ヴィクトリアマイルには血統の後押しも

愛知杯を制したワイドラトゥール(撮影:高橋正和)
「愛知杯」は何度も施行条件の変遷があったことで知られるが、3月に移って短距離1400mの別定戦になった今回、「10、3、1」番人気の決着。1月に移行して4歳以上になった2016年が「8、5、4」番人気の波乱。牝馬限定となった2004年も「9、5、8」番人気の難しい結果。また、初めて小倉で行われた1999年は「8、4、3」番人気の決着など、施行条件が変わると、前年の好走馬がいないだけに波乱がもたらされている。今回も2月の「京都牝馬S」を受け継いだが、同じ別定の1400mでも状況は同じではなかった。
同じ芝1400mでも、京都や、東京コースだとハイペースになることは少ないが、新しい「愛知杯」になってフルゲート18頭立て。さらに中京の芝1400mに出走経験のある馬はわずか3頭だけ。その3頭はたまたま勝ってはいたが、比較は難しかった。
レース全体のペースは前後半「32秒7-(11秒5)-36秒0」=1分20秒2。全体時計は予測通りだが、前日の「ファルコンS」の「34秒4-(11秒6)-35秒0=1分21秒0」と比べると、3歳限定戦と4歳以上の古馬の違いはあっても、愛知杯は前後半の3ハロンに3秒3もの差が生じた著しい前傾ペースだった。
快勝した4歳ワイドラトゥール(父カリフォルニアクローム。エーピーインディの孫世代)は10戦目で初重賞制覇。父の日本での初年度産駒だった。新種牡馬ランキング6位(全国で18勝)だった父は、2014年のケンタッキーダービーなど中距離のダート9-10FのG1を7勝。2014年、2016年のエクリプス賞年度代表馬。大変な名馬だが、たまたま芝はハリウッドダービー9Fの1勝だけなので芝適正に懐疑的な一面があった。だが、日本での初年度産駒から芝1400mを1分20秒2で快勝した馬が出現して、評価急上昇がある。
ハイペースを予測し、前半はかなり差のある後方3番手あたりに控えた鞍上の北村友一騎手の読みは大正解。直線で外に回ると、とても426キロの小柄な牝馬とは思えない強烈な爆発力を全開させた。陣営は5月のGIヴィクトリアマイルに向かうことを明言している。藤原英昭調教師は、ストレイトガールで連勝するなどヴィクトリアマイル3勝の実績を持っている。1400mより1600mの方があっている可能性が高い。半兄ワイドファラオ(父ヘニーヒューズ)は、芝1600mのニュージーランドTと、ダート1600mのユニコーンS、かしわ記念を制している。なお、今週の高松宮記念に出走予定のカンチェンジュンガ(父ビッグアーサー)の母は、この2頭の半姉にあたる。
2着シングザットソング(父ドゥラメンテ)も前半は控え気味の追走。インぴったりから離れず通ったコース取りが絶妙だった。直線は鈍った馬を避けるように少しコースを変えたが、最後は抜け出したカピリナ(父ダンカーク)のインを狙ってしぶとく2着を確保した。同馬も1400mにとどまらず、マイル戦にも持ち時計がある。
1番人気のカピリナは今回が初めての1400m。中位のインから抜け出したが、これまで1200mまでの経験しかなかったのが痛い。まして今回のハイペースが最後になって応えた印象が強い。まだ4歳馬。これまでは1200m専門だったが、この厳しい1400mを乗り切ったのだから、マイル戦までこなせるかもしれない。
2番人気のクランフォード(父ブリックスアンドモルタル)は、このコースの1400mにコースレコード(JRAレコードタイ)を持つ注目馬であり、今回と同じようなペースを経験していたはずだが、今回は最初から追走に余裕がなかった。すんなり2-3番手を追走できないと、追い比べになっては苦しいタイプか。
上がり最速の34秒4で6着に突っ込んだスウィープフィート(父スワーヴリチャード)は、慣れてくれば1400mに対応できると思えるが、さすがにオークス2400mのあと長期休み明けでスプリント戦はきびしかった。次走は大きく変わってくれる。