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【ハイセイコー物語】鈴木勝太郎厩舎へ/第10話

  • 2025年12月09日(火) 12時00分
■前回まで
新冠の武田牧場で生まれ、大井の伊藤正美厩舎に入厩したハイセイコーは、3歳時の1972年、デビューからすべて圧勝の6連勝を遂げる。翌1973年、馬主がホースマンクラブに替わり、中央入りすることになった。(馬齢は旧馬齢)

 1973(昭和48)年1月16日、火曜日。府中の上空は晴れ渡り、澄んだ空気が頬に冷たかった。

 東京競馬場の鈴木勝太郎厩舎の前に1台の馬運車が到着した。

 明け4歳になったハイセイコーが、大井競馬場からやって来たのだ。

 厩舎の前には、調教師の鈴木勝太郎と、息子で調教助手の康弘、娘婿で騎手の増沢末夫、厩務員の大場博らが立っていた。

──ハイセイコーというのはどんな馬なのだろう。

 鈴木康弘は、父から「大井で6戦全勝した馬を預かるつもりだ」と聞かされるまで、ハイセイコーの存在を知らずにいた。父が前もって大井に実馬を見に行ったほどだから、相当期待していることは間違いない。

 今日は大安であり、また、父・勝太郎の60回目の誕生日でもある。

──親父は今日を「特別な日」として記憶に残したいのかな。

 無口で厳格な父は、勝負の世界で長く生きているだけに、

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作家。1964年札幌生まれ。「Number」「優駿」「うまレター」ほかに寄稿。著書に『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』。「優駿」に実録小説「一代の女傑 日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイ物語」を連載中。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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