まで音を上げずにがんばって3着確保。直前に1番人気になったが、明らかに完調手前だった。この内容は、負けはしたが、1着、2着馬に少しも見劣らない。反動がなく調子を上げて皐月賞に出走できるようなら、ドゥラメンテの最終世代らしい快走まで期待できる。

 4着マテンロウバローズ(父ロジャーバローズ)は前半こそ好位にいたが、道中ずっと馬場を苦にしたかスムーズな追走ではなかった。インを狙った直線も、この馬場状態だけに切れ味全開とはいかなかった。

 好馬体の光ったダノンセンチュリー(父フィエールマン)は、この馬場で最内枠なので自然とハナを切ることになったように映ったが、実際は前半かなり気負っていた。息を入れたい3コーナー手前からピコチャンブラックに並ばれて、「11秒7-11秒7」とピッチが上がった展開も、まだ2戦目だけに苦しすぎた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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