本稿がアップされる3月27日、山手線の高輪ゲートウェイ駅周辺の「高輪ゲートウェイシティ」が一部開業する。それを報じた読売新聞に、JR東日本執行役員の「イノベーションが育つ街にしたい」というコメントが載っていた。さらに、JR東日本社長の「(略)様々なイノベーションを作り出す街にしていく」という言葉も紹介されている。
街で「イノベーションが育つ」とか、街が「イノベーションを作り出す」とはどういうことなのか。「イノベーション」は、ネットで検索してみると、「技術革新」「新しいものを創造すること」「刷新すること」といった意味らしい。
なぜわざわざ横文字にするのか。とまれ、そういう言語感覚の人間たちが「高輪ゲートウェイ」という、長くて、意味の通じづらい駅名にしたことは事実である。
私は、JRに乗ってこの駅に停車したり、車でこの近くを通ったりするたびに、語感の似た「メイクデビュー」を思い出して嫌な気分になる。
さて、今週月曜日、3月24日に東京で桜(ソメイヨシノ)が開花した。日本気象株式会社の開花・満開予想によると、満開は日曜日、3月30日ごろだという。
この時期、いつも気になるのは桜花賞の日の咲き具合だ。同社の予想で近いエリアを見ると、大阪の開花予想日は3月29日(土)ごろ、満開予想日は4月5日(土)ごろとなっている。桜花賞は翌週の日曜日、4月13日だ。去年は、阪神競馬場の桜の満開と桜花賞の開催が4月7日となって一致した。それより1週遅い今年の桜花賞当日、仁川の向正面の桜並木はどんな様子になっているだろうか。
桜の散ったあとの桜花賞となると、レース名と実情とが乖離してしまうわけだが、翌週の皐月賞も、そうだ。「皐月」は旧暦の5月だが、1952年からは、基本的に4月に行われるようになった。
それらと事情は異なるが、アーリントンパーク競馬場の閉鎖に伴い、去年までのアーリントンカップが、今年からチャーチルダウンズカップという名で行われる。レース名が実情に合わなくなり、こちらはレース名を変えることになった。前身はかつてのペガサスステークスで、1988年にはオグリキャップ、翌89年にはシャダイカグラといった名馬が勝っている。
アーリントンCになってからも、2000年エイシンプレストン、01年ダンツフレーム、02年タニノギムレット、03年ウインクリューガーと、勝ち馬が4年連続GIホースとなり(エイシンプレストンはその前にもGI勝ちしている)、その後も、ジャスタウェイ、コパノリチャード、ミッキーアイル、ペルシアンナイト、ダノンスコーピオンといった勝ち馬がのちにGIを勝つ「出世レース」となっている。
レース名が変わって初めてのチャーチルダウンズCは、4月5日(土)に、おそらく満開の桜のもと、阪神芝1600mで行われる。
ほかに、今後、レース名が変わってしまいそうな重賞があるか眺めてみたら、いささか不謹慎だが、放送局や新聞社、通信社、私鉄の名がついているレースが心配になってきた。
そのなかでも、NHKマイルCのNHKは国営放送だから潰れないと思うが、NHK自体の名称が変わったら、レース名も変えざるを得ないだろう。NHKが「日本放送協会」をローマ字にした頭文字であることは言わずもがなだが、以前、NHKのディレクターが「うちは『日本薄謝(はくしゃ)協会』と呼ばれているんです」と話していた。理由もなくそんなことを言ったわけではなく、私へのギャラが安くなることの前振りだった。
ほかでは、京成杯、日経新春杯、東京新聞杯、共同通信杯、阪急杯、日経賞、毎日杯、京王杯スプリングC、京都新聞杯、ラジオNIKKEI賞、CBC賞、京成杯AH、神戸新聞杯、毎日王冠、京王杯2歳S、デイリー杯2歳S、東京スポーツ杯2歳S、京阪杯、中日新聞杯、朝日杯FSと、結構ある。
普段から何気なく口にしているレースなので、あらためて書き出すと、こんなにあるのかと意外な気もする。さらに「報知杯」「産経賞」「東海テレビ杯」などとつくレースもある。これだけメディア関連の会社が多いのは、競馬(の運営)における情報戦略の大切さを物語っているのか。
今回もまた、とりとめのない話になってしまった。