
▲ミッキーカプチーノの今に迫ります(c)netkeiba
あの“未完の大器”は今──。22年12月3日、中山競馬場で行われた葉牡丹賞。彼は好位からレースを進めると、異次元の脚で直線鋭く伸びて3馬身半差の快勝を挙げました。この走りは「来年のクラシック候補誕生!」と多くのファンが魅了されました。その馬の名はミッキーカプチーノ。
迎えたホープフルSでは1番人気に推されながら5着。が、決して悲観する内容ではなく誰しもがクラシック本番での巻き返しを期していた時でした。「春は全休します」──。その報せ以降は約2年の休養を余儀なくされ、24年本栖湖特別で復帰を果たすも4着。結果、未完の大器はこの一戦を最後に無念の引退となりました。
ファンのみならず、厩舎関係者も大きな期待を寄せていたミッキーカプチーノの姿は今、JRA馬事公苑に。“未完の大器”は、乗馬になるべく準備を進めています。今回、そんな彼の現在を様子を直撃。JRA馬事公苑 普及課普及係長・廣田直哉さんに伺いました。
(取材・構成:netkeiba編集部)
「いまも、矢作厩舎の無口をつけています」
──ミッキーカプチーノが馬事公苑に入厩することになった経緯を教えてください。
廣田 (現役時代に所属していた)矢作厩舎の方からお声がけをいただいて…というかたちです。いまも、矢作厩舎の無口をつけています。

▲今も矢作厩舎の無口をつけている(c)netkeiba
──こちらに到着したのはいつ頃ですか?
廣田 6月頭なので、1ヶ月弱経っています。栗東で去勢をしてから入ってきました。到着時から環境の変化に戸惑うこともなく、どっしりとしている感じです。
──矢作厩舎の方たちも期待していた素質馬ですが、第一印象はどうでしたか?
廣田 いい馬だな、と思いました。馬格が良くて見た目もいい馬なので、みんなからも「いい馬だね」と良く言われます。
──この1ヶ月間はどのように過ごしていたのですか?
廣田 脚元に少し不安があるので獣医さんと、「将来のある馬なので、しっかり治してからトレーニングを始めよう」と話しています。脚が腫れたりしているわけではないのですけど、いまはまだ大事をとってゆっくりさせています。
脚元の治り具合にもよるのですが、3、4ヶ月くらい経ってきたら徐々にトレーニングを始めていけたらと思います。

▲今は脚元の具合を最優先に調整(c)netkeiba
競技デビューや乗馬の普及活動での活躍にも期待
──ミッキーカプチーノの現在の1日の過ごし方を教えてください。
廣田 基本的にいまは乗り運動はせず、曳き馬がメインです。10分弱お散歩して、あとは馬房でのんびり…という感じです。きっと楽しいと思います(笑)。
──どんな性格ですか?
廣田 厩舎ではちょっとうるさかったという話も聞きましたが、おとなしくてとても扱いやすい馬です。曳き馬をしているときも、お散歩しながら愛想をふりまいている感じで、人懐っこくてかわいいです。乗ってどうなるかはまだわかりませんが、力の出しどころを知っている賢い馬なんじゃないのかな、と予想しています。

▲「賢くて、人懐っこい」というミッキーカプチーノ(c)netkeiba
廣田 ごはんもなんでもしっかり食べてくれますし、いまのところ、嫌いなものはないんじゃないかなと思います。
──競走馬から乗用馬に転用するにあたって大変なことはなんですか?
廣田 これはよく言われるところだと思いますが、やはり速く走るところから、人の指示を待って、合図に反応するようにしないといけないので、その“メンタルの向かい方”の変え方が難しいですね。馬が理解するのを待ちながら、根気強く教えていくしかないです。
──ミッキーカプチーノに今後期待していることを教えてください!
廣田 今後は乗馬のトレーニングをしていきつつ、適性があれば競技に使っていきたいなと思っています。
立派な馬格は、乗馬や馬術競技にある程度有利に働くことが多いです。例えば、“障害を飛ぶ”というときに、体が小さいより大きいほうが相対的に有利に働きますし、馬体重も530kgくらいあるので、その分パワーもあると思います。

▲競走馬時代のミッキーカプチーノ(撮影:下野雄規)
廣田 あとはおとなしいので、乗馬の普及活動で活躍してもらって、子供達に乗馬の楽しさを伝えていけるようになってほしいなと思います。
(文中敬称略)