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【高松宮記念】サトノレーヴが春のスプリント王に J.モレイラ騎手の鮮やかな騎乗に導かれGI初制覇

  • 2025年03月31日(月) 18時00分
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注目馬が全力を出し切った見ごたえのあるレース


重賞レース回顧

高松宮記念を制したサトノレーヴ(c)netkeiba


 完全な良馬場とはいえないタフな芝コンディションが影響して、勝ち時計は1分07秒9「前後半33秒8-34秒1」にとどまったが、期待の注目馬が全力を出し切ったのではないかと思える中身の濃いスプリント戦が展開された。

 1番人気から5番人気までの上位人気馬が、みんな7着までに入線している。ペースうんぬん、少々タフな芝コンディションうんぬんではなく、大半の馬が持てる能力をほぼ出し切ったと感じさせた、見応えあるGIだった。

 快勝したサトノレーヴ(父ロードカナロア)は、最後の競り合いになって、さすがハイレベルの「香港スプリント」を0秒12差に持ち込んだ底力を爆発させた。陣営の仕上げも完ぺきに近かった。さらに、J.モレイラ騎手の見せた細心の騎乗も鮮やかすぎた。「直線の向かい風に影響を受けないように、途中までカベを作って行った」。すべてプラン通りのレースだったのだからすごい。

 中団より少し前のポケットに近い位置につけて直線に向くと、前には横に広がる馬群ができて決してスムーズではなかった。だが、外に回りながらスペースを探すとそこから猛然と伸びた。これでモレイラ騎手とのコンビ「1、3、1」着。スペースさえあれば追い出して鋭く伸びることを知り尽くしていた。

 父ロードカナロアは、秋のスプリンターズSを4歳時と5歳時に2連勝。母の父サクラバクシンオーも4歳時と5歳時に2連勝。サトノレーヴの芝1200mは[7-1-1-1]。絵に描いたようなスペシャリストとなった。このあとは招待を受けている4月27日の香港「チェアマンズスプリントプライズ」に参戦し、香港の最強スプリンターのカーインライジングと再び対戦する可能性が高い。雪辱を果たすのも夢ではない。さらには秋のスプリンターズSにも新チャンピオンとして出走することになるかもしれない。

 1番人気で0秒1差2着に惜敗したナムラクレア(父ミッキーアイル)は、残念ながらこれでスプリンターズS、高松宮記念を「5、2、3、2、3、2」着となってしまった。外枠のため少し置かれ、サトノレーヴを射程に入れた直線では、勝ち馬が抜け出したあとに進路を取らざるを得ない形になってしまった。上がり33秒3は最速。あまりにも勝ち運がないというしかないが、父ミッキーアイルも2つのスプリントGI「3、4、2、2」着だった。絶対に似て欲しくないところが似るのも遺伝の不思議なのか。

 上位馬の中では、もっともスムーズに流れに乗り、一瞬は勝ったかと思わせる好勝負に持ち込んだママコチャ(父クロフネ)。同じ6歳牝馬ナムラクレアとともに、まったく衰えなど見せなかったが、最後に少し鈍って0秒3差の3着。「最後までがんばりました。前の2頭が強かった」と、鞍上の川田将雅騎手は潔かった。

 4着トウシンマカオ(父ビッグアーサー)も直線鋭く伸びて、差のないところまで押し上げたので、先着した上位馬を讃えるコメントだった。上位4頭はすべて6歳馬。

 3番人気のルガル(父ドゥラメンテ)はスムーズな先行策から、直線に向いて一度は先頭に立ちかけたが、追い出して脚が鈍った。力強さを感じさせる馬体だが、この日のように力の要る芝コンディションは合わない印象が残った。

 連覇を狙ったマッドクール(父ダークエンジェル)は、重馬場の昨年は芝状態の悪くなかったインが味方したが、今年は見た目以上にインがタフなコンディションだった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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