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新種牡馬でGI制覇一番乗り エンブロイダリーの出現を機に第二の波が到来?

  • 2025年04月14日(月) 18時00分
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血統で振り返る桜花賞


【Pick Up】エンブロイダリー:1着
 父アドマイヤマーズは新種牡馬のなかでGI制覇一番乗りです。現3歳の種牡馬別JRA獲得賞金ランキング(24年6月~25年4月13日)では6位に食い込んでいます。ちなみに、1~20位のなかでアドマイヤマーズの血統登録頭数62頭、JRA出走頭数49頭はいずれも最少で、少ない頭数でこれだけの実績を残しているのは高く評価できます。

 勝馬率36.7%もきわめて優秀。ナダルの53.6%は異次元すぎて比較にならないとはいえ、前述のランキングの1~3位、キズナ(36.2%)、エピファネイア(33.3%)、サートゥルナーリア(32.7%)を上回っています。

 3代母ビワハイジは、マンハッタンカフェのいとこにあたり、ドイツ血統にルーツを持つ名血です。現役時代にエアグルーヴを破って阪神3歳牝馬S(現在の阪神JF)を制覇しました。繁殖牝馬としても素晴らしく、年度代表馬ブエナビスタ、阪神JFの勝ち馬ジョワドヴィーヴル、重賞3勝馬アドマイヤオーラなど6頭の重賞勝ち馬を産んでいます。孫以降の代が重賞を勝ったのはエンブロイダリーが初めて。2014年4月にサングレアルがフローラSを勝ってから、この牝系の重賞勝ちは10年以上途絶えていました。エンブロイダリーの出現を機に第二の波がやってくるかもしれません。

 アドマイヤマーズ産駒は東京芝で連対率38.1%と抜群の成績を挙げており、産駒は距離の融通性があると思われるので、オークスの適性は問題ないタイプでしょう。

血統で振り返るニュージーランドトロフィー


【Pick Up】イミグラントソング:1着
 父マクフィは英2000ギニーとジャックルマロワ賞を勝ったヨーロッパの一流マイラー。2011年に種牡馬入りし、2017年から日本で供用されています。JRAではすでにオールアットワンス(アイビスSD2回)とヴァルツァーシャル(マーチS)が重賞ウィナーとなっています。

 基本的にはスピードの持続力で勝負するタイプ。それゆえにダートも得意としており、馬場別の勝利数は芝46勝、ダート85勝。ヨーロッパ血統ながらパワーを帯びたタイプです。

 イミグラントソングが芝のマイル戦で切れる脚を使ったのは、母の父ディープインパクトの影響でしょう。

 ディープインパクトを父に持つ繁殖牝馬は、ダートを得意とする輸入種牡馬と交配し、芝向きの優れた産駒をコンスタントに出しています。デクラレーションオブウォー産駒のシランケド(中山牝馬S)、アジアエクスプレス産駒のピューロマジック(葵S、北九州記念)、ディスクリートキャット産駒のオオバンブルマイ(京王杯2歳S、アーリントンC)、そしてイミグラントソングと同じ「マクフィ×ディープインパクト」のオールアットワンス(アイビスサマーダッシュ2回)など。

 父マクフィはシャリーフダンサー≒グリーンデザート4×2で、ディープインパクトの母の父アルザオがこれらとよく似た血統構成。したがって、イミグラントソングとオールアットワンスは、シャリーフダンサー≒グリーンデザート≒アルザオ5・3×4という相似な血のクロスを内包しています。

 マクフィを母の父に持つ馬のなかで唯一の重賞勝ち馬であるパラレルヴィジョン(ダービー卿CT)、2番目に出世したオウバイトウリ(3勝クラス)は、それぞれの父がキズナ、リアルスティールなので、いずれもディープインパクトを抱えています。つまり、前述の相似な血のクロスを内包しています。マクフィとディープインパクトの組み合わせは注目です。

■知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【ドバウィ】
 わずか1世代、56頭の産駒を残して早世した名馬ドバイミレニアムの忘れ形見。ジャックルマロワ賞、愛2000ギニー、愛ナショナルSと3つのG1を勝ったマイラーで、引退後はゴドルフィンの屋台骨を支える大種牡馬となりました。サドラーズウェルズ、ヌレイエフ、デインヒルといった主流血統を持たないので、それらの血があふれかえっているイギリスでは貴重な存在です。2010年にイタリア、2015年にフランス、2022年に英愛のチャンピオンサイアーとなっています。

 カルティエ賞年度代表馬のガイヤースをはじめ、ポストポンド、トゥーダーンホット、マクフィ、レベルスロマンス、モダンゲームズ、ユビアーなど多くの活躍馬を出しています。距離の融通性のある芝血統で、配合によってマイルから2400mまでこなし、時計の速い軽い芝にも対応力があります。日本ではモルジアナやティップトップのようにダート向きの仔もいます。

 ナイトオブサンダー、ザラック、トゥーダーンホットなどの後継種牡馬が成功しており、日本ではマクフィ、モンテロッソ、ベンバトルが供用されています。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「サンデーサイレンスを経由しないヘイロー系は存続している?」

 存続しています。世界的にはそれほど希少でもなく、まだまだ続いていきそうです。

 日本ではデヴィルズバッグの経た系統、タイキシャトルとロージズインメイのラインが健在です。タイキシャトルの息子メイショウボーラーとダイシンプラン、前者の息子ニシケンモノノフは現役種牡馬です。ロージズインメイの息子ドリームバレンチノも現役です。

 サザンヘイローを経たモアザンレディは、アメリカやオーストラリアで多くのG1馬を出しました。その息子でオーストラリアのクイーンズプレートを勝ったギミザグリーンライト(Gimmethegreenlight)は、南アフリカへ渡って二度チャンピオンサイアーとなりました。オーストラリアで供用されたモアザンレディの息子、セブリング(Sebring)とベターザンレディ(Better Than Ready)も悪くない成績を残しています。

 この他、アメリカ、アルゼンチン、ウルグアイにも少数ではありますが系統が存続しています。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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