
単勝オッズ5.7倍(4番人気)のサンライズアースが優勝(c)netkeiba
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
1番人気馬が期待を裏切りがちである点をどう見るか
AIマスターM(以下、M) 先週は阪神大賞典が行われ、単勝オッズ5.7倍(4番人気)のサンライズアースが優勝を果たしました。
伊吹 圧勝と言って良いでしょう。五分のスタートを切って先行争いに加わり、マコトヴェリーキー(2着)らの出方を窺いながら先頭へ。後続に数馬身ほどの差をつけて逃げる展開となり、2周目の向正面まで淡々とレースを引っ張っています。残り1000m地点のあたりで一旦はマコトヴェリーキーに先頭を譲りましたが、その後もマコトヴェリーキーを積極的に追いかけ、4コーナーでは3番手以下の各馬を引き離して併走する形に。ゴール前の直線に入ってすぐマコトヴェリーキーを突き放し、後方から伸びてきたショウナンラプンタ(4着)、ブローザホーン(3着)に対してもセーフティリードを保ったまま入線しました。最初から最後までレースの主導権を握っていたうえ、上がり3ハロンタイム(35秒0)は2位のショウナンラプンタ(35秒2)や3位のブローザホーン(35秒5)を上回る単独トップ。こんな競馬をされてしまったら、他の馬はなす術がありません。
M サンライズアースは重賞初制覇。昨年の日本ダービーで4着となった実績があるものの、前走の早春Sは2着どまりで、格上挑戦の身だった馬です。
伊吹 幸いにも私は本命マコトヴェリーキー、対抗格ブローザホーンで高目の3連複を引っ掛けることができたものの、正直なところサンライズアースがここまで突き抜けるとは思っていませんでした。“JRAの、平地の、2500m以上のレース”に出走したレイデオロ産駒は、先週終了時点で[4-4-2-9](3着内率52.6%)。なお、単勝回収率は102%に、複勝回収率は116%に達しています。2024年10月20日の菊花賞(3歳GI・京都芝3000m外)でも単勝オッズ23.6倍(7番人気)のアドマイヤテラが3着に食い込んでいますし、長距離向きの血統と見て良いのではないでしょうか。
M そうなると、このまま無事に天皇賞(春)を使ってくるようであれば目が離せませんね。
伊吹 もともと、半兄セラフィックコールがダートグレード競走を3勝、半妹テリオスララが2024年の阪神JFで3着に健闘している良血馬。2代母がハルーワソングなので、ヴィブロス・シュヴァルグラン・ヴィルシーナのGIウイナー3きょうだい(それぞれ母ハルーワスウィート、2代母ハルーワソング)も近親にあたります。父系と母系のイメージからは明らかに長距離のビッグレース向きで、天皇賞(春)はいかにも合いそうな舞台。オッズにもよりますが、やはり相応に高く評価した方が良さそうです。
M 今週の日曜中京メインレースは、上半期のスプリント王決定戦と位置付けられているGI競走、高松宮記念。昨年は単勝オッズ9.6倍(6番人気)のマッドクールが優勝を果たしました。その2024年は3連単の配当が5万8740円どまりだったものの、2022年の3連単278万4560円、2019年の3連単449万7470円など、高額配当が飛び出した年も少なくありません。
伊吹 2021年こそ3連単9770円の低額配当決着でしたが、それでも2019年以降の高松宮記念における3連単の配当は、平均値が137万2757円、中央値が44万3000円。波乱含みの一戦と見るべきでしょう。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、1番人気馬の3着内率が30.0%にとどまっています。
伊吹 2番人気や3番人気の馬はそれなりに堅実だったものの、上位人気馬を安易に信頼しないよう心掛けた方が良いかもしれませんね。ちなみに、単勝7番人気から13番人気の馬は2015年以降[3-1-2-64](3着内率8.6%)、単勝14番人気以下の馬は2015年以降[0-0-2-48](3着内率4.0%)でした。連軸に指名する馬の人気次第では、目いっぱい手広く構えても良いのではないでしょうか。
M そんな高松宮記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ママコチャです。
伊吹 面白いところを挙げてきましたね。実績上位ですが、人気の中心ということはなさそう。
M ママコチャは2023年のスプリンターズSを制しているGIウイナー。さらに、前哨戦のオーシャンSを単勝1番人気の支持に応えて完勝しています。もっとも、昨年の高松宮記念は8着どまり。6歳の牝馬ですし、今回は半信半疑という方が多いかもしれません。
伊吹 2023年のスプリンターズSから前走のオーシャンSまで、丸一年以上に渡り勝ち星から遠ざかっていた点も気掛かりですね。もっとも、Aiエスケープはまったく問題ないと見ている模様。この見解を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の信頼度を測っていきたいと思います。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりでしょうか?
伊吹 基本的に前走好走馬が強いレースである点は押さえておきたいところ。2020年以降の3着以内馬15頭中12頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.2秒以内でした。
M なるほど。直近のパフォーマンスを素直に評価した方が良さそうですね。
伊吹 おっしゃる通り。格の高いレースから直行してきた馬であっても、大敗直後の馬は強調できません。
M 前哨戦のオーシャンSを勝っているママコチャにとっては心強い傾向と言えます。
伊吹 あとは実績やコース適性もしっかりチェックしておいた方が良さそう。“前年以降の、JRAの、GIのレース”において2着以内となった経験がある馬は、2020年以降[3-3-1-14](3着内率33.3%)とまずまず堅実です。一方、この経験がなかったにもかかわらず3着以内となった8頭のうち4頭は、“前年以降の、中京の、重賞のレース”において“着順が4着以内、かつ上がり3ハロンタイム順位が5位以内”となった経験のある馬でした。
M どちらの条件もクリアしていない馬は、思い切って評価を下げるべきかもしれませんね。
伊吹 2024年3着のビクターザウィナーも、同年にGIのセンテナリースプリントCを勝っていた馬。引き続き、ビッグレースで優勝を争ったことのある馬や、中京向きの差し馬を重視するべきでしょう。
M ママコチャは2024年以降のGIで連対を果たしていないうえ、中京の重賞で出走メンバー中5位以内の上がり3ハロンタイムをマークしたこともない馬。残念ながらこの条件には引っ掛かっています。
伊吹 さらに、同じく2020年以降は、前走で出走メンバー中2位以内の上がり3ハロンタイムをマークした馬と、内寄りの枠に入った馬の活躍が目立っていました。
M 枠順に恵まれた馬でない限り、先行馬は疑ってかかった方が良さそうですね。
伊吹 基本的に差し有利なレースだと思うのですが、近年は内枠の馬がよく穴をあけていますから、好枠を引き当てた馬はしっかりマークしておきましょう。
M ママコチャは前走の上がり3ハロンタイム順位が5位。枠順の助けが欲しい一頭と言えます。
伊吹 正直なところ、私は別の馬を連軸に据えるつもりでした。もっとも、今回は他の出走予定馬も何かしらの不安要素を抱えていますし、枠順やオッズ次第では重いシルシを打つ必要がありそう。Aiエスケープが有力視しているのであれば尚更です。諸々の要素が上手く噛み合えば、妙味ある配当を演出してくれるのではないでしょうか。