
▲話題の「鐙の長さ」を深堀り!(撮影:福井麻衣子)
3月に公開され、大きな反響を呼んだ「20期生スペシャル動画」。今回は、そこでも話題になった「鐙の長さ」について深堀りします。
かつては「短い鐙がカッコいい」とされ、川田騎手も“正座”と表現するほど短く乗っていましたが今では比較的長めになったといいます。しかし、一方では津村騎手のように今も変わらないジョッキーも。こうした多様性が生まれた背景には、日本競馬の特殊さと目指す先の変化が関係していると分析。「長い」「短い」それぞれの利点と欠点に触れながら、日本競馬の“変遷”についても辿ります──。
20期生スペシャル動画はこちら▼
【川田将雅と競馬学校第20期生 大集合!ここでしか聞けないスペシャルトーク!(取材・構成=不破由妃子)
「正座」の時代から一気に伸ばした理由とは?
──ちょうど1カ月前になりますが、川田さんがアンバサダーを務めるサントリーの公式YouTubeチャンネル(第一部)とnetkeibaTV(第二部)で、現役の20期生(上野翔騎手、川田将雅騎手、丹内祐次騎手、津村明秀騎手、藤岡佑介騎手、吉田隼人騎手)が一堂に会したスペシャル動画が公開されましたね。「丹内さん」というワードが数日間トレンド入りするなど、SNSでも大バズリでした。
川田 一部も二部も各々自由に喋り続けて、グダグダでしたけどねぇ(笑)。楽しんでもらえたならよかったです。
──同期ならではのワチャワチャ感が最高でした! とはいえ、ジョッキー同士にしかできない話題も盛りだくさんで、なかでもSNSを中心に多くのファンが興味を示していたのが、「鐙の長さ」の話。なので今回は、そこをもうちょっと掘り下げてみたいなと思いまして。一昔前までは「短い鐙で乗るのがカッコいい」とされていましたが、今は短い人もいれば長い人もいて、乗り方に多様性が生まれていますよね。それぞれのメリットとデメリットや、川田さんのキャリアにおける「鐙の長さ」の変遷なども知りたいです。
川田 動画のなかで、僕が津村に「馬の上で座っているときって、正座しているようなもんやろ?」と言いましたが、それだけ津村は鐙の長さが短いということ。でもね、僕も最初はそれくらい短かったんですよ。
──今の川田さんは、どちらかというと長めですよね。
川田 全体的に見れば、長めの部類に入ると思います。でも、僕にも津村と同じように「正座」の時代があった。初めて重賞を勝った頃(2006年・小倉大賞典・メジロマイヤー)など、まさにそうですね。そこから少しずつ伸ばしていったんですけど、あるときを境に、ガン! と一気に伸ばして。
──それはなぜですか?
川田 馬を抱えて乗りたかったから。乗り方をガラッと変えるために、一度極端な変化を起こしてから習得していくという方法を取った。そのほうが習得するスピードが早くなると感じたので。
──「馬を抱えて乗る」というのは、首や前躯を起こして走らせるということですか?
川田 擬音でのニュアンスになりますが、馬の上でサラッと乗るんじゃなく、グッと乗る感じです。グッと乗りながらバランスを作りに行くので、形としては首や前躯を起こすような感じになりますね。鐙を伸ばすと、膝から下の馬との接地面が増えるのはわかります?
──わかります。馬の背中を膝から下で挟んでいるイメージです。
川田 実際に膝から下全体で挟み続けているわけではないのですが、馬との接地面が増えることで、より馬を掴めるんですよ。よりコントロールが利きやすくなる。もう25年以上前ですが、地方のジョッキーが乗りにくるようになって、次にヨーロッパの騎手が短期免許で頻繁に乗りにくるようになって、JRAのジョッキーも含め、関係者がいろんなものを知った結果、日本が目指す競馬が変わっていった。昔はアメリカ競馬こそがすべてでしたが、そこにヨーロッパのスタイルが入ってきたことで、乗り方のバリエーションも増えたということですね。
──簡単に言うと、アメリカンは鐙が短くて、ヨーロピアンは鐙が長い。でも、日本のジョッキーの場合、短い人もいれば長い人もいて、どちらのタイプでも活躍できる。
川田 どちらの良さも生きるというのは、ちょっと特殊というか、世界のなかでも日本の競馬は独特なものがあると思います。ただひとつ言えるのは、