
▲富田騎手の“知られざる7カ月”に迫る(撮影:高橋正和)
今週、ミルコ・デムーロ騎手がアメリカという新天地へと旅立ちました。同じ西海岸で、ひと足早く「武者修行」に身を投じていたのが、富田暁騎手です。昨年11月に海を渡り、初勝利を手にしたのは、今年の6月27日のことでした。
その長さが物語るように、そこまでの道のりは平坦ではありませんでした。騎乗依頼はおろか、調教にも呼ばれない日々。予定していた一時帰国から戻ると、現地での環境は一変。そこにはもう“居場所”はなく…。それはかつて、騎手時代に福永祐一調教師も味わった“アメリカの現実”でした。
そこから再び歩き出すきっかけとなったのが、競馬学校の後輩・木村和士騎手との縁。異国の地で戦う富田騎手の、リアルな心の軌跡を前後編でお届けします。
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【ユーザー質問】初の米遠征は「『I’m Jockey!』っていうのが精一杯(笑)」 “騙された”経験が実を結んだアメリカでの思い出(取材・構成=不破由妃子)
エージェント不在、たったひとりでの日々に心は悲鳴をあげ…
──約1カ月の一時帰国はありましたが、アメリカでの生活もトータルで7カ月を超えましたね。6月27日には念願の初勝利を挙げ、その1週間後には早くも2勝目をマーク。結果を出したことで、流れが変わってきたところはありますか?
富田 まだ流れを変えるまでには至っていませんが、いいアピールにはなかったかなと思います。初勝利のときは、こっちでもみんなから「おめでとう!」と声を掛けてもらいましたし、日本からもたくさん連絡をいただいて。うれしかったですね。
──初勝利は、昨年11月29日のデルマー競馬場での初騎乗から32戦目。その数字を聞いて、やはりアメリカで数を乗るのって難しいんだなと思ったりして。
富田 今はエメラルドダウンズ競馬場で乗っていて、こっちにきてからは多少増えたんですけど、カリフォルニアの競馬場にいる頃は全然乗れませんでしたから。一時帰国があったとはいえ、11月から5月の頭までいて、デルマーで1鞍、ロスアラミトスで2鞍、サンタアニタパークで6鞍の計9鞍。なかなか乗れなかったですねぇ。
──確かにエメラルドダウンズに移動してからは、1日1〜3鞍騎乗されていますよね。騎乗機会を得るために、どんな活動をされてきたんですか?