
▲川田騎手の“馬具論”を徹底解説(撮影:福井麻衣子)
馬具ではなく「すべてを見せて納得して走らせるほうを選ぶ」
──前回、マーキュリーCを制したカズタンジャーからブリンカーの必要性に話題が及んだわけですが、基本的には「必要ない」というのが川田さんの考えだと。それはなぜですか?
川田 ブリンカーは、物理的に前しか見えない状態にすることで、前だけに集中させて、馬を強制的に走ることに集中させるための道具です。走ることに前向きになれないとか、やる気がないとか、動きが悪いとか、そういう馬に着けます。ブリンカーほどではないけれど、視界を遮るという意味では、チークピーシーズに求める効果も似たようなものです。
馬に集中力を求める、イコール気持ちのコントロールなわけですから、それは人がやればいいというのが僕の考えです。道具に頼るのではなく、乗り手がやればいい。ちなみに、シャドーロールも視界を遮りますが、着けたことで見えなくなるのは脚元。影などを怖がってしまう馬に脚元を見せないようにするのが目的なので、ブリンカーやチークとは意図が異なりますね。
──集中力って、そんなに簡単に人間がコントロールできるものなんですか?
川田 簡単ではないから、チークやブリンカーを使用しようとなるんです。でも、ほとんどの馬はコントロールできると僕は思ってます。実際、視界を遮らなくても走れている馬がほとんどで、ブリンカーを着けていない馬のほうが圧倒的に多いんだから。視界を遮ることによって、余計に怖がる馬も出てきますしね。それが原因で走れない馬もいますよ。
──なるほど。確かに自分に置き換えたら怖い。
川田 人間だって“音は聞こえるけど見えない”状況に置かれたら怖いですよね。それに、