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【桜花賞】エンブロイダリーが一冠目を制す スピードだけではないタフな馬場で見せた“総合力”

  • 2025年04月14日(月) 18時00分
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人気馬たちが実力を示したハイレベル戦


重賞レース回顧

桜花賞を制したエンブロイダリー(c)netkeiba


 稍重発表より少しコンディションが悪くなっていると思われた馬場状態のなか、刻まれた勝ち時計は1分33秒1「前後半の800mは46秒6-46秒5」の速い時計だった。

 レース直後の第一印象は、人気馬を中心に「上位を占めたグループは、予測されていたよりずっと高いレベルを示したのではないか」だった。勝ったエンブロイダリー(父アドマイヤマーズ)はスタート一歩。気合を入れて中位に押し上げたが、インで揉まれながら進路を探している。アルマヴェローチェ(父ハービンジャー)は途中から巧みに馬群の外に出したが、突っ込んで3着のリンクスティップ(父キタサンブラック)は、スタートで寄られてダッシュつかず前半は離れた最後方追走。雨馬場のフルゲート18頭立てだからこういう不測の事態はある。

 3コーナーあたりでは、エンブロイダリーはあのまま馬群に揉まれて凡走に終わるのではないかと映った。ところが、4コーナーを過ぎると馬群を割って一旦は内寄りから先頭のエリカエクスプレス(父エピファネイア)の内側を狙ったとみえたが、外から先頭に立つ勢いのアルマヴェローチェを視界に入れると、敢然と2頭の間に突っ込んだ。

 レコード勝ち2回(コースレコード、レースレコード)のエンブロイダリーは、軽快なスピードだけが武器ではなかった。思われていたよりタフな底力があった。もちろん、鞍上J.モレイラ騎手の冷静な手綱さばきは素晴らしかったが、このタフな馬場状態を1分33秒1(自身の上がり34秒0)で切り抜けた総合力は、軽快なマイラーにとどまらないだろう。ダイワメジャー系の父方からタフな体質、ドイツの名牝系から伝わるたくましさも備えていた。2400mのオークスとなると距離不安がささやかれそうだが、2000m級ならまず平気。前半のペース次第では、オークスの2400mもこなせるかもしれない。父母両系の一番いいところを受け継いでいる気がする。

 2着アルマヴェローチェは、惜しくも最後に差し負けしたが、12キロ増えて一段と見栄えのする好馬体に成長していた。少しも重苦しくなかった。マイル適性の高さは母方からくる長所だが、父はタフな中距離タイプを数多く輩出するハービンジャー。活力をロスしない充電期間は十分に取っている。2400mのオークスで逆転したい。

 3着リンクスティップは、スラリと見せる体型から、渋馬場のマイル戦は厳しかったはずだが、オークスなら…と思わせるスケールあふれるレースを展開した。はさまれて置かれた前半600m通過地点では大げさではなく先頭から15馬身以上は離れていた。

 先頭のエリカエクスプレスの前半600m通過は34秒5。するとリンクスティップのそれは推定37秒前後。荒っぽい推測だが、この馬は外々を回りながら後半の1000mを、推定「56秒台中盤」で乗り切って1分33秒5の走破時計になる。3コーナー過ぎからあれだけ強引にまくって、ゴール前もまだ伸びているから驚く。オークスでの期待は高まった。

 1番人気のエリカエクスプレスは、あまりにもスタートが決まりすぎた。内の2番枠で雨の渋馬場。下げる手はない。楽にハナを切って前半「46秒6-1000m通過58秒6」は、馬場を考慮すればやや速い程度。レースの後半が46秒5なのでオーバーペースとはいえない。だが、キャリア2戦だけ。地元とはいえ初コース。数字が示す以上に息の入れにくい流れだったのだろう。若さを見せつつ大バテしたわけではなく5着入線。間隔をあけて目標のレースにマトを絞る手法が多くなったが、この馬に限らずこの手法がいつも正解に出るとは限らない。また、これで13年連続で桜花賞馬は馬体重「460キロ以上」の記録が続くことになった。今年は4着までみんな470キロ以上だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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