こちらのコラムでは、レース質予想のパイオニア・立川優馬氏が著書である『「今週勝つ!」を叶える馬券カレンダー』を基に週末の展望を解説していくものとなります。
人気予想家の見解を、ぜひ予想の参考にお役立てください!
(取材・文・構成=編集下M)
中山ダート1200mの黒帽子
編集下M(以下、M) 12月第2週の『「今週勝つ! 」を叶える馬券カレンダー』のテーマは『中山ダート1200m上級条件(高速決着)で内枠差し馬を軸にするテクニック』です。カペラSにちなんだ内容ですね。

12月第2週の狙い方。『「今週勝つ! 」を叶える馬券カレンダー』(画像は電子版)より
立川(以下、立) 例によって阪神ジュベナイルフィリーズについては後半で触れます。まずはこのメカニズムを知って、日曜の重賞W獲りを狙いましょう。ちなみにこのメカニズムについては、テンに追走力が求められやすいダート短距離(芝発走や発走地点から下るレイアウトなど)では広く応用できるものなので、仕組みだけ覚えてしまいましょう。
M 福島ダート1150mについては『「今週勝つ! 」を叶える馬券カレンダー』の11月第4週で詳しく解説しているのでそちらもご参照ください。
立 近年の中山ダートは高速化が著しく、ダート1200m芝発走における外枠有利が薄れてきています。本来はテンにダッシュがつきやすい芝部分を長く走れる外枠勢が先行しやすかったのですが、高速化した結果、含水率が高い馬場のように内枠からでも主張が利きやすくなったからです。本来ダートは先行有利ですから、外枠から先行しやすい=外枠有利だったものが解消されてきているわけですね。
M コース形態で外枠が有利ということではなく、先行しやすいから外枠有利。その「先行しやすさ」が薄れた分、外枠有利も薄れたと。
立 特に、上級条件のハイペース戦になると1分10秒台、ときには1分9秒台の決着になるので、ここまで時計が速くなるとこれを後方から差し切るのは難しくなりますし、外を回してしまうと距離ロス分で物理的に間に合わないというケースが増えてきます。したがって、中山ダート1200mで時計が速くなればなるほど、ラチ沿いをピッタリ通した馬(逃げ馬や内枠の馬)が恵まれるという現状になっているのです。
M カペラSの直近3年も、二桁馬番の馬券絡みは1頭だけですね。参考までに過去3年の勝ち時計と上位馬の馬番を列記しておきます。
2024年 1.10.1 6→9→4
2023年 1.09.3 3→13→2
2022年 1.08.9 6→1→3
立 二桁馬番で唯一馬券に絡んだ2023年の13番チェイスザドリームはラチ沿い番手追走馬なので、本当にラチ沿いを通した馬しか走れていないのが分かるかと思います。少なくとも二桁馬番の差し馬は消しで構いません。
M 外枠の差し馬は消し。これだけでだいぶ絞れますね。
立 そしてここからが馬券構築のテクニックになります。逃げ番手でラチ沿いを通せる馬はテンの速度比較や発馬、枠の並びなどで運の要素が強くなりがちです。絶対ハナにいくと思っても、発馬で躓けば即終了になってしまいます。であれば、ラチ沿いを確実に通せる馬のほうを軸に選びましょうという話。
M チャンピオンズCも、1枠のウィリアムバローズとダブルハートボンド、そして外にナルカミがいて何が逃げるかは読み切れませんでしたが、ウィルソンテソーロが差してくるのは何となく予測できましたもんね。
立 カペラSはハイペース高速決着ですから、出し切れなかった先行馬が止まるので差し有利が前提となります。したがって、内枠から道中ラチ沿いを通せる差し馬を軸にするのがフォーカスとしては最も安定します。これを私のサロン(立川優馬の競馬と共に人生を歩むサロン)では「中山ダート1200mハイペース(上級条件)の黒帽子」と呼んでいます。だいたい2枠周辺の差し馬が飛んでくるぞということですね。
ただし、傾向が薄れてきたとはいえ、中山ダート1200mがまだまだ外枠先行有利であることや、逃げられた馬は経済コースを通せることから、差し馬だけでフォーカスを組むのではなく、内枠差し馬から先行馬へ流すような形がよいでしょう。
M まずは差し馬が内枠を引いてくれるのをお祈りですね。
立 そうですね。今年のメンバーはテンに速い馬が多いので、1分9秒台での内差し決着濃厚と見ます。内を捌いて差せるガビーズシスター、クロジシジョー、チカッパ、テーオーエルビスなどが内枠を引いたら軸候補でしょう。
阪神JFも時計が速ければ内枠有利に
M ここからは阪神JFについて伺います。まずはレース傾向から教えてください。

阪神芝1600mの立川式コース図
立 阪神JFはレースの性質上、距離延長ローテの馬が多くなりやすいことからテンに流れやすいマイル戦です。また、開催2週目の高速馬場でレースが行われるため、速い時計や上がりへの適性も求められます。したがって、前哨戦の中である程度テンに速い流れを経験したうえで、上がりを使う経験をしている馬が有利。
特に今年は先週の開幕週がかなりの高速馬場で、鳴尾記念が1.43.7,1600〜1800m戦では上がり3F33秒台前半が求められていたので、週末の雨予報の影響が軽微なら、2年前のように1分32秒台の決着になる可能性は高めでしょう。
M 先ほどの中山ダート1200mの話に似ていますね。
立 速い時計の決着でペースが流れると外を回す馬が物理的に間に合わないので、内枠有利になるのは芝もダートも同様。狙い方も同様で、高速決着になるなら内枠から軸馬を選びたいところです。
M 京都開催だった昨年を除いた、直近4年の勝ち時計と上位馬の馬番はこちらです。
2023年 1.32.6 7→6→10
2022年 1.33.1 9→3→13
2021年 1.33.8 10→11→13
2020年 1.33.1 6→7→11
立 時計が速いほど内枠有利で、時計が遅いほど外枠が間に合っているのだなということが分かりますよね。今年はまず高速決着の内枠有利前提で、当日雨が降って時計が掛かるようなら外目に広げていくイメージでよいでしょう。
M 今年は重賞勝ち馬の離脱が相次いで混戦ムードですが、具体的にはどんなレースになりそうですか?
立 今年のメンバーを見ると、人気どころで追走面の心配があるのがアランカールやギャラボーグ辺りでしょうか。アルバンヌもそこまで追走面の担保があるわけではないので、この辺りの馬は外枠なら軽視、雨の影響が小さい高速馬場ほど軽視ということになります。
対して、追走経験と末脚性能を両方見せているのが、タイセイボーグやミツカネベネラ、マーゴットラヴミー辺りになるでしょうか。この中で差しに回れて、近走レース質に反して高速上がりを使い好走しているタイセイボーグはぜひ高速馬場の内枠で見たいところです。
M タイセイボーグは『POG直球勝負』の取材時に、厩舎長の方から「完成度も高いですが奥の深さも感じる」「フットワークが軽くて背中もいい」と教えていただいた馬なんですよ。内枠を引いたら大勝負します!
<枠順確定後の追記>
カペラSはまさに黒帽子をテーオーエルビスが引いてくれたので、軸として信頼できそうです。ほかの注目馬は中枠を引いたので、外を回す形になるとむしろ不利な外枠差しになってしまうので注意。であれば、ラチ沿いピッタリを通せて、差しにも回れる1番枠のドンアミティエが狙い時でしょう。外枠での好走が多いのはダート短距離馬なら当然なので、内枠が苦手というわけではないと思います。
阪神JFは極端な外枠でなければ軸確定と思っていたタイセイボーグが8枠17番を引いてしまったので難解になりました。枠の並び自体は面白くて、テンに遅い人気馬たちが内枠に並び、その外に逃げ候補、そして延長馬が外枠に入ったので、被せられた馬たちが内を通してこられるのか、外に出すロスが大きくなるのかがポイントになるでしょう。外枠主導から外枠差し馬が恵まれるパターンもあり得る枠並びなので、意外に今年は外枠でもよいかもしれません。そのためには時計は遅いほうがよいので、雨の影響が大きくなることを祈っておきましょう。大穴なら外枠短縮で差しに回れる14番枠のスタニングレディや、中枠同距離差し馬で前走出遅れ挽回して、最内を通す苦しい競馬で2着の11番枠スウィートハピネスを上げておきます。